多分あの曲が全ての原因

mios

文字の大きさ
上 下
4 / 6

魅了魔法

しおりを挟む
それにしても魅了魔法ってそんなにポピュラーなもの?

二人の話によると、大神官の息子リノスは、生まれた時から魅了魔法に悩まされて来たらしい。近くにいた誰かが使用していたわけではなくて、使用していたのは本人。小さな赤子を可愛がらない人なんてあまりいない為に、気づくのは遅くなったらしいがある程度大きくなって、近所の子や人に会うころになると、周りの態度の変化がおかしいと感じることはあったようだ。

そこで悪用しない道を選ぶのは流石、大神官を父に持つだけの、ことはある、という感じ?

あ、ダメだわ。さっき聞いた◯◯◯の曲が頭を離れない。

「私が剥がせるのって魅了魔法だけなのかしら。」

「さあ?でもそれならそれこそリノス様に聞いてみれば良いんじゃない?」

「そうですよ!それでお近づきになれたら、聖女として箔が付いて、新しい縁談が来るかもです。」

……なるほど?



二人の言う通り、と言う訳ではないが、大神官様経由で、彼、リノス様に会うことになった私は、気になることを聞くチャンスとばかりに、色々聞いてみた。

彼はあの時とは違う出立ちで現れた。

流石大神官の息子、法衣が死ぬほど似合っている。

挨拶をして、「ちょっと試させてください。」と彼は徐に、私の前に手を差し出した。「触れてもらえますか?」

私はエスコートと同じ形で手を差し出された手に乗せる。

少しの間そうして、それから彼はとんでもないことを言い出した。

「私を殴っていただけますか?」
「はい?」
「私をあの時と同じ感じで殴ってください。」

あの時とは、多分あの私が力を発現させたあの断罪の日のこと。私は頭の中に流れている曲をあの時の状態にしようとしたが、ダメだった。

私はすっかり、友人の妹が放った曲に支配されていた。

もし、この曲であの時と同じにならなければあの曲自体に特殊な能力がある、と言うことになるけれど、そんなことある?名前すら思い出せないのに?

仕方ないので、今の新しい曲のまま、彼の手を、自分の思うタイミングで叩く。
叩く寸前に、あの時殴った元婚約者の顔が頭を過ったけれど、何の恨みもない人を殴るよりも、恨みのある彼を思った方が殴りやすい。彼を頭の中に留めたまま、パァン、と音を鳴らせば、彼は驚きと同時に、すごく嬉しそうな顔をして、私の手をぎゅっと握った。

「貴女は素晴らしい。」

よく見ると美丈夫。だけど、まず心配したのは、あれでもしかして、新しい扉なんて開けてませんよね?と言うこと。

だって、結構いい音したよ?

「今私は貴女に魅了魔法をかけていました。ですが、貴女には全く効いていなかった。おまけに私を叩いて下さった時、私の魅了ははらはらと落ちてしまいました。貴女は素晴らしい力の持ち主です。本当に素晴らしい神の巫女です。」

その後、所謂高速詠唱と言うに相応しい語り口で魅了魔法について、長々と話し始めるリノス。

何かこーゆーの、前世で見たことがある。

私は悟った。コイツはもしかしなくとも、オタクとゆーやつでは?と。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

罪なき令嬢 (11話作成済み)

京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。 5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。 5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、 見る者の心を奪う美女だった。 ※完結済みです。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

王太子の愚行

よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。 彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。 婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。 さて、男爵令嬢をどうするか。 王太子の判断は?

美人な姉と『じゃない方』の私

LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。 そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。 みんな姉を好きになる… どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…? 私なんか、姉には遠く及ばない…

最愛のあなたへ

夕香里
恋愛
最愛の人から送られ続けていた手紙の最後の一通。それは受取人にとって、複雑な心境になる手紙。意を決して封を開けるとそこには愛が溢れていた。

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

処理中です...