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ダメ人間輩出国

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第一王子に群がっていた貴族は全て綺麗に掃除をして、自分達の足元を固める作業は恙無く終わった。

元々の期待度も少なかったしね。
兄上に言い寄る貴族は、どちらかと言うと、国政には携わらずに、地方で悪質な税の取り立てとか、隠れて悪事をしていることが多く、その大部分が今回で粛清された。

兄上みたいな自分に甘いタイプは同じようなタイプを引き寄せるみたいだ。

自分もこれからは気を引き締めていかないと、すぐに足元を掬われてしまう。普段から兄上は長居しなかった執務室には、これまでは自分と王妃教育を終えた青白い顔のジャンヌがいたのが、今は違う。

同じ二人だけど、その間に漂う空気が、随分と居心地良い。理想を言うと、もう少し甘くても良い。

王妃教育と、兄上のやり残した公務の尻拭いで、顔色の悪かったジャンヌは、今ではほんのり色づいた美味しそうなほっぺを上気させ、私の隣に座っている。

「殿下、イチャイチャしないでください。」

「いいだろう。少しぐらい。」

「ダメです。目の毒です。」

「羨ましいんだろ。」

「当たり前です。」

ジャンヌを膝に乗せる、と言う目標は未だに叶えられていないものの、わかりやすく恥ずかしがるジャンヌは可愛すぎて悶えてしまう。こんな彼女がいて、他に目を移す兄上は本当にポンコツだな。

いくら見ても飽きない。

あまりにも、側近がうるさいので、ここまでやったら、思う存分イチャイチャする、と言う制限を決めた。

二人とも、やればできる子なんだ。

ふと、目の端に入り込んだ書類に、恐ろしい内容が書かれている。

「嘘だろ、またかよ。」

隣国からの留学生の案内だ。

正直嫌な予感しかしない。



隣国は元王妃の出身国で、今の国王陛下は、元王妃を裏切って下位貴族のご令嬢を娶った下半身ユルユル男。

多分兄上の本当の父ではないか、と思われる。

留学生の素性は、その国王陛下と、お相手の一人娘。王女様だ。

始めこそ、婚約者の横暴を告発し、真実の愛で結婚した隣国の国王陛下と王妃だったが、下位貴族出身の王妃は、社交界で上手く立ち回れず、浮いてしまい、敬遠されている。また国王陛下は、相次ぐハニートラップに悉く踊らされて、既にハーレムの主みたいになっている。国政には既に二人とも携わっていない。

隣国は、ダメ人間を製造することなら他に追従を許さない。

隣国の王妃は、王女を産んだきり、子宝には恵まれなかった。これは、運のものだし、仕方ないだろう。王女でも国を継げるように、するか否かで、論争が起きているものの、国王陛下の下半身事情により、継承権争いで、揉めに揉めている。

真実の愛って、何だっけ?
ただの女好きだろ?

こうなると、憎たらしかった元王妃が気の毒に思ってしまう。

まあ、あの王妃だったなら、こんな状況にはならなかっただろう。側妃だろうが何だろうが、捻じ伏せていただろう。

人には向き不向きがある。

王女がこのタイミングで留学したいと言う理由は何だ。異母兄である第一王子が、廃嫡された直後、来る理由は何だろう。

どうせ碌なことではない。私の隣国に対する印象は、地に落ちている。

どちらにせよ、今の甘い二人の雰囲気を邪魔しないで欲しい。
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