公爵令嬢は被害者です

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宝物②

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好きな人には婚約者がいなかった。普通なら喜ぶべきことだ。だけど、私は喜ぶことが出来なかった。何故、婚約者がいないか、理由がわかってしまったからだ。

いずれは処分される存在。彼は今でこそ、自分の役目を受け入れて生きながらえているが、それはいつまでの話なのだろう。

私には婚約者がいたが、仲は良くなかった。私のことを完全に使用人だと思っている婚約者に、戒めようとしない王妃、陛下。勘違いした使用人、宰相など。

王家に嫁ぐなんて、ただの罰としか言いようがない。ある程度まで我慢したら、逃げようと思っていた。

エリ兄様からも、逃げたくなったら連絡しろ、と言われていたし、お父様とも話し合っていたから。

お父様が宰相職を引き受けなかった最大の理由は、王妃様の存在だ。王妃様はその昔、お父様に懸想していたそうだ。どちらかと言うとお父様似だと思っているのだけど、どうやら王妃様から見たら、私はお父様を奪ったお母様に見えるらしく、それはそれは虐められた。お母様もそうだけれど、私は一方的に虐められてただ泣いているタイプではなかったので、ちゃんと種は蒔いておいた。

王妃様のお気に入りの騎士に、私が虐げられている情報を小出しにして掴ませておいた。

彼らは騎士になるぐらいだから、弱い者の味方であり、あと単に若い女性が好き。だから、あからさまでも媚を売っておく方が良い。

ただ最終的には騎士団の所属は王家だから、掌を返されても文句は言えないので、そう言う意味でもダグラス卿を手に入れることができたのは、ラッキーだった。

私はお父様とお兄様達よりも強い男性と結婚すると言っていて、それでいうと、相手は限られていき、ダグラス卿と結婚するのだと思っていた。

勝手に思っていただけであり、ダグラス卿には一切そんな気はない。幼い頃から、懐いていたこともあり、口にしていただけだ。所謂、私ダグ兄様と結婚する~と言った感じだ。ところがライが現れてからそもそもの前提が壊れてしまった。

ライに会ってから、エリ兄様は、ため息ばかりつくし、ジェイ兄様からは、男の趣味が悪いと笑われる始末。私、わかりやすいのだろうか。

未だ私は婚約者のいる身と、あまり関わらないようにしようにも、どうしても近づきたくなってしまう。最終的には、私は婚約破棄をするのだから、いいか、と開き直ることにした。ダグ兄様は、私に近づく男性には容赦なかったのが、ライには近所のお兄さんみたいな関係になって、優しく接していたので、それも大きかった。ダグ兄様が認めた男なら、と言った具合に。

今回の件で、一番恐ろしいのは、間接的に、帝国に喧嘩を売って無事で済むのかと言うこと。

ライやフリードは、あっけらかんとしているが、どうやら自分のことには鈍感になる模様。フリードなんか、自分の命を脅かされたと言うのに、平気そうな顔をしている。

「兄上が動く訳じゃないから。」
と、二人は口を揃えて、言うが、私達小国にとっては、第一だろうが第二だろうが、帝国は怖いのよ。

ましてや、第二皇子は、ライやフリードと言った弟妹を特に大事にしている模様。恐ろしくて震えが止まらない。

「兄様は大丈夫だよ。凄く優しい人だから。」
ライはそう言うが、彼が優しいのは、自身の弟妹だけで、他はそうでもないのだよ。

何度言い聞かせても頑なに認めようとはしないから、何かの洗脳でも受けているんじゃないかと思うほど。今後、リリアがライと幸せになるには、第二皇子を味方につけなければならず、今後の対応次第で、それが変わってしまうかもしれないと思うと胃が痛い。

私が被害者となる事件は未然に防げたものの、罪は償って貰わなくてはならない。関係者を集めると大変な人数になった。

国王陛下は、牢に入れられる時に少し抵抗した。ララ嬢すら切り捨てて、罪を逃れようとしたのだが、エリ兄様が鎮めた、
あくまでも、今はまだエリ兄様は公爵家の人間であり、隣国の王配ではないから、関われる。その最後の機会で、王家を全員、牢に入れることになった。

貴族会議にかけるも、彼らの擁護をする者はおらず、クーデターは成功した。クーデターとはいっても大した暴力はなく、ほぼ自滅に近い、平和な最後だった。

アーレン公爵が、当面の王に決まったことで、帝国から誰かが寄越されると言う。

大臣や、貴族達は緊張していたが、ライ達は全く緊張していなかったことから、リリアは来るのは第二皇子であると気づくことができた。


「第二皇子ってどんな方なの?」
「優しいよ?」
「好きな食べ物とかは、ある?」
「うーん、甘いものかな。」

「来るとしたら、どのくらいかかるのかな。」
「何もなければ、明日にでも来るんじゃないかな。早く会いたいとか言ってたし。」

いや、普通なら帝国からだと、一週間以上はかかるのよ。船で。

いや、何も言うまい。私にとってライが宝物と言う以前に、第二皇子にとっても、彼らは宝物なんだろう。

そう、彼の言う通り、明日にでも来るんじゃない、と言う言葉を信じて用意をしよう。嫌われたら元も子もないから。
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