ファーストキスは草の味

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失礼な王子

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ミハイルの初恋の人が見つかったと一報が届けられたのは、ミハイルが生徒会に突撃してからわずか数日のことだった。

何度か探して見つかっていなかったことから、ダメ元で頼んだことだったのに、第二王子が中心となってくれたのか、こんなに早く見つかるなんて想像もしていなかった彼はそのご令嬢を見るなり恋に落ちた。

令嬢はどう見てもあの日の面影はないばかりか自分より年上みたく感じたが、王子の自分に嘘をつくなど大それたことはしないだろうと、ミハイルは、矛盾点に気付かず、信じてしまった。

ふと生徒会の面々に見た顔があることに気がついた。

「ああ、君は……前回最終選考まで残ったご令嬢ではないか。奇しくも私の婚約者はすでに決まってしまった。貴女の想いに応えられなくて済まなかったが、やはり神は私を見捨てなかったらしい。」

急に絡まれて言葉もないスザンヌは、まるで自分がミハイルを好きだという誤解をされていることに、酷く憤慨したが、何も言わずに話をぶった斬り、その場から逃れた。

リカルドは、「私の婚約者に何か用ですか?」と怒りを露わにしていたが、肝心の第一王子は、聞いている様子もない。

辺境伯令嬢は、此方に笑顔を見せていた。ミハイルが喜んで迎えに行っていた。

「ミハイル様が受け入れてくださってよかったです。てっきり王になられるおつもりだと諦めていましたから。」

辺境伯の当主補佐と、王の仕事は両立できない。揉めるかと思ったが、あっさりと王位を放棄して、ミハイルは辺境へ婿入りすることが決まった。

ミハイルが苦しんでいた毒は、スザンヌによって早くに解毒されたが、後遺症として、子種がなくなる、というものがあった。

この時すでに彼の王位継承権はないに等しい。だから、この年まで立太子しなかったし、婚約者すらいなかった。結婚する辺境伯令嬢も内縁の夫二人にそれぞれ二人ずつの子どもがいる。それでも、あの美貌を維持しているのは素晴らしいとしかいえない。

後継者は四人の子の中から選べば良いので、ミハイルとの間に子が生まれなくても良い。何なら屈強な夫ではなく、ただ可愛がるだけの愛玩動物が欲しかっただけの令嬢は、ミハイルと人間の営みをしようとは思っていなかった。

「ミハイル、貴方は何もせず、ここにいて良いのよ?」

ミハイルはそういう訳にもいかずと、色々な余計なことを始めようとするが、彼女の夫達に笑われているのを知らない。

彼の政策は全てが机上の空論で、辺境伯領にはそぐわないものばかり。

王子を押し付けられた副産物の持参金は、ありがたくいただくとして、この荷物がいつまでこの場に、耐えられるか。誰もが彼の王都への早い帰還を願っていた。

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