見えるものしか見ないから

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真実④

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「結局は、自分の見たいものしか見えないのよね。」

ミカエルの良いところだって、探せばあったかもしれない。シンシアが見たくないと思ったからか、見つけることは出来なかったけれど。



「お前は冷たい人間だ。困っている彼女を虐げ、辛く当たるお前とは婚約を続けられない。」

私情がたっぷり含まれた元婚約者の捨て台詞は、シンシアには新鮮だった。節穴だと思っていたのに、シンシアが彼女を虐げていたことに気がついたのかと。

周りは皆庇ってくれた。けれど、シンシアはちゃんと彼女を虐めていた。だってシンシアのような完璧なご令嬢に成り代わろうという身の程知らずなのだもの。ミカエルなんてどうでも良いけれど、これは令嬢として負けられない戦いなのだ。

彼女は本当に良く頑張っていた。シンシアの亡霊に悩まされながらも自分の出来ることを必死になって。それでもシンシアの何年間のうちの一部しかできていなかったことに、仄かな喜びを覚えたのはシンシアだけの秘密だ。

だけど、彼女が奪ってくれたおかげで、アレと結婚しなくて済むのなら、感謝すべきなのよね。

アリスは子爵夫人となって、護衛の彼と結婚した。彼の兄夫婦には小さな子供がいるとやらで毎日楽しく暮らしているらしい。

ただ、王都での華々しさはないから、煌びやかな世界にもう未練がないかは気になるところだ。

彼女が望むなら、彼は約束を破ってでも連れてきてしまいそうだけど。

それならそれで、彼には新しい玩具を差し出さなければならない。出来れば似たもの同士で愛し合っていてほしい。





「そうそう。愚弟は辺境で行方不明になったよ。どうやら逃げ出そうとしたみたいだ。あの辺は地形が珍しいから不慣れだと思わず危ない目に遭うかもしれないのに。一応周りを調べたそうだが、見つからなかったようだよ。

念の為、協力者がいないかを確認したところだ。」


シンシアはその話を聞いて、レオもその逃亡に手を貸していることを理解した。わざわざシンシアに話したことが、良い証拠だ。


「協力者なんて、見つからないでしょうね。」

ミカエルの為に協力した者などは決して見つからない。彼らは、ミカエルを苦しめる為に、レオに協力した人達ばかりなのだから。


「君がこれ以上、愚弟に悩まなくて済むように、後は僕が引き受けるよ。」


不敵に笑うレオは悪役らしくて、シンシアはドキドキしてしまう。彼があのミカエルと同じ趣味な訳はない。あんなに単純な男なら、シンシアは最初から、欲しいと、思わなかった。


私達も似た者同士。互いに互いしかいらないとわかっている。




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