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婚約者は容赦しないので
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彼女は学園初日(編入一日)にして、すでに学園を移ることが決まってしまった。確かに、貴族らしくできないのなら、混乱に巻き込まない為に、平民になるか学園を変えた方がいい。地方出身なら王都に憧れがあったのかもしれないが、それなら尚更王都のやり方を勉強しておくべきだった。
「そんなぁ、私ヒロインなんですよ。」
おかしいじゃないですか!という声が段々小さくなっていく。自称ヒロインは警備員にズルズルと引きずられ、本当にゴミを捨てるみたいにポイと、門から投げ出された。
「そう言えば、今日は何だか騒がしくないですね。」
アトラスはアリスに笑顔を向けるが、何だか笑顔に色をつけたら真っ黒、みたいな顔をしている。
いつもはもう少し、アトラスを熱い視線で追いかけては此方に敵意を向けてくるご令嬢達がいるのだが。
「アリスが熱を出している間に貴族家には慶事があったらしい。」
まあ、喜ばしいことなら良いか……じゃないわ。多分それ、あかんやつ。
確か前にも……侯爵家のご令嬢が同じような目に遭ってなかった?
断りきれない相手からの政略結婚で、実際嫁ぐと酷い目に遭う、みたいな。
確か何処かの国の側妃にと、請われて実際には贅沢どころか使用人みたいな扱いだったり、息子の相手に、と言って実際父親より年上の相手の妾にさせられたり、とまあ、結構な鬼畜ぶり。
あの時は関与を認めたアトラスも、今回は知らぬ存ぜぬのスタンスで行くらしい。
いやいや、わかるから!
侯爵令嬢の時は、本人たちの希望だったと言っていた。
そんな馬鹿な、とは思ったけど、それは一部本当のことだ。彼女達は自分がアトラスと婚約した後、私をどうするかと言う案をアトラスに話していたらしい。
だから、そうしてやったと。
……それなら仕方ないか。
婚約者と一緒にいるとどんどん自分が鬼畜になっていく気がする。
「大丈夫。今回は、運が良ければまた社交界で遭うこともあるよ。運が良ければ、ね。」
と言うことは何人かは、国内の貴族に嫁いだってことね。怖い、けど見てみたい。卒業後の初めての夜会で会えたら良いな、と思いながら、呑気にアリスは運ばれていた。
そう、運ばれているのである。またもや変な女が現れたことにより、アトラスは完全に待てが出来なくなってしまった。
運ばれていくアリスを見て、道を空けてくれる面々は、戸惑いが二割、諦めが一割、後は皆ニヤニヤと含み笑いをしている。
「もう、またやってるの?」
「結婚式の練習さ。当日、アリスは歩けないからね。」
「えっ?」
此方の驚きは他所に、ティファは、そっかー、などと流しているが、えっ、私結婚式、歩けないの?どう言うこと?
「いや、ほら、慣れない高いヒールで、歩くのは危険だから、こうやって抱っこで移動したら素敵だろ?」
「アリスには可哀想だけど、それを見たら最後の望みとやらを持っていた諦めの悪い人達も、流石に諦めるわよ。」
え?どこから訂正すれば良い?
アリスはとりあえず、婚約者に待てを教えるところから始めなくてはならない、と理解した。
終わり
読んでいただきありがとうございました。 mios
「そんなぁ、私ヒロインなんですよ。」
おかしいじゃないですか!という声が段々小さくなっていく。自称ヒロインは警備員にズルズルと引きずられ、本当にゴミを捨てるみたいにポイと、門から投げ出された。
「そう言えば、今日は何だか騒がしくないですね。」
アトラスはアリスに笑顔を向けるが、何だか笑顔に色をつけたら真っ黒、みたいな顔をしている。
いつもはもう少し、アトラスを熱い視線で追いかけては此方に敵意を向けてくるご令嬢達がいるのだが。
「アリスが熱を出している間に貴族家には慶事があったらしい。」
まあ、喜ばしいことなら良いか……じゃないわ。多分それ、あかんやつ。
確か前にも……侯爵家のご令嬢が同じような目に遭ってなかった?
断りきれない相手からの政略結婚で、実際嫁ぐと酷い目に遭う、みたいな。
確か何処かの国の側妃にと、請われて実際には贅沢どころか使用人みたいな扱いだったり、息子の相手に、と言って実際父親より年上の相手の妾にさせられたり、とまあ、結構な鬼畜ぶり。
あの時は関与を認めたアトラスも、今回は知らぬ存ぜぬのスタンスで行くらしい。
いやいや、わかるから!
侯爵令嬢の時は、本人たちの希望だったと言っていた。
そんな馬鹿な、とは思ったけど、それは一部本当のことだ。彼女達は自分がアトラスと婚約した後、私をどうするかと言う案をアトラスに話していたらしい。
だから、そうしてやったと。
……それなら仕方ないか。
婚約者と一緒にいるとどんどん自分が鬼畜になっていく気がする。
「大丈夫。今回は、運が良ければまた社交界で遭うこともあるよ。運が良ければ、ね。」
と言うことは何人かは、国内の貴族に嫁いだってことね。怖い、けど見てみたい。卒業後の初めての夜会で会えたら良いな、と思いながら、呑気にアリスは運ばれていた。
そう、運ばれているのである。またもや変な女が現れたことにより、アトラスは完全に待てが出来なくなってしまった。
運ばれていくアリスを見て、道を空けてくれる面々は、戸惑いが二割、諦めが一割、後は皆ニヤニヤと含み笑いをしている。
「もう、またやってるの?」
「結婚式の練習さ。当日、アリスは歩けないからね。」
「えっ?」
此方の驚きは他所に、ティファは、そっかー、などと流しているが、えっ、私結婚式、歩けないの?どう言うこと?
「いや、ほら、慣れない高いヒールで、歩くのは危険だから、こうやって抱っこで移動したら素敵だろ?」
「アリスには可哀想だけど、それを見たら最後の望みとやらを持っていた諦めの悪い人達も、流石に諦めるわよ。」
え?どこから訂正すれば良い?
アリスはとりあえず、婚約者に待てを教えるところから始めなくてはならない、と理解した。
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