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バグとその原因
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「エリカ嬢は、サイラスという男を知っているか?」
聞いたことのない名前に咄嗟に首を振る。
「今から少し突拍子もないことを話すが驚かないでほしい。」大公殿下はそう言って、エリカを本当に驚かせた。
「これは私が体験した話ではなく、単なる想像でしかないのだが。いや、厳密には、このサイラスなる男の話を信用するとするなら、という注釈が入る。」
「このサイラスという男は、エリカ嬢が知らなくても当然の隣国からのスパイみたいな立場の者だ。昔、妻が学生だった頃に隣国から子爵令嬢の留学生が来たのを覚えているだろうか。」
「デリア様でしたか?大層儚げな美少女でしたわね。」
話しながらエリカは彼女をゲームで見たかどうかに思いを巡らせていたが、はっきりとすぐにわかる様な位置にはいないことしかわからなかった。
所謂脇役にはいるのかもしれないが、メインにはいない。
「彼はデリア嬢を殺した罪で、牢に入っている。」
「デリア嬢は自殺されたのではありませんでしたか?他殺の証拠でも見つかったのですか?」
「いや、それが本人が認めているだけなんだ。バグは消さなくてはならないと。」
エリカはバグと聞いて、あれ?と思う。
「バグ?その男はデリア嬢のことをバグと言ったのですか?」
「ええ。バグって何かしら、と聞いてみたら、この世界にいないもの、と言われたのよ。例えば、今の王太子である兄や私の夫などが当てはまるらしいわ。彼はよく見える位置から、そのバグとやらの存在を消す仕事をしているらしいの。」
エリカはその言葉が本当なら、そのサイラスなる男はエリカと同じ様な存在なのではないか、と予想した。
「彼は誰かに指示されて、その仕事を?」
「いや、使命だとか言っていた。彼は隣国の王太子妃も、バグであると話していて、彼女を消す為に私達の協力を仰ぎたいと話していた。バグとやらは、自然発生するものと、世界を知る者が世界をより良くしようとして起こすものがあるらしい。隣国の王太子妃は、後者であるが故に強くなりすぎていて、歯が立たないと嘆いていた。そして、彼はこの国にも多分似た様な存在がいる、と言い切った。」
「彼は最初、私のことをそうじゃないかと疑っていたらしいの。だけど、私は違う。なら誰が一番彼の話す世界と違う動きをしているか、考えてみたの。」
エリカはまさか、自分のことがバレたのかと身構えた。だが、エリカの記憶が戻ったことは、つい先日の出来事で当然彼らが知りようもない。
「それで、一体誰だったのです?」
エリカは中々結果を話さないソフィアに身を乗り出しながら尋ねると、彼女は微笑みを浮かべた。
「うーん。私には判断が難しいよ。」
大公殿下は、妻を見て、エリカに視線を移す。エリカはその瞬間、自分のことを見定めるつもりで自分が呼ばれたことを悟った。
「私も、彼に聞いた時にまさか、と思ったわ。でも、バグとやらに理解を示したりこんな荒唐無稽な話をさっと受け止められたことから考えて、私も貴女ではないかと疑いが出てしまったわ。」
エリカはどう返事をすれば良いか迷う。だけど迷っているエリカの手を握り、必死に説得されれば、嫌とは言えない。あれよあれよと、知らぬ間に、サイラスという男に会わなければならなくなっていた。
聞いたことのない名前に咄嗟に首を振る。
「今から少し突拍子もないことを話すが驚かないでほしい。」大公殿下はそう言って、エリカを本当に驚かせた。
「これは私が体験した話ではなく、単なる想像でしかないのだが。いや、厳密には、このサイラスなる男の話を信用するとするなら、という注釈が入る。」
「このサイラスという男は、エリカ嬢が知らなくても当然の隣国からのスパイみたいな立場の者だ。昔、妻が学生だった頃に隣国から子爵令嬢の留学生が来たのを覚えているだろうか。」
「デリア様でしたか?大層儚げな美少女でしたわね。」
話しながらエリカは彼女をゲームで見たかどうかに思いを巡らせていたが、はっきりとすぐにわかる様な位置にはいないことしかわからなかった。
所謂脇役にはいるのかもしれないが、メインにはいない。
「彼はデリア嬢を殺した罪で、牢に入っている。」
「デリア嬢は自殺されたのではありませんでしたか?他殺の証拠でも見つかったのですか?」
「いや、それが本人が認めているだけなんだ。バグは消さなくてはならないと。」
エリカはバグと聞いて、あれ?と思う。
「バグ?その男はデリア嬢のことをバグと言ったのですか?」
「ええ。バグって何かしら、と聞いてみたら、この世界にいないもの、と言われたのよ。例えば、今の王太子である兄や私の夫などが当てはまるらしいわ。彼はよく見える位置から、そのバグとやらの存在を消す仕事をしているらしいの。」
エリカはその言葉が本当なら、そのサイラスなる男はエリカと同じ様な存在なのではないか、と予想した。
「彼は誰かに指示されて、その仕事を?」
「いや、使命だとか言っていた。彼は隣国の王太子妃も、バグであると話していて、彼女を消す為に私達の協力を仰ぎたいと話していた。バグとやらは、自然発生するものと、世界を知る者が世界をより良くしようとして起こすものがあるらしい。隣国の王太子妃は、後者であるが故に強くなりすぎていて、歯が立たないと嘆いていた。そして、彼はこの国にも多分似た様な存在がいる、と言い切った。」
「彼は最初、私のことをそうじゃないかと疑っていたらしいの。だけど、私は違う。なら誰が一番彼の話す世界と違う動きをしているか、考えてみたの。」
エリカはまさか、自分のことがバレたのかと身構えた。だが、エリカの記憶が戻ったことは、つい先日の出来事で当然彼らが知りようもない。
「それで、一体誰だったのです?」
エリカは中々結果を話さないソフィアに身を乗り出しながら尋ねると、彼女は微笑みを浮かべた。
「うーん。私には判断が難しいよ。」
大公殿下は、妻を見て、エリカに視線を移す。エリカはその瞬間、自分のことを見定めるつもりで自分が呼ばれたことを悟った。
「私も、彼に聞いた時にまさか、と思ったわ。でも、バグとやらに理解を示したりこんな荒唐無稽な話をさっと受け止められたことから考えて、私も貴女ではないかと疑いが出てしまったわ。」
エリカはどう返事をすれば良いか迷う。だけど迷っているエリカの手を握り、必死に説得されれば、嫌とは言えない。あれよあれよと、知らぬ間に、サイラスという男に会わなければならなくなっていた。
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