上 下
9 / 53
本編 表側

何で、ここに?

しおりを挟む
「ララ?どうして、ここに?」
「お姉ちゃん、アーリオ!」
そこにいたのは、エミリアの歳の離れた妹のララだった。もふもふしたデカい魔獣に乗っている。
「無事で良かったよー。」

エミリアとララが、感動の再会をしている中、魔獣の気配がだんだん近くなって、アーリオは気が気じゃない。

「二人とも、今はそんなことしている場合じゃ。」
「あ、そうだった。ちょっとお姉ちゃんとアーリオは離れていてくれる?」
ララは、今まで乗っていたもふもふに声をかける。
「行ってこーい。」
もふもふが暴れている魔獣を一撃で仕留める。もふもふは、褒めてほしそうにこちらに向かってきたかと思ったら、ポンと音がして、もふもふ本来の形に戻った。

「チロ?」
エミリアの声で気がついた。
ああ、こいつ、犬じゃなかったんだな。やっぱり。

エミリアが森で拾ってきたチロは、彼女が言い張るので、犬とされていたが、誰が見ても犬とは言い難く、かと言って何かはわからなかったので、犬?になったのだった。

で?

エミリアはよく、拾ってくる子どもだった。チロもだけれど、ララも、本当の血の繋がりはなくて、拾った子どもだったはず。ララはエミリアに物凄く懐いていた。初めて会った時から。

「ララは一体、何者なの?」
アーリオの問いにすこし苦笑いを浮かべて、ララは、観念したように謝った。

「騙してて、ごめんなさい。私の正体は、」
一瞬でララがいなくなり、代わりに親指程の大きさのララが現れた。

妖精?
は、何それ。

妖精なんて、見たことがなかった二人は思考停止に陥った。小さなララはため息をついたのち、元の人間の姿に戻ったけれど、やっぱり二人の思考は戻って来なかった。

「ララ…本当に、ララなのね。」
ようやく、エミリアがララの顔に触れる。ギュッと抱きしめられ、恥ずかしいのか、話を変えるララ。
「それより、この子、褒めてあげて。あれからずっと走って追ってくれたの。」
チロは、嬉しそうにこちらを向いて褒めてほしそうにしている。

「あと、これ。預かってきた。」
ララが差し出したのは三通の手紙。

エミリアと、アーリオの両親からの物が一通ずつ。

あと、一つは、司祭様からだった。

恐る恐るあけると、聖女の儀式に手違いがあったことを詫びるものだった。そして、聖女を探し出す為に追っ手が王宮と教会から向かっているので、決して捕まらないように。頼るなら、隣国の聖女に貴方達のことはお願いしておきます、と。

アーリオは読んだ後、不思議に思った。王宮からの追っ手のことはわかるとしても、教会からの追っ手に捕まるな、というのはどういう意味だろう。

司祭様とは違う意図のものが動いているのか?

はたして、この手紙を信用して良いものか。

エミリアがアーリオの考えこむ様子を見て心配そうにしている。

「とりあえず、ここを離れよう。」
司祭様の思惑はわからないが、捕まらないように、というのは同感だ。

何か嫌な予感がする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

処理中です...