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彼は私の グレイス視点
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グレイスは婚約者と、ロゼット公爵令嬢の不貞の噂を聞いても、何も思わなかった。やはり、と納得したのは兎も角、ジュリアスは知らなかったことなのだと、不思議に思っていた。知っていて許しているのだとばかり思い込んでいたのは、三人が幼馴染で昔から仲が良いと聞いていたから。
だけど、ジュリアス様の口調では、幼馴染ではあっても、親しくは無い、と言った様子だったらしい。
グレイスは誰がそんなことを言っていたのだっけ?と考えてある人物の顔が浮かんだ。
昔からグレイスには事あるごとに敵意を向けていたあの人。思えば初めに会った時からあの二人は手を繋いでいた。グレイスはその姿に少しモヤモヤしたことを思い出す。
あの頃は、まだケヴィン様に好かれるかもしれない、と些細な期待を抱いていたのだが。
結局、彼はアリスの方を取った。けれど、アリスを愛してはいても、不貞が理由で婚約破棄をされた方をアクト公爵家に入れることはできず、代わりにシューダー子爵家のご令嬢と婚約した、と聞いている。
シューダー子爵令嬢は一時期、グレイスに婚約を取りやめるように言い募って来たご令嬢だ。彼女ぐらいの熱意があるなら、きっとケヴィン様に真に思う相手がいても、許してくれるだろう。
グレイスは、アリス・ロゼット公爵令嬢から貰った手紙を読んではいない。
到着して早々、王家からの使いの方が、回収して行ってしまった。
「手違いで配達されてしまいまして、申し訳ございません。」
特に仲の良い間柄ではなかったから、読んでしまった後で、難癖をつけられ、勝手に他人宛の手紙を読んだことにされても困るので、正直なところは助かったと思っていた。
彼女は、ケヴィン様だけでなく、マーカス様にも懸想されていたようで、気の多い女性だと、判明してしまった。
とはいえ、マーカス様を気に入ったアリス嬢には少し親近感さえ覚える。同時に複数の男性に懸想することは理解できないが、顔だけに固執していたアリス嬢が、マーカス様に目をつけたなら、彼には他にも良いところがたくさんありますよ、と上から目線で諭したくなる。
グレイスは今回の件で、次の婚約者をゆっくり決めていい、と言うことになった。従って、王家から畏れ多くも、ジュリアス様の次の婚約者という大役を打診された時はすぐに断った。
ジュリアス様の顔は少しも残念そうには見えなかったけれど、「気が変わったら、教えてくれ。」と言って去っていった後ろ姿は少し元気なく見えた。
グレイスには兄がいるから、家を継ぐ必要はない。だから、平民相手だろうが、下位貴族相手だろうが、好きにしていいのだと、家族には言われている。
兄によると、アクト公爵令息との婚約は最初からあまり賛成できなかったそうだ。
「あれは顔だけだからな。」
サリエル兄様は、マーカス様を気に入ってはいるようで、二人で話している時にちょくちょく割り入ってくるようになった。そうなると、グレイスは疎外感に襲われる。兄との間の方が仲が良いような感じがして、「彼は私の友人だ。」とでも言いたくなるのだ。
彼は私だけのものではないのに。随分と我儘になった自分自身に恥ずかしくなった。
だけど、ジュリアス様の口調では、幼馴染ではあっても、親しくは無い、と言った様子だったらしい。
グレイスは誰がそんなことを言っていたのだっけ?と考えてある人物の顔が浮かんだ。
昔からグレイスには事あるごとに敵意を向けていたあの人。思えば初めに会った時からあの二人は手を繋いでいた。グレイスはその姿に少しモヤモヤしたことを思い出す。
あの頃は、まだケヴィン様に好かれるかもしれない、と些細な期待を抱いていたのだが。
結局、彼はアリスの方を取った。けれど、アリスを愛してはいても、不貞が理由で婚約破棄をされた方をアクト公爵家に入れることはできず、代わりにシューダー子爵家のご令嬢と婚約した、と聞いている。
シューダー子爵令嬢は一時期、グレイスに婚約を取りやめるように言い募って来たご令嬢だ。彼女ぐらいの熱意があるなら、きっとケヴィン様に真に思う相手がいても、許してくれるだろう。
グレイスは、アリス・ロゼット公爵令嬢から貰った手紙を読んではいない。
到着して早々、王家からの使いの方が、回収して行ってしまった。
「手違いで配達されてしまいまして、申し訳ございません。」
特に仲の良い間柄ではなかったから、読んでしまった後で、難癖をつけられ、勝手に他人宛の手紙を読んだことにされても困るので、正直なところは助かったと思っていた。
彼女は、ケヴィン様だけでなく、マーカス様にも懸想されていたようで、気の多い女性だと、判明してしまった。
とはいえ、マーカス様を気に入ったアリス嬢には少し親近感さえ覚える。同時に複数の男性に懸想することは理解できないが、顔だけに固執していたアリス嬢が、マーカス様に目をつけたなら、彼には他にも良いところがたくさんありますよ、と上から目線で諭したくなる。
グレイスは今回の件で、次の婚約者をゆっくり決めていい、と言うことになった。従って、王家から畏れ多くも、ジュリアス様の次の婚約者という大役を打診された時はすぐに断った。
ジュリアス様の顔は少しも残念そうには見えなかったけれど、「気が変わったら、教えてくれ。」と言って去っていった後ろ姿は少し元気なく見えた。
グレイスには兄がいるから、家を継ぐ必要はない。だから、平民相手だろうが、下位貴族相手だろうが、好きにしていいのだと、家族には言われている。
兄によると、アクト公爵令息との婚約は最初からあまり賛成できなかったそうだ。
「あれは顔だけだからな。」
サリエル兄様は、マーカス様を気に入ってはいるようで、二人で話している時にちょくちょく割り入ってくるようになった。そうなると、グレイスは疎外感に襲われる。兄との間の方が仲が良いような感じがして、「彼は私の友人だ。」とでも言いたくなるのだ。
彼は私だけのものではないのに。随分と我儘になった自分自身に恥ずかしくなった。
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