多分あの曲が全ての原因

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そんなことより

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魅了魔法を使える人間はとても少ない。大抵はリノスのように幼い頃に本人や周りが気がついて、何らかの対策を取ろうとするのが普通。今回の婚約者達にかけられた魅了魔法はとても強いものだったという。

使い手の彼女は、知らないと訴えていたが、大神官が何重もの解除を唱え、少しずつしかアプローチできなかったことも踏まえ、とても重い罪に課せられた。

彼女はいつ自分が魅了魔法を扱えることに気づき、魔法を磨く努力をしていたのだろう。

最初からあんなに強い魅了魔法を使えたのなら、周りが気がつかないはずはない。彼女は弱いなりに少しずつ自分の魔法を重ね付けし、強度を増やしていた。

魅了魔法の被害者は全て王子を含む高位貴族。彼らを狙ったことが、彼女が国家転覆を狙ったとされる証だった。

私に求婚して来た魔法が大好きな侯爵家の彼は、やはりまだ謹慎中の身で、公爵家からの抗議にまた謹慎期間が延びたようだ。

また侯爵家からは謝罪と、婚約の話は、忘れてほしい、とあった。勿論、そうすると回答し、話は終わった。

「彼の方には加害者という自覚がないのですね。」

彼らが愚かなのは前からの話で、決して魅了魔法は関係がない。彼からの求婚の手紙には、何故か婚約解消となった後の私を心配する気持ちと、ならば私ではどうかとの気持ち悪い思いが綴られていた。

いや、私が引かれているのは、半分は貴方達のせいだから!

こうなればいよいよ、聖女として神殿に入ろうか、とすら思うほど、私は何もかも嫌になっていた。




元婚約者はこの時の私が誰とも婚約しなかったことについて、魅了魔法が解け次第、自分が責任を持って私を迎えに行く、という決意をしていたという。

元婚約者は忘れているかもしれないが、魅了魔法云々の前にそんなに私達は仲が良くなかった。ひとえに、私があの元婚約者があまりにも幼稚で愚かだった為に、世の男性達は皆こうなのかと勘違いしてしまったことに原因がある。

自分の家族を見ているとそれは誤りであるとわかったであろうが、元婚約者に負けず劣らず私は思い込みが激しかった。



「私、魅了魔法の解明に尽力した方が良いのかしら。」

「お嬢様がなさりたいのでしたら。でも面倒臭いと、いつも仰っているお嬢様が珍しいですね。」

「だって、私、神の巫女とやらなのでしょう?一部界隈では聖女だの、言われ始めているみたいだし。」

「でも、嫌ならなさらなくても良いじゃありませんか。お嬢様に強制できる方なんて、そうそういらっしゃいませんし。」

侍女は何を今更、みたいな顔で、私がやらなければならないこと?を否定する。

「やることがないというなら、そんなことより楽しいことしませんか?」

「楽しいこと?」

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