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手遅れの助言

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自分達に恨みがある人は、掃いて捨てるほどいる。学園での傍若無人な振る舞い然り、それ以前にも以降にも、王子という地位をフル活用しては居丈高に振る舞った。元婚約者が居たから、彼女がどうにかフォローしてくれていたから繋ぎ止めることができていた縁を、愚かにも婚約破棄という最低な形で、断ち切ったのは過去の自分。

彼女を大切にすれば良かった。そうは思うものの、元婚約者も既に人の妻。陛下の歳の離れた弟が、元婚約者の夫となり、今の王太子を支えている。


「君は誰の子を産むんだ?俺の子ではないだろう。」

妻は傷ついた顔をして、どうにか私の子だと言い募る。残念だが、とうに夜の渡りがなくなって、久しい。彼女の腹にいる子の父親は、自分ではないことは分かり切っているのだから、彼女を妃の座から引き摺り下ろして放逐したいぐらいだが、その権限はない。

今の王太子は、何故か妻も自分も処分しようとしない。

「子は然るべきところに預けた。お前たちに任せるとみすみす死なせてしまうかもしれないからな。」

元婚約者も何を考えているかわからなかったが、やはり兄なだけあって、彼も同様らしい。

第一王子という位はそのままに、何をやることもなく、ただ生きている。それがこんなにも辛く大変なことだとは思わなかった。

どちらが、父親か調べてみようか。

暇が高じて考えたことがそれである。半ばヤケクソで、彼は自分なりにまた産まれた時にショックを受けないように、子の父親を調べてみることにした。

王子や王子妃の公務はない。本来ならあるのだが、能力がない為に、今は叔父と元婚約者が代わりにやってくれている。

叔父上と、元婚約者は、仲睦まじくその優秀さを発揮しているらしい。彼女は自分の婚約者だった時には決して見せなかったとびきりの笑顔を叔父上には見せている。その代わり様を見て思い出した。元はといえば、叔父上が彼女を気に入っていると聞いたから、強引に彼女を婚約者に選んだのだった。叔父上というよりは兄のような存在だった人に、嫉妬を覚えたのはいつだったか。父の歳の離れた弟は、いくら努力しても立ち塞がる超えられない壁であった。婚約破棄をするまでは確かに自分もその場所にいた筈なのに、今では全てが初めからなかったような感覚にすらなるのだから。

一度だけ、婚約者を蔑ろにしている王子に叔父上が笑いかけてきたことがあった。

「誰にも理解されない愛を貫けるお前を誇らしく思うよ。」恋に溺れていた自分はそれを褒め言葉だと思い受け取っていたが、今ならわかる。あれは嫌味でしかない。

「誰にでも優しい女など、信用できないにも程がある。お前は賢いから、わかるだろう?あの男爵令嬢には寄り付かない方が賢明だと。ましてやお前は婚約者のある身。しかも政略結婚の相手だ。何が正しくて何が間違いか、履き違えるなよ。」

叔父上は政略結婚の婚約者を失うことの危険性を教えてくれていた。気づかなかったのは自分の所為。
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