3 / 5
失礼な王子
しおりを挟む
ミハイルの初恋の人が見つかったと一報が届けられたのは、ミハイルが生徒会に突撃してからわずか数日のことだった。
何度か探して見つかっていなかったことから、ダメ元で頼んだことだったのに、第二王子が中心となってくれたのか、こんなに早く見つかるなんて想像もしていなかった彼はそのご令嬢を見るなり恋に落ちた。
令嬢はどう見てもあの日の面影はないばかりか自分より年上みたく感じたが、王子の自分に嘘をつくなど大それたことはしないだろうと、ミハイルは、矛盾点に気付かず、信じてしまった。
ふと生徒会の面々に見た顔があることに気がついた。
「ああ、君は……前回最終選考まで残ったご令嬢ではないか。奇しくも私の婚約者はすでに決まってしまった。貴女の想いに応えられなくて済まなかったが、やはり神は私を見捨てなかったらしい。」
急に絡まれて言葉もないスザンヌは、まるで自分がミハイルを好きだという誤解をされていることに、酷く憤慨したが、何も言わずに話をぶった斬り、その場から逃れた。
リカルドは、「私の婚約者に何か用ですか?」と怒りを露わにしていたが、肝心の第一王子は、聞いている様子もない。
辺境伯令嬢は、此方に笑顔を見せていた。ミハイルが喜んで迎えに行っていた。
「ミハイル様が受け入れてくださってよかったです。てっきり王になられるおつもりだと諦めていましたから。」
辺境伯の当主補佐と、王の仕事は両立できない。揉めるかと思ったが、あっさりと王位を放棄して、ミハイルは辺境へ婿入りすることが決まった。
ミハイルが苦しんでいた毒は、スザンヌによって早くに解毒されたが、後遺症として、子種がなくなる、というものがあった。
この時すでに彼の王位継承権はないに等しい。だから、この年まで立太子しなかったし、婚約者すらいなかった。結婚する辺境伯令嬢も内縁の夫二人にそれぞれ二人ずつの子どもがいる。それでも、あの美貌を維持しているのは素晴らしいとしかいえない。
後継者は四人の子の中から選べば良いので、ミハイルとの間に子が生まれなくても良い。何なら屈強な夫ではなく、ただ可愛がるだけの愛玩動物が欲しかっただけの令嬢は、ミハイルと人間の営みをしようとは思っていなかった。
「ミハイル、貴方は何もせず、ここにいて良いのよ?」
ミハイルはそういう訳にもいかずと、色々な余計なことを始めようとするが、彼女の夫達に笑われているのを知らない。
彼の政策は全てが机上の空論で、辺境伯領にはそぐわないものばかり。
王子を押し付けられた副産物の持参金は、ありがたくいただくとして、この荷物がいつまでこの場に、耐えられるか。誰もが彼の王都への早い帰還を願っていた。
何度か探して見つかっていなかったことから、ダメ元で頼んだことだったのに、第二王子が中心となってくれたのか、こんなに早く見つかるなんて想像もしていなかった彼はそのご令嬢を見るなり恋に落ちた。
令嬢はどう見てもあの日の面影はないばかりか自分より年上みたく感じたが、王子の自分に嘘をつくなど大それたことはしないだろうと、ミハイルは、矛盾点に気付かず、信じてしまった。
ふと生徒会の面々に見た顔があることに気がついた。
「ああ、君は……前回最終選考まで残ったご令嬢ではないか。奇しくも私の婚約者はすでに決まってしまった。貴女の想いに応えられなくて済まなかったが、やはり神は私を見捨てなかったらしい。」
急に絡まれて言葉もないスザンヌは、まるで自分がミハイルを好きだという誤解をされていることに、酷く憤慨したが、何も言わずに話をぶった斬り、その場から逃れた。
リカルドは、「私の婚約者に何か用ですか?」と怒りを露わにしていたが、肝心の第一王子は、聞いている様子もない。
辺境伯令嬢は、此方に笑顔を見せていた。ミハイルが喜んで迎えに行っていた。
「ミハイル様が受け入れてくださってよかったです。てっきり王になられるおつもりだと諦めていましたから。」
辺境伯の当主補佐と、王の仕事は両立できない。揉めるかと思ったが、あっさりと王位を放棄して、ミハイルは辺境へ婿入りすることが決まった。
ミハイルが苦しんでいた毒は、スザンヌによって早くに解毒されたが、後遺症として、子種がなくなる、というものがあった。
この時すでに彼の王位継承権はないに等しい。だから、この年まで立太子しなかったし、婚約者すらいなかった。結婚する辺境伯令嬢も内縁の夫二人にそれぞれ二人ずつの子どもがいる。それでも、あの美貌を維持しているのは素晴らしいとしかいえない。
後継者は四人の子の中から選べば良いので、ミハイルとの間に子が生まれなくても良い。何なら屈強な夫ではなく、ただ可愛がるだけの愛玩動物が欲しかっただけの令嬢は、ミハイルと人間の営みをしようとは思っていなかった。
「ミハイル、貴方は何もせず、ここにいて良いのよ?」
ミハイルはそういう訳にもいかずと、色々な余計なことを始めようとするが、彼女の夫達に笑われているのを知らない。
彼の政策は全てが机上の空論で、辺境伯領にはそぐわないものばかり。
王子を押し付けられた副産物の持参金は、ありがたくいただくとして、この荷物がいつまでこの場に、耐えられるか。誰もが彼の王都への早い帰還を願っていた。
23
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
【完結】強制力なんて怖くない!
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のエラリアは、十歳の時に唐突に前世の記憶を取り戻した。
どうやら自分は以前読んだ小説の、第三王子と結婚するも浮気され、妻の座を奪われた挙句、幽閉される「エラリア」に転生してしまったらしい。
そんな人生は真っ平だと、なんとか未来を変えようとするエラリアだが、物語の強制力が邪魔をして思うように行かず……?
強制力がエグい……と思っていたら、実は強制力では無かったお話。
短編です。
完結しました。
なんだか最後が長くなりましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。
突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。
「あと、三ヶ月だったのに…」
*「小説家になろう」にも掲載しています。
婚約者に好きな人ができたらしい(※ただし事実とは異なります)
彗星
恋愛
主人公ミアと、婚約者リアムとのすれ違いもの。学園の人気者であるリアムを、婚約者を持つミアは、公爵家のご令嬢であるマリーナに「彼は私のことが好きだ」と言われる。その言葉が引っかかったことで、リアムと婚約解消した方がいいのではないかと考え始める。しかし、リアムの気持ちは、ミアが考えることとは違うらしく…。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる