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企みはひっそりと
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企みはひっそりと行われた。イーサンは自分がただ王太后を母に持ったばかりに王宮内に閉じ込められたとは思っていない。自らに付けられた古い魔道具を解析しているうちにその事実に気がついた。
イーサンが閉じ込められていた一番の理由は、魔力量が多すぎるばかりに起きる暴走と、無意識に発動される持って生まれた魅了魔法にあった。
この世に生を受けてから、すぐに取り付けられた魔道具は成長に伴って形を変え、魔力を抑え、魅了魔法を自覚なしに使えなくするものだった。
イーサンはこの魔道具の作り手に心当たりがある。魔道具を作ろうと思い立ったのはアイリスの為だが、魔道具について学べば学ぶほど、自分に付けられたそれがどんな意味を持つのかわかるようになっていった。
イーサンの持つ魅了魔法は放っておくと、使いどころを間違え、混乱の元になりかねない。イーサンは生きていく上で過酷な状況下にいた為に、全く使えなくなるする魔道具の使用を諦めたのだろう。
きちんと自覚して、ここぞと言う時には使われるその能力を、イーサンは一度だけ、使った。
使ったことを、アイリスには気づかれている。凄いね、と目を大きく瞠って悪戯が成功した子供みたいな笑顔を見せてくれた。
はじめて公爵家を訪れ、公爵に挨拶したその時に、少しばかり魅了させてもらったのは、自分が彼に気に入ってもらえなければ、計画は全て水の泡になるからだ。
その力のおかげか少しばかりの好感を得られたイーサンは、公爵家で自由に動くことができた。アイリスの兄達には、気に入られようと動いたが、特に魅了魔法を使うほどではなかった。アイリスを大切にすればするほど、彼らは妹を大切にしてくれる同志として、イーサンを認めてくれた。
ジェイドに至っては、自らが動くことはない。少しずつ味方を増やした先に、彼を籠絡できる者が現れた。彼女が引き受けてくれたので任せることにした。
王宮の隅で隠れるように生きてきた少年が、こんな幸せを掴むなんて誰が想像できたことだろう。アイリスの髪に触れていると、とても落ち着く。彼女の足枷となる婚約がなくなってからイーサンの心は歯止めが効かなくなってしまった、
アイリスを一瞬たりとも離したくなくて、彼女の迷惑も考えずに散々に構ってしまう。アイリスはそれに今は笑って応えてくれるが、そのうち嫌われたりしたら自分は多分生きていけない自覚がある。
だからといって、いちばん大切な人に魅了魔法は使えない。その力で手に入れた愛など、虚しくなるに違いない。
アイリスは、笑いながら、「そんな心配をするよりも、私を一生愛してくれればいいの」と言う。
互いに愛に飢えた二人。愛し方なんて、わからない。だからこそ、ただ愛せばいい。
イーサンはアイリスに口付けながら、それならいくらでもできる、と思う。
「俺の愛は多分重いよ?覚悟はできてる?」
抱きしめられながらアイリスは、とびきりの笑顔で、頷いた。
「私の愛も相当よ?舐めないでよね。」
あとはひとしきり笑って、口付けの続きを楽しむ。いつのまにか部屋から人が消えていた。
恥ずかしさを感じることは今の二人にはない。
イーサンが閉じ込められていた一番の理由は、魔力量が多すぎるばかりに起きる暴走と、無意識に発動される持って生まれた魅了魔法にあった。
この世に生を受けてから、すぐに取り付けられた魔道具は成長に伴って形を変え、魔力を抑え、魅了魔法を自覚なしに使えなくするものだった。
イーサンはこの魔道具の作り手に心当たりがある。魔道具を作ろうと思い立ったのはアイリスの為だが、魔道具について学べば学ぶほど、自分に付けられたそれがどんな意味を持つのかわかるようになっていった。
イーサンの持つ魅了魔法は放っておくと、使いどころを間違え、混乱の元になりかねない。イーサンは生きていく上で過酷な状況下にいた為に、全く使えなくなるする魔道具の使用を諦めたのだろう。
きちんと自覚して、ここぞと言う時には使われるその能力を、イーサンは一度だけ、使った。
使ったことを、アイリスには気づかれている。凄いね、と目を大きく瞠って悪戯が成功した子供みたいな笑顔を見せてくれた。
はじめて公爵家を訪れ、公爵に挨拶したその時に、少しばかり魅了させてもらったのは、自分が彼に気に入ってもらえなければ、計画は全て水の泡になるからだ。
その力のおかげか少しばかりの好感を得られたイーサンは、公爵家で自由に動くことができた。アイリスの兄達には、気に入られようと動いたが、特に魅了魔法を使うほどではなかった。アイリスを大切にすればするほど、彼らは妹を大切にしてくれる同志として、イーサンを認めてくれた。
ジェイドに至っては、自らが動くことはない。少しずつ味方を増やした先に、彼を籠絡できる者が現れた。彼女が引き受けてくれたので任せることにした。
王宮の隅で隠れるように生きてきた少年が、こんな幸せを掴むなんて誰が想像できたことだろう。アイリスの髪に触れていると、とても落ち着く。彼女の足枷となる婚約がなくなってからイーサンの心は歯止めが効かなくなってしまった、
アイリスを一瞬たりとも離したくなくて、彼女の迷惑も考えずに散々に構ってしまう。アイリスはそれに今は笑って応えてくれるが、そのうち嫌われたりしたら自分は多分生きていけない自覚がある。
だからといって、いちばん大切な人に魅了魔法は使えない。その力で手に入れた愛など、虚しくなるに違いない。
アイリスは、笑いながら、「そんな心配をするよりも、私を一生愛してくれればいいの」と言う。
互いに愛に飢えた二人。愛し方なんて、わからない。だからこそ、ただ愛せばいい。
イーサンはアイリスに口付けながら、それならいくらでもできる、と思う。
「俺の愛は多分重いよ?覚悟はできてる?」
抱きしめられながらアイリスは、とびきりの笑顔で、頷いた。
「私の愛も相当よ?舐めないでよね。」
あとはひとしきり笑って、口付けの続きを楽しむ。いつのまにか部屋から人が消えていた。
恥ずかしさを感じることは今の二人にはない。
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