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魅了魔法
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それにしても魅了魔法ってそんなにポピュラーなもの?
二人の話によると、大神官の息子リノスは、生まれた時から魅了魔法に悩まされて来たらしい。近くにいた誰かが使用していたわけではなくて、使用していたのは本人。小さな赤子を可愛がらない人なんてあまりいない為に、気づくのは遅くなったらしいがある程度大きくなって、近所の子や人に会うころになると、周りの態度の変化がおかしいと感じることはあったようだ。
そこで悪用しない道を選ぶのは流石、大神官を父に持つだけの、ことはある、という感じ?
あ、ダメだわ。さっき聞いた◯◯◯の曲が頭を離れない。
「私が剥がせるのって魅了魔法だけなのかしら。」
「さあ?でもそれならそれこそリノス様に聞いてみれば良いんじゃない?」
「そうですよ!それでお近づきになれたら、聖女として箔が付いて、新しい縁談が来るかもです。」
……なるほど?
二人の言う通り、と言う訳ではないが、大神官様経由で、彼、リノス様に会うことになった私は、気になることを聞くチャンスとばかりに、色々聞いてみた。
彼はあの時とは違う出立ちで現れた。
流石大神官の息子、法衣が死ぬほど似合っている。
挨拶をして、「ちょっと試させてください。」と彼は徐に、私の前に手を差し出した。「触れてもらえますか?」
私はエスコートと同じ形で手を差し出された手に乗せる。
少しの間そうして、それから彼はとんでもないことを言い出した。
「私を殴っていただけますか?」
「はい?」
「私をあの時と同じ感じで殴ってください。」
あの時とは、多分あの私が力を発現させたあの断罪の日のこと。私は頭の中に流れている曲をあの時の状態にしようとしたが、ダメだった。
私はすっかり、友人の妹が放った曲に支配されていた。
もし、この曲であの時と同じにならなければあの曲自体に特殊な能力がある、と言うことになるけれど、そんなことある?名前すら思い出せないのに?
仕方ないので、今の新しい曲のまま、彼の手を、自分の思うタイミングで叩く。
叩く寸前に、あの時殴った元婚約者の顔が頭を過ったけれど、何の恨みもない人を殴るよりも、恨みのある彼を思った方が殴りやすい。彼を頭の中に留めたまま、パァン、と音を鳴らせば、彼は驚きと同時に、すごく嬉しそうな顔をして、私の手をぎゅっと握った。
「貴女は素晴らしい。」
よく見ると美丈夫。だけど、まず心配したのは、あれでもしかして、新しい扉なんて開けてませんよね?と言うこと。
だって、結構いい音したよ?
「今私は貴女に魅了魔法をかけていました。ですが、貴女には全く効いていなかった。おまけに私を叩いて下さった時、私の魅了ははらはらと落ちてしまいました。貴女は素晴らしい力の持ち主です。本当に素晴らしい神の巫女です。」
その後、所謂高速詠唱と言うに相応しい語り口で魅了魔法について、長々と話し始めるリノス。
何かこーゆーの、前世で見たことがある。
私は悟った。コイツはもしかしなくとも、オタクとゆーやつでは?と。
二人の話によると、大神官の息子リノスは、生まれた時から魅了魔法に悩まされて来たらしい。近くにいた誰かが使用していたわけではなくて、使用していたのは本人。小さな赤子を可愛がらない人なんてあまりいない為に、気づくのは遅くなったらしいがある程度大きくなって、近所の子や人に会うころになると、周りの態度の変化がおかしいと感じることはあったようだ。
そこで悪用しない道を選ぶのは流石、大神官を父に持つだけの、ことはある、という感じ?
あ、ダメだわ。さっき聞いた◯◯◯の曲が頭を離れない。
「私が剥がせるのって魅了魔法だけなのかしら。」
「さあ?でもそれならそれこそリノス様に聞いてみれば良いんじゃない?」
「そうですよ!それでお近づきになれたら、聖女として箔が付いて、新しい縁談が来るかもです。」
……なるほど?
二人の言う通り、と言う訳ではないが、大神官様経由で、彼、リノス様に会うことになった私は、気になることを聞くチャンスとばかりに、色々聞いてみた。
彼はあの時とは違う出立ちで現れた。
流石大神官の息子、法衣が死ぬほど似合っている。
挨拶をして、「ちょっと試させてください。」と彼は徐に、私の前に手を差し出した。「触れてもらえますか?」
私はエスコートと同じ形で手を差し出された手に乗せる。
少しの間そうして、それから彼はとんでもないことを言い出した。
「私を殴っていただけますか?」
「はい?」
「私をあの時と同じ感じで殴ってください。」
あの時とは、多分あの私が力を発現させたあの断罪の日のこと。私は頭の中に流れている曲をあの時の状態にしようとしたが、ダメだった。
私はすっかり、友人の妹が放った曲に支配されていた。
もし、この曲であの時と同じにならなければあの曲自体に特殊な能力がある、と言うことになるけれど、そんなことある?名前すら思い出せないのに?
仕方ないので、今の新しい曲のまま、彼の手を、自分の思うタイミングで叩く。
叩く寸前に、あの時殴った元婚約者の顔が頭を過ったけれど、何の恨みもない人を殴るよりも、恨みのある彼を思った方が殴りやすい。彼を頭の中に留めたまま、パァン、と音を鳴らせば、彼は驚きと同時に、すごく嬉しそうな顔をして、私の手をぎゅっと握った。
「貴女は素晴らしい。」
よく見ると美丈夫。だけど、まず心配したのは、あれでもしかして、新しい扉なんて開けてませんよね?と言うこと。
だって、結構いい音したよ?
「今私は貴女に魅了魔法をかけていました。ですが、貴女には全く効いていなかった。おまけに私を叩いて下さった時、私の魅了ははらはらと落ちてしまいました。貴女は素晴らしい力の持ち主です。本当に素晴らしい神の巫女です。」
その後、所謂高速詠唱と言うに相応しい語り口で魅了魔法について、長々と話し始めるリノス。
何かこーゆーの、前世で見たことがある。
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