婚約者の頭の中にはおがくずが詰まっている

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そんな事実はない

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「マリーン、どう言うことだ!」
婚約者のグラントに、連れてこられたのは、空き教室の一つ。
グラントの隣にいつもいる赤毛の娘は今はいない。

「どう言うこと、と言うのは?」
冷静に話したいけど、興奮しているみたい。

「私達が婚約破棄をする、と言うことだ!」

ああ、話が早い。昨晩父に提案した話を既に先方に通しているなんて、父GJ!

「婚約破棄でも、解消でもどちらでも構わないのですが、私と今後婚約関係を続けない方が、そちらは助かるでしょう?」

赤毛の娘と毎日、人目を憚らずイチャイチャしているのは、見るに耐えない。興味もないので、見ないようにしていると、自称親切な方々から、わざわざ教えられる始末。

目障りな物は、無くせば良い。と言うことでの、婚約破棄だ。


「どうしてだ?お前は、俺が好きだろう?」
「…………?」

「俺がティアばかりに、構って嫉妬したのか?俺はお前もちゃんと好きだ。」

ん?嫉妬?

嫉妬っつった?コイツ。

「あの、何か勘違いしてらっしゃいます。私、貴方を好きだと言う過去も事実もありません。」

「良いんだ。そんな強がりを言わなくて。俺の愛を不安に思ったんだろ?俺はお前が一番好きなんだ。いや、まあ、あのティアに好き勝手させたのは、悪かった。お前が嫉妬するのが嬉しくて、調子に乗ってしまったんだ。」

気がつくと、間近にグラントがいる。離れようとすると、手首を掴まれてしまった。

力が強いよ、もう。


「ですから、嫉妬なんてものは……」
強い力で抱きしめられる。グラントは騎士志望なだけあって、筋肉のついたガッシリした体を持っている。

私はどちらかと言うと、細身が好きだ。しなやかな筋肉とでも言おうか。

く、くるしい。力込めすぎ。

「グラント、力強すぎ、苦しい。」
ようやく、力を緩めたと思ったら、切なそうな表情を浮かべ、顔が迫ってきた。

怖い……必死で抵抗した結果、キスはほっぺにしてくれた。

危なかった……口にされる所だった。何が悲しくて、もうすぐ元になろうかとする婚約者にキスされにゃ、ならんのか。

「俺は婚約破棄には応じない。お前が好きなんだ。ティアとは別れる。だから、一度だけチャンスをくれ。頼む。」

グラントの厄介なところは、顔が良いところだ。と言うか、良いところは顔だけなのだが。

「チャンスも何も、もうすでに話が親にいっているので。」

「そこは何とかする。説得するから、もう一度だけ信じてくれ。君を決して泣かせないと誓うよ。」

いや、泣いたことはないんだけどね。
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