婚約者の頭の中にはおがくずが詰まっている

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だから、そんな事実はない

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グラントは顔だけでなく、行動力もあった。そのまま、私の伯爵家の馬車に勝手に乗り込むと、父に謝りに行った。その間、私の手は、握ったままだ。

今の今まで、婚約者ではあったものの、お互いに離れているのが普通の私達のその仲良しな姿に、父は何かを感じたようだ。


「そうか、そうか。痴話喧嘩ってやつか。良いんだよ、グラント君がそんなにうちの娘が好きだったなんて、思いもしなかったからさ~」

「いえいえ、何を血迷っているのですか、お父様。グラントとはそんな関係ではありません。」

グラントは、繋いだままの手を強調して、念を押した。

「これから、二人で力を合わせて、愛を貫いていきます!今回は、本当に申し訳ありませんでした。」

私は謝らない。だって、私は悪くないもの。

でも何故か、空気が生温い。何、なんなの?

ダメだわ、グラントが来てから使用人達の私を見る目がおかしい。

「ねえ、グラント。貴方、何をしたの?」
「うん?何が?僕のマーメイド。」
「は?マーメイド?」
「マリーンだから、マーメイドだよ。チュッ。」

うわ、キモっ。無理無理。あれ、グラントってこんなキャラ?いや、そういえば、あの赤毛の娘もこんなキャラだっけ。今思えばあれは似た者同士ってやつだったのかな。

いつのまにか、俺とお前が僕と君って、話し方まで変わってるし。

「グラント、貴方やっぱり考え直した方が良いんじゃない?私よりもあの娘との方がお似合いよ。」

私の言葉に、深く傷ついた顔をして、グラントはまた謝ってくる。


「ごめんね、君にそんな言葉を言わせるなんて、僕は何て馬鹿なんだ。もう君を泣かさないよ。ほら、涙を拭いて。僕は君以外を愛さないと誓うよ。」

いや、無理だろ。あの赤毛だけじゃなくて、これまで散々浮気したって知ってんだよ。

「グラント、貴方初めての浮気じゃないって知ってるのよ?今後浮気しないって誓ってしまうと、不味いんじゃないの?」

グラントは何故か嬉しそうな顔をしている。嫌な予感がするんだけど……また嫉妬だなんて思ってる?

「大丈夫だよ。今までで本気で好きだったのは、君だけだから。アイリスも、ジーナも、マチルダも、クララも、ブリジットも、サラも、ソフィアも、スーザンも、勿論ティアだって、全く本気じゃないからね。昔から愛しているのは君だけだ。」

今知らない女の名前もあったわよ。誰なの?

「ジーナってもしかして……」

「ああ、違うよ。さすがに君の友人には手を出さないよ。別のジーナさ。」

ってソフィアも、友人なんですけど。

「ああ、震えているね。嬉しくて声も出ないのかい。」

嬉しくて?……そんな訳ねーだろ!
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