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本編 表側
何者
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聖女様の元に連れて行くと言った瞬間から見えない膜みたいな物が、周りを覆った。魔法だろうか。魔力を持たないアーリオやエミリアは戸惑いながら、見ることすら叶わないが、何故か守られているような気がして、その人をみる。
自分の父親よりは少し若いぐらいの綺麗な顔立ちをしたどこかの王族と思われる男。彼は自分をマークと呼ぶように、言ったが偽名だろう。真後ろに人がいて、驚いたのも束の間、マークさんの目が真後ろの人物に注がれる。
どうやら従者らしい。振り返るととても若い少年がいた。ララと同じぐらいの少年。
「悪かったな。お前も挨拶してきたか。」
少年は不機嫌そうに、マークさんを睨みつけ、そのまま彼の後ろにいたと思ったら、居なくなっていた。手品みたいな鮮やかな退場に驚いていると、「彼は気にしないでくれ。不思議な奴なんだ。」
と言った。
不思議、というより嫌われてみえるのだが。私たちにとっては、あなたも相当不思議ですよ、という言葉を飲み込んだ。
この中にいれば、外からは姿が見えないという。あと結界にもなっている為、邪なことをしようとすると、弾かれてしまうそうだ。
この人の正体は今は知らない方が良いのだろう。知ってしまうと、後戻りはできない。聖女様の元に行ったあとは正直、何も考えていなかったのだが、嫌が応にも何かに巻き込まれてしまったのだろう。
最初から、第二王子に巻き込まれ、聖教会にも巻き込まれ、逃亡の身だ。今更もう一つや二つ巻き込まれるからと言って、状況がかわりもしない。
元より平民のアーリオやエミリアには、拒否と言う選択肢はない。ましてや、他国の王族まで現れたのだ。化け物まで現れたのだ。どうして、一平民にどうにかできよう。無理無理。
船内の移動には護衛が付いた。女性もいたらしく、エミリアが一人にならないようにしてくれている。アーリオは、自分には監視や護衛は不要だと辞退したのだが、聞いてもらえるわけもなく、ヒョロヒョロした体付きの少年がついた。
「頼りなくみえるけれど、少なくとも私よりは強いから。」
マークさんはそう言った。確かにそんな風には見えない。けれども、人が見かけ通りだったなんて、そうそうないことだから、信じた。
エミリアを送り届けるまでは自分だって死ぬことは許されない。
護衛が付いたことで安心したのか、ウトウトしてしまった。エミリアを守る、とか言ってたくせに、すぐ眠ってしまうとは。
そっとエミリアに心の中で謝罪する。こうして、本人に言えないことが増えていくのだと知った。
自分の父親よりは少し若いぐらいの綺麗な顔立ちをしたどこかの王族と思われる男。彼は自分をマークと呼ぶように、言ったが偽名だろう。真後ろに人がいて、驚いたのも束の間、マークさんの目が真後ろの人物に注がれる。
どうやら従者らしい。振り返るととても若い少年がいた。ララと同じぐらいの少年。
「悪かったな。お前も挨拶してきたか。」
少年は不機嫌そうに、マークさんを睨みつけ、そのまま彼の後ろにいたと思ったら、居なくなっていた。手品みたいな鮮やかな退場に驚いていると、「彼は気にしないでくれ。不思議な奴なんだ。」
と言った。
不思議、というより嫌われてみえるのだが。私たちにとっては、あなたも相当不思議ですよ、という言葉を飲み込んだ。
この中にいれば、外からは姿が見えないという。あと結界にもなっている為、邪なことをしようとすると、弾かれてしまうそうだ。
この人の正体は今は知らない方が良いのだろう。知ってしまうと、後戻りはできない。聖女様の元に行ったあとは正直、何も考えていなかったのだが、嫌が応にも何かに巻き込まれてしまったのだろう。
最初から、第二王子に巻き込まれ、聖教会にも巻き込まれ、逃亡の身だ。今更もう一つや二つ巻き込まれるからと言って、状況がかわりもしない。
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護衛が付いたことで安心したのか、ウトウトしてしまった。エミリアを守る、とか言ってたくせに、すぐ眠ってしまうとは。
そっとエミリアに心の中で謝罪する。こうして、本人に言えないことが増えていくのだと知った。
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