1 / 9
はじまり
しおりを挟む
真っ暗闇の森の中を一人彷徨い歩くものがいた。どこから来たのか、どこへ行こうとしているのか、わからないまま道を進む。
どこかで、ケモノの鳴き声が聞こえ、小さな子供は、震えて身を潜めた。
それでも、今までいたところよりは、まだマシだと思った。
頼れるものはない。せっかくにげだせたのだから。行けるところまで行こう。
捕まったら、と思うと足が竦む。まっすぐ進んでるようで、前と同じところへ帰ってきてしまったら?
見つかればただでは済まない。
今度こそ、鎖で繋がれて、足や、腕を切り落とされて、もう二度と逃げられない。
自分の想像した光景に、動揺し、呼吸が荒くなる。
必死で自分を落ち着かせ、さっきケモノが鳴いていた方角へ足を進める。
奥へ、奥へ。
ずっと奥の、ケモノたちが住うところまで。
追ってくる者達は、子供が臆病だと思っている。奥まで来ることは出来ないと思ってる。だから、裏をかいて、森のずっと奥へ行って隠れよう。
木の実とか、食べられそうな物はいくらでもある。
子供は、小さい体を利用して草の陰に身を隠し、夜通し歩いた。
朝になる頃には、森のずいぶん奥まで来ることが出来た。
草木に朝露がついて、幻想的な光景を見て、ほうっと息をつくと、自分1人ぐらいは隠れられそうな茂みに身を隠し、少しウトウトした。
森の奥には獣人が、住んでいた。
ちょうど、子供が微睡んでいる茂みは、獣人の所有する庭だった。
普段とは違う匂いにすぐに気づき、匂いを辿って、子供をみつけた。小さな体にはたくさんの傷があって、傷を見るに、古い傷、新しい傷、とが混在していた。
そこは獣人の家で、一家族が住んでいる。子供を見つけたのは息子だった。
寝かせたまま、家に運び、別の匂いが無いかを確認する。
どうやら匂いは、この子供のだけで、
他にはなかった。
「母さん。」息子は母親に子供を見せた。母親は、驚いたものの、ベッドを整えて、
「ここで寝かせておやり」と言った。
「あの子はどこにいたんだ。」
「あっちの茂みにいたよ。」
「まだ小さいね。親は心配してるだろうに。」
小さな体にたくさんの傷。
心配するような親が、いるだろうか。
「町からここまで結構かかるよ。ずっと1人だったのか、誰かと一緒だったのか。」
「事件か事故に巻き込まれたのかもしれないね。」
子供が起きたら事情を聞くとして、まずは寝かせることにした。
子供が目を覚ましたのは、それから3時間ほど経ってから。
見知らぬ天井と部屋に狼狽る。
ゆっくり窓の近くへ行きそこから見える景色がいつもの景色と異なることに安堵する。
助けてもらったのなら、御礼を言わなきゃならない。もし追手が、もう来るのなら、逃げなきゃいけない。
焦るとまた呼吸が乱れた。
落ち着かせようと、深呼吸をしていると、部屋の扉が開いた。
「ああ、起きたね。お腹空いてるだろ。朝ごはん食べるかい?」
子供は獣人を見るのが初めてだったが、優しい目をした獣人の母親に怖さは全く感じなかった。
「さっき、あんた庭で倒れてたんだよ。
事情はあとできくから、ご飯食べな。」
子供は何も言えず、手を引かれて、ダイニングへ向かった。
「あんたを見つけたのは、息子でね。もう学校行っちゃったんだけど。すーごく心配してたから、今日はすぐかえってくると思うよ。」
「遠慮せず、食べな。」
出て来た料理はどれも美味しくて、子供は生まれてはじめて、お腹いっぱいになるまで食べた。
「もう、いいのかい?」
頷いて、美味しかった、と言うと、
「なら、良かった。」
と、優しく笑った。
「名前はあるかい?」
子供は「743」と言った。
あの施設では、いつも数字で呼ばれていた。
母親は困った顔をして「いい名前をつけてあげなくちゃねー。」と笑った。
どこかで、ケモノの鳴き声が聞こえ、小さな子供は、震えて身を潜めた。
それでも、今までいたところよりは、まだマシだと思った。
頼れるものはない。せっかくにげだせたのだから。行けるところまで行こう。
捕まったら、と思うと足が竦む。まっすぐ進んでるようで、前と同じところへ帰ってきてしまったら?
見つかればただでは済まない。
今度こそ、鎖で繋がれて、足や、腕を切り落とされて、もう二度と逃げられない。
自分の想像した光景に、動揺し、呼吸が荒くなる。
必死で自分を落ち着かせ、さっきケモノが鳴いていた方角へ足を進める。
奥へ、奥へ。
ずっと奥の、ケモノたちが住うところまで。
追ってくる者達は、子供が臆病だと思っている。奥まで来ることは出来ないと思ってる。だから、裏をかいて、森のずっと奥へ行って隠れよう。
木の実とか、食べられそうな物はいくらでもある。
子供は、小さい体を利用して草の陰に身を隠し、夜通し歩いた。
朝になる頃には、森のずいぶん奥まで来ることが出来た。
草木に朝露がついて、幻想的な光景を見て、ほうっと息をつくと、自分1人ぐらいは隠れられそうな茂みに身を隠し、少しウトウトした。
森の奥には獣人が、住んでいた。
ちょうど、子供が微睡んでいる茂みは、獣人の所有する庭だった。
普段とは違う匂いにすぐに気づき、匂いを辿って、子供をみつけた。小さな体にはたくさんの傷があって、傷を見るに、古い傷、新しい傷、とが混在していた。
そこは獣人の家で、一家族が住んでいる。子供を見つけたのは息子だった。
寝かせたまま、家に運び、別の匂いが無いかを確認する。
どうやら匂いは、この子供のだけで、
他にはなかった。
「母さん。」息子は母親に子供を見せた。母親は、驚いたものの、ベッドを整えて、
「ここで寝かせておやり」と言った。
「あの子はどこにいたんだ。」
「あっちの茂みにいたよ。」
「まだ小さいね。親は心配してるだろうに。」
小さな体にたくさんの傷。
心配するような親が、いるだろうか。
「町からここまで結構かかるよ。ずっと1人だったのか、誰かと一緒だったのか。」
「事件か事故に巻き込まれたのかもしれないね。」
子供が起きたら事情を聞くとして、まずは寝かせることにした。
子供が目を覚ましたのは、それから3時間ほど経ってから。
見知らぬ天井と部屋に狼狽る。
ゆっくり窓の近くへ行きそこから見える景色がいつもの景色と異なることに安堵する。
助けてもらったのなら、御礼を言わなきゃならない。もし追手が、もう来るのなら、逃げなきゃいけない。
焦るとまた呼吸が乱れた。
落ち着かせようと、深呼吸をしていると、部屋の扉が開いた。
「ああ、起きたね。お腹空いてるだろ。朝ごはん食べるかい?」
子供は獣人を見るのが初めてだったが、優しい目をした獣人の母親に怖さは全く感じなかった。
「さっき、あんた庭で倒れてたんだよ。
事情はあとできくから、ご飯食べな。」
子供は何も言えず、手を引かれて、ダイニングへ向かった。
「あんたを見つけたのは、息子でね。もう学校行っちゃったんだけど。すーごく心配してたから、今日はすぐかえってくると思うよ。」
「遠慮せず、食べな。」
出て来た料理はどれも美味しくて、子供は生まれてはじめて、お腹いっぱいになるまで食べた。
「もう、いいのかい?」
頷いて、美味しかった、と言うと、
「なら、良かった。」
と、優しく笑った。
「名前はあるかい?」
子供は「743」と言った。
あの施設では、いつも数字で呼ばれていた。
母親は困った顔をして「いい名前をつけてあげなくちゃねー。」と笑った。
150
あなたにおすすめの小説
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい
鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。
家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。
そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。
いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。
そんなふうに優しくしたってダメですよ?
ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて――
……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか?
※タイトル変更しました。
旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」
番など、御免こうむる
池家乃あひる
ファンタジー
「運命の番」の第一研究者であるセリカは、やんごとなき事情により獣人が暮らすルガリア国に派遣されている。
だが、来日した日から第二王子が助手を「運命の番」だと言い張り、どれだけ否定しようとも聞き入れない有様。
むしろ運命の番を引き裂く大罪人だとセリカを処刑すると言い張る始末。
無事に役目を果たし、帰国しようとするセリカたちだったが、当然のように第二王子が妨害してきて……?
※リハビリがてら、書きたいところだけ書いた話です
※設定はふんわりとしています
※ジャンルが分からなかったため、ひとまずキャラ文芸で設定しております
※小説家になろうにも投稿しております
『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』
伊織愁
恋愛
人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。
実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。
二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
『番』という存在
彗
恋愛
義母とその娘に虐げられているリアリーと狼獣人のカインが番として結ばれる物語。
*基本的に1日1話ずつの投稿です。
(カイン視点だけ2話投稿となります。)
書き終えているお話なのでブクマやしおりなどつけていただければ幸いです。
***2022.7.9 HOTランキング11位!!はじめての投稿でこんなにたくさんの方に読んでいただけてとても嬉しいです!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる