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子爵令嬢の味方 マーカス、ミリー視点

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ミリーを見つけたのは、グレイスと何度か話した日の後だった。

二度目にグレイスに会った折、「まだ何もできていない」ことを正直に白状したが、グレイスからは、以前よりマシになったと聞いていた。だからといって、言わずにはいられなくて、ミリーに注意をしたのだった。

彼女は終始上の空といったところで、マーカスは己の力不足を感じたが、どうやら誰かを待っていたらしく、話の途中にも関わらず走って行ってしまった。

彼女の向かう先にいたのは、第一王子ジュリアスで、マーカスはまたも嫌な予感に包まれる。

「グレイス嬢に関係ありませんように。」

マーカスの願いはそれだけだが、相手が相手だけに、この願いは無駄になるような気がした。

ミリーはミリーで、マーカスに声をかけられたのが意外だった。時間があれば、話を聞きたいとは思ってはいたが、お目当ての人物が視界に入ると、すぐにでも報告に行きたくなって、話を勝手に切り上げ、目的の人物に一目散に話しかけた。

お目当ての彼、第一王子ジュリアスは、ミリーに目線は向けたものの、返事らしい返事もない。嫌がるそぶりを見せたところで、ミリー自身に人の心情を読むと言うことができないので、ついて行く他ないのだが。

ミリーはただ初恋にかまけていたわけではない。自分の恋を叶えるために、観察した結果、一番意見が通りやすそうな相手に目をつけて、ある提案をしただけだ。


どうせ普通ではお近づきにすらなれない身分差がある。ならば不敬覚悟で自ら飛び込んで仕舞えば勝機もあるかもしれない。ミリーが最近侯爵令嬢に纏わりついていたのはジュリアスに自分の本気度を知って貰う為だ。

第一王子ジュリアスの為に、動きます、と宣言する為に、侯爵令嬢を利用させて貰っただけだ。

ジュリアスに味方であることを信じて貰えたら、余計な注目を集める必要はない。例えば、あの、公爵令嬢に目をつけられたら、面倒そうだ、とか。

第一王子ジュリアスは、婚約者に興味も愛情も持っていない。彼らが幼馴染であることすら覚えていない。

気がつけばよく視界に入る、とは思うものの、その他大勢との違いを見つけられずにいた。

ミリーはそんな彼にある提案を持ちかけた。

「ケヴィン・アクト公爵令息の婚約者と今の婚約者を入れ替えませんか。」と。

子爵令嬢の自分なんて、あの令嬢達からすれば、取るに足らない者達だ。だけど、やりようによっては充分戦える。

侯爵令嬢に纏わりついてわかったことは、第一王子ジュリアスからの視線の方が、本来の婚約者であるケヴィン・アクトよりも多い回数、彼女の姿を捕らえていたこと。

そしてケヴィン・アクトの視線を遮っていたのは、いつも近くにいたアリス・ロゼットであったこと。

第一王子ジュリアスはある条件だけをつけて、後は任せてくれると言う。

「グレイスが傷つけられないようにしてくれ。彼女が幸せでないなら、私もあれらと同じになってしまう。」

二つの公爵家に喧嘩を売るのだから、グレイス嬢どころか、ジュリアス自身にだって飛び火が考えられる。だけど、ジュリアスの望みはグレイス嬢の幸せなのだから、仕方がない。

「任せてください。」

子爵令嬢には子爵令嬢なりの戦い方があるものの、圧倒的に戦力が足りない。ミリーの為に、とジュリアスは何人かの手足を貸してくれた。
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