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目的は?

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結果としては、みすみす死なせてしまったのだから、とソフィアはため息をつく。あの時、デリアは、どうやって自殺したのだろう。ソフィアは彼女の傷痕を見て、これは自殺ではなく、他殺だと思ったのだが、他の人は自殺だとしたのだった。

と言うことは、あんなに綺麗な傷痕を自分でつけたと見做されたということ。そんなことあのデリアができる?

正直にいうと、あの国は全ての女性の基準がロレーヌで、彼女ならできるか出来ないかが基準になっていると思う。だこら、今までにも、他殺しかありえない死が自殺となった例はあるんじゃないだろうか。

勿論これはソフィアの感じたことであって証拠も何もないのだけれど。実際ロレーヌができるかどうかはわからない。言えることはどうやって、ではなくて、あの女ならやりかねない、ということだけ。

それに、あの従者を気取る男は一体何がしたかったのか。わざわざデリアにあって姉の存在を知らしめて。デリアにロレーヌの危険性を促そうとした?そもそも、その従者もどきと、あのサイラスというのは知り合いだったのだろうか。

ロレーヌを持ち上げるサイラスと、ロレーヌとデリアを引き剥がそうとした偽物の従者。

デリアを囮に、ロレーヌに対抗する勢力を探して潰そうとした、というのが当時の考えだったのだが。

わからないのはサイラスの行動だ。ロレーヌを守る為であれば、デリアにちょっかいをかける見ず知らずの男爵令嬢なんて、さっさと処分すれば良かったのに、何故彼女をわざわざ生かして置くのだろう?

……よっぽど好きなタイプだったの?

まるで自分がお花畑の住人だったような考えが頭を過り笑いそうになってしまった。サイラスは恋愛なんて多分一生興味などないタイプである。彼のことをよく知らないでもそれぐらいは理解できる。

だって、ロレーヌが頼りにするぐらいよ?自分に似て、性格が破綻しているぐらいでないと、彼女は人を信頼しない気がする。

そういう意味では、多分サイラスは、デリアを疎ましく思っていただろう。デリアも言っていた通り、蔑んだ目を向けてきたぐらいには。

ただソフィアはその言葉を聞いて、少し意外だった。

サイラスという男はロレーヌと違って、感情を隠すということが苦手なのだと。

それはただ小さな綻びで、デリアという近い存在だから気がついたのか、誰にでもそうなのかはわからなかったが、その後ソフィアも彼に対してデリアと同じ思いを抱いたからには、確かに彼は感情を面に出しやすい人らしい。


……そんな人を側に置く?あのロレーヌが?

ソフィアはその不可解さに違和感を拭えない。

思考の深みに嵌って動けなくなったソフィアを引き上げたのは、またもや夫だった。

「わからないものを考えるより、わかりやすいものに目を向けてみれば良いんじゃないかな。彼の弱点がそれとして、なら何の対策もしないなんてことあり得るのかな。」

ソフィアは自分の目が狭い範囲しか見えなくなっていたことに気がついた。

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