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懺悔編
ある紳士
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目の前に、信じがたい光景が繰り広げられている。船からどんどん人が落とされていくのだ。目の前には華奢な少年がいて、色々なところから飛び出てくるならず者を美しい所作で、海に落としていく。
これは何かの見せ物なのか?
大道芸にしては、落ちた人間の慌てようがリアルだ。それ以上考えようとすると、頭の中で、警笛が鳴る。これは、ショーだと思いたい。これ以上船が遅れるのは勘弁してほしい。
いまだ、先程の魔族襲来のショックが消えていない中、こんな事件が起きては、呪われてる、と思わなくもない。
あー、嫌だ嫌だ。
私はたまたま通りかかっただけだ。
私は騎士でもなければ、貴族でもない。ただのしがない平民だ。とりあえず今は、今だけは、巻き込まれたくない。
誰かも、私と同意見なのか、混乱の中、口笛を吹いたり、手拍子で応援したりしている。
少年は、観客に向かって恭しくお辞儀をすると、また空から襲いかかる敵をなぎ倒し、海へ何人かずつ、落としていく。
軽く悲鳴をあげたご令嬢に、「彼らは特別な訓練をうけていますので、ご心配なきよう。」と声をかけている。
その言葉を信じるものは何人ぐらいいるのか。少なくとも私は信じられない。背中がゾーッとした。
今海に落とされたものは、決してあがってくることはない。さっき落ちた人だって、もうしばらく経っているのに、上がってこない。多分、もう……。
考えるのをやめたい。でも考えてしまう。あんなに小さな少年があれだけの仕事をするのに、肝心の大人が海に落ちて上がってこれない、とは。
幸いなことに、認識はされていないみたいだ。今のうちに、王弟殿下に御目通り願いたいのだけれど、どうかなあ。
王弟殿下は覚えていてくれるだろうか。覚えていなくても、これからすることに変わりはない。あくまでも、味方として、ここにいるのだから。
とはいえ、あの少年とは仲良くなれないと思うな。失礼なことを考えているのが、わかったのか、少年は振り向いてニッコリ笑った。
後ろを見たが誰もいない。どうやら、見つかってしまったらしい。
ああ、今はばれたくなかったのに。
王弟殿下に会うのだから、身嗜みを整える。服装には問題ない筈だ。あとは手土産だが、これも問題ない。
恩をただ、返すのがこんなに難しいとは思わなかった。
「こちらへ、どうぞ。」
少年に通された部屋には、王弟殿下の他に、変わったお客様がいて、我がもの顔で王弟殿下に寄り添っていた。
面白い。私に喧嘩を売っているのだな。
不機嫌さを隠しきれない私に王弟殿下は甘く囁く。
「会いたかった。」
「私もです!」
せっかく誂えた服なのに、全てが無駄になってしまった。私は今真っ白な犬になって、王弟殿下の膝に乗っていた。
これは何かの見せ物なのか?
大道芸にしては、落ちた人間の慌てようがリアルだ。それ以上考えようとすると、頭の中で、警笛が鳴る。これは、ショーだと思いたい。これ以上船が遅れるのは勘弁してほしい。
いまだ、先程の魔族襲来のショックが消えていない中、こんな事件が起きては、呪われてる、と思わなくもない。
あー、嫌だ嫌だ。
私はたまたま通りかかっただけだ。
私は騎士でもなければ、貴族でもない。ただのしがない平民だ。とりあえず今は、今だけは、巻き込まれたくない。
誰かも、私と同意見なのか、混乱の中、口笛を吹いたり、手拍子で応援したりしている。
少年は、観客に向かって恭しくお辞儀をすると、また空から襲いかかる敵をなぎ倒し、海へ何人かずつ、落としていく。
軽く悲鳴をあげたご令嬢に、「彼らは特別な訓練をうけていますので、ご心配なきよう。」と声をかけている。
その言葉を信じるものは何人ぐらいいるのか。少なくとも私は信じられない。背中がゾーッとした。
今海に落とされたものは、決してあがってくることはない。さっき落ちた人だって、もうしばらく経っているのに、上がってこない。多分、もう……。
考えるのをやめたい。でも考えてしまう。あんなに小さな少年があれだけの仕事をするのに、肝心の大人が海に落ちて上がってこれない、とは。
幸いなことに、認識はされていないみたいだ。今のうちに、王弟殿下に御目通り願いたいのだけれど、どうかなあ。
王弟殿下は覚えていてくれるだろうか。覚えていなくても、これからすることに変わりはない。あくまでも、味方として、ここにいるのだから。
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