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番外編 ダミアン

新しい生き方

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無事、文官登用試験に合格し、その後王太子殿下の口利きで、平民ながら王宮で働き始めた私に、貴族の娘から縁談が来たのは仕方ないことだった。従来ならば、断ることなんてあり得ないが、王太子殿下がうまく断ってくれた。私が元隣国の貴族だと言うのは、秘密として、守られているため、下位貴族には伝わらない。王家に近い貴族達の中にはちらほらと事情をわかってくれる者もいるにはいるが、ありがたいことに彼らは沈黙に徹している。それからも何度か私に対して、縁談が来ては断りを繰り返している。

何度か断ると、普通は諦めるものだが、その娘は、しつこかった。王宮に新米侍女として現れた。彼女は、隠せていると思っていたのだろうが、私には覚えがあった。彼女のこの大胆な行動には全て意味があることを。

彼女の最終目的は、王太子殿下の側室もしくは、愛妾になることだ。まずは私を手に入れて、言うことを聞かせようとしたのだろうが、お生憎様。私はその手を知っている。

「ダミアン、貴方貴族になりたくない?」

それは散々、ルーカス殿下にも言われた言葉。

ルーカス殿下は、ただ私をたくさんこき使うためにした提案だったが、彼女は違う。

ルーカス殿下は、私達に、一代限りの男爵家を用意してくれようとした。それを断ったのは貴族と言う立場に戻りたくないからだ。平民の方がこれから生きるのに辛くない。

「男爵程度なら平民と何ら変わりはない。」

心の底からでた言葉だったが、そう言うと、彼女は絶句した。

「平民のくせに生意気よ。」と言われて、罵られたが、私は変わらない。彼女は男爵家の娘だった為、馬鹿にされたと思ってこちらを睨みつけて来た。

「私のことを知らないなら、王宮に長く仕える者に尋ねると良い。きっと教えてくれる。」
そう伝えるときっと彼女のことを馬鹿にしてのことではなく、自分自身のことを口にしているのだと気づく筈だ。

ある日を境に、彼女の姿を見ることはなくなった。理由を知るつもりもなかったが、風の噂で聞いたのは、隣国の貴族に粗相をして、王太子殿下の怒りを買ったと言うものだ。

隣国の貴族……だれだ?

それには元貴族も含まれるのだろうか。

質問しようにも、王太子殿下はピリピリした雰囲気の中青筋を浮かべたまま、微笑んでいるし、家に帰れば、満面の笑みでクロエとクラリス様が出迎えてくれるし、で何となく察した。

「自分の価値を知らないのは、罪よね。」

ワイン何杯目ですか?また瓶がたくさん空いている。私はまた自動継ぎ機に徹し、もてなすことにした。
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