どうぞ、(誰にも真似できない)その愛を貫いてくださいませ(笑)

mios

文字の大きさ
上 下
16 / 24

侍女の仕事は

しおりを挟む
子爵令嬢のカトリーヌが身分の低い妃の侍女になったのは、学園在学中に自身の婚約が破棄になったから。相手の男は同じ子爵家の令息で同じ学年に通う男爵令嬢に骨抜きにされ、自分を蔑ろにしたのだ。その男爵令嬢は今や王子妃として、カトリーヌが世話をする羽目になっている。

子爵家の寄親はリガン侯爵家だったが、カトリーヌの婚約破棄が原因で、彼らの元を離れることになった。

リガン侯爵家とは年に何回かは、挨拶することもあったのに、カトリーヌのことをノエル・リガンは覚えていなかった。元より彼は覚えられる方であり、もてなしを受ける方であるから、人の名前を覚える必要はない。

カトリーヌは妃には仕えるがそれは仕事を選り好みできないからに他ならない。

ましてや王家にバレたら首など一瞬で飛びそうな危ない行為をすることも、仕事だから、と言える。

妃付きの侍女であっても、カトリーヌの主人は王家ではなかった。だから、王家に例え行為を咎められても主人に命令されただけと言えば良い。

それでも相手が王家なら無事ではないかもしれないが。

カトリーヌは婚約が破棄になってからは何も希望を持てずにいた。幼い頃からずっと好きだった婚約者とは、学園を卒業したらすぐに結婚するつもりで、互いの子爵家を発展させる為の勉強をしてきた。

彼女の勤勉さは、公爵家が寄親となった際に優位に働いた。公爵家のご令嬢は、妃付きではなく、自分付きになるように薦めてくれた。

だが、危険の伴う妃付きをカトリーヌは望んだ。

皆の人生を壊して、自由に生きている彼らの破滅を特等席で見たかったのだ。





「カトリーヌ嬢、王子妃がお呼びだ。」

我儘な王子妃は何かあるたびに侍女を呼び出す。カトリーヌの主人は、王子妃を甘やかせることを望んだ。

「貴女がいないと何も出来ないぐらい依存させて頂戴。」

幸か不幸か、その目論見は見事に当たる。侍女を蔑みながらも頼ってくる姿は愚かしく、可笑しい。

彼女はカトリーヌの手引きで呼ばれた男の子を立て続けに三人産んだ。二人は王家の血を引いていないから、廃籍されたが、後一人はどうだろうか。

夫と瓜二つの赤子は赤子だけでも、残されるかもしれない。カトリーヌは三人目の人物については素性がわからない。

妃は、同級生のマークス・キュリーだと言っていたが、カトリーヌが見た男はキュリー家の特徴の赤い髪を引き継いでいなかった。

キュリー家の赤毛は、光が当たると見ようによっては薄い金髪に見えないこともない。カトリーヌは妃がマークスだと言うからには異は唱えないことにした。

マークス・キュリーは既に貴族ではない。婚約者がいなくなり、後ろ盾がなくなった彼らには身分以外の価値がなかった。

王子妃の部屋に入ると、彼女はカトリーヌを見るなり尋ねてきた。

「この子、誰の子だと思う?」

突然聞かれてもよくわからない。わかることといえば、この子も儚くなりそうだと言う事実だけ。

「マークス様のお子ではないのですか?」

「……そうよね。」

そう、マークス様のフリをして忍び込んだ誰かがいなければ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

魅了魔法にかかって婚約者を死なせた俺の後悔と聖夜の夢

恋愛
  『スカーレット、貴様のような悪女を王太子妃にするわけにはいかん!今日をもって、婚約を破棄するっ!!』  王太子スティーヴンは宮中舞踏会で婚約者であるスカーレット・ランドルーフに婚約の破棄を宣言した。    この、お話は魅了魔法に掛かって大好きな婚約者との婚約を破棄した王太子のその後のお話。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※魔法のある異世界ですが、クリスマスはあります。 ※ご都合主義でゆるい設定です。

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。 だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。 全2話。

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します

天宮有
恋愛
バハムス王子の婚約者になった私ルーミエは、様々な問題を魔法で解決していた。 結婚式で起きた問題を解決した際に、私は全ての魔力を失ってしまう。 中断していた結婚式が再開すると「魔力のない者とは関わりたくない」とバハムスが言い出す。 そしてバハムスは、幼馴染のメリタを妻にしていた。 これはメリタの計画で、私からバハムスを奪うことに成功する。 私は城から追い出されると、今まで力になってくれた魔法使いのジトアがやって来る。 ずっと好きだったと告白されて、私のために時間を戻す魔法を編み出したようだ。 ジトアの魔法により時間を戻すことに成功して、私がバハムスの妻になってない時だった。 幼馴染と婚約者の本心を知ったから、私は婚約を破棄します。

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

義妹が私に毒を盛ったので、飲んだふりをして周りの反応を見て見る事にしました

新野乃花(大舟)
恋愛
義姉であるラナーと義妹であるレベッカは、ラナーの婚約者であるロッドを隔ててぎくしゃくとした関係にあった。というのも、義妹であるレベッカが一方的にラナーの事を敵対視し、関係を悪化させていたのだ。ある日、ラナーの事が気に入らないレベッカは、ラナーに渡すワインの中にちょっとした仕掛けを施した…。その結果、2人を巻き込む関係は思わぬ方向に進んでいくこととなるのだった…。

処理中です...