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お幸せになってください
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「ルーカス、そんなに見ていたら穴が開いてしまうわ。」
恥ずかしそうにしているジャンヌは可愛いが過ぎないか?
「大丈夫だよ。今までも大丈夫だったんだから。はい、あーん。」
膝に乗って貰うのは、断られたから次回頑張るとして、今日はあーん、だけで我慢しよう。
兄である第一王子が平民として、市井に降りてから、兄上を騙る平民が毎日城の前で喚くようになった。
兄上を騙るその男は私を見ると、汚らしい顔を歪めて、私の名前を呼ぶが、第二王子の名を呼び捨てにしないでもらえるかな。
ジャンヌ嬢との憩いの時間に、そいつがくると、非常にやかましい。興が削がれる。
私は平民の男に近づいて感謝を述べる。
「どうぞお幸せになってください。私の愛するジャンヌを蔑ろにしてまで掴んだ真実の愛を守り通してください。今更、時が戻せるわけないでしょう。貴方は平民で、私は次期王として、一緒にこの国を盛り上げて行きましょう。」
言い終わると同時に、ぶら下がり女が平民の後ろから近づいて来ている。彼女は何故か私を見ていて、どうやら兄上と同じく私に何か言いたいようだ。
私は一瞥すると、笑いが込み上げるのを我慢出来なかった。
兄上に、もう一つ言っておきたいことがあった。
「兄上、その姿、とてもお似合いですよ。あの汚らしいぶら下がり女と、とても良く似合っています。ああ、そう言えば、真実の愛とやら、私は兄上よりも先に相手に出会っているのですよ。誰だと思います?」
兄上は、私の顔を凝視する。こころなしか、顔が歪んでいるような気がするが、まあ、良いか。
「お察しの通り、ジャンヌですよ。とは言っても彼女はそこの女と違い、私に答えてくれたのは、兄上と婚約解消してからでしたが。
貴方が、真実の愛を振りかざして、ジャンヌを傷つけなければ、もう少し円満に終わらせても良かったのです。でも、貴方はどうしました?
もう、ここでみっともなく、王子を名乗るのはおやめなさい。元王族の経歴に傷がつきますよ。まあ、元々傷だらけの経歴でしたが。」
王妃の息子である彼は、身分こそ第一王子であったが、国王陛下は元より、宰相や他大臣に期待されてはいなかった。
所謂、謙遜でない方の愚息だ。
公務の中でも一番簡単なことですら、碌にできず、すぐに根を上げてしまう。王妃教育で疲れ切っているジャンヌが間を縫って、手伝ってくれているのを、当然と受け取り、努力もせず、浮気をして、遊び歩く。
側妃の息子である第二王子の私は、母に似て聡明だと言われていた。国王陛下は、元々側妃である母と婚約していて、仲は良好だった。第一王子が生まれたのち、すぐに私が生まれたのも、当然のことだ。
第一王子である兄上が生まれた時、兄上は陛下の息子ではないのではないか、と囁かれた。時期的に何もかも、おかしかったのだが、真相は闇に葬られた。
私が陛下に似ていることで、皆は期待した。だけれど、皆の期待を裏切らないで、王になるには兄上は邪魔で仕方なかった。
ジャンヌがいなければ、もう少し早く兄上は切り捨てられていただろう。兄上は、生命線だったジャンヌを切り捨てた。
兄上が綺麗に転落していったことで、一部には私が策を弄してジャンヌも王位も手に入れたと噂されているらしいが、それは事実ではない。
私は何もしていない。ジャンヌの側にいたこと以外には、何も。
愛する人の側にいることを、策と言うのか?
兄上が、いらないと捨てたジャンヌは、私には命よりも大切な人だったし、真実の愛の妨げとなって、兄が捨ててしまった王位も、私には必要なものだっただけだ。
嫌なら初めから捨てなければ、よかったんだ。
違うのか?
恥ずかしそうにしているジャンヌは可愛いが過ぎないか?
「大丈夫だよ。今までも大丈夫だったんだから。はい、あーん。」
膝に乗って貰うのは、断られたから次回頑張るとして、今日はあーん、だけで我慢しよう。
兄である第一王子が平民として、市井に降りてから、兄上を騙る平民が毎日城の前で喚くようになった。
兄上を騙るその男は私を見ると、汚らしい顔を歪めて、私の名前を呼ぶが、第二王子の名を呼び捨てにしないでもらえるかな。
ジャンヌ嬢との憩いの時間に、そいつがくると、非常にやかましい。興が削がれる。
私は平民の男に近づいて感謝を述べる。
「どうぞお幸せになってください。私の愛するジャンヌを蔑ろにしてまで掴んだ真実の愛を守り通してください。今更、時が戻せるわけないでしょう。貴方は平民で、私は次期王として、一緒にこの国を盛り上げて行きましょう。」
言い終わると同時に、ぶら下がり女が平民の後ろから近づいて来ている。彼女は何故か私を見ていて、どうやら兄上と同じく私に何か言いたいようだ。
私は一瞥すると、笑いが込み上げるのを我慢出来なかった。
兄上に、もう一つ言っておきたいことがあった。
「兄上、その姿、とてもお似合いですよ。あの汚らしいぶら下がり女と、とても良く似合っています。ああ、そう言えば、真実の愛とやら、私は兄上よりも先に相手に出会っているのですよ。誰だと思います?」
兄上は、私の顔を凝視する。こころなしか、顔が歪んでいるような気がするが、まあ、良いか。
「お察しの通り、ジャンヌですよ。とは言っても彼女はそこの女と違い、私に答えてくれたのは、兄上と婚約解消してからでしたが。
貴方が、真実の愛を振りかざして、ジャンヌを傷つけなければ、もう少し円満に終わらせても良かったのです。でも、貴方はどうしました?
もう、ここでみっともなく、王子を名乗るのはおやめなさい。元王族の経歴に傷がつきますよ。まあ、元々傷だらけの経歴でしたが。」
王妃の息子である彼は、身分こそ第一王子であったが、国王陛下は元より、宰相や他大臣に期待されてはいなかった。
所謂、謙遜でない方の愚息だ。
公務の中でも一番簡単なことですら、碌にできず、すぐに根を上げてしまう。王妃教育で疲れ切っているジャンヌが間を縫って、手伝ってくれているのを、当然と受け取り、努力もせず、浮気をして、遊び歩く。
側妃の息子である第二王子の私は、母に似て聡明だと言われていた。国王陛下は、元々側妃である母と婚約していて、仲は良好だった。第一王子が生まれたのち、すぐに私が生まれたのも、当然のことだ。
第一王子である兄上が生まれた時、兄上は陛下の息子ではないのではないか、と囁かれた。時期的に何もかも、おかしかったのだが、真相は闇に葬られた。
私が陛下に似ていることで、皆は期待した。だけれど、皆の期待を裏切らないで、王になるには兄上は邪魔で仕方なかった。
ジャンヌがいなければ、もう少し早く兄上は切り捨てられていただろう。兄上は、生命線だったジャンヌを切り捨てた。
兄上が綺麗に転落していったことで、一部には私が策を弄してジャンヌも王位も手に入れたと噂されているらしいが、それは事実ではない。
私は何もしていない。ジャンヌの側にいたこと以外には、何も。
愛する人の側にいることを、策と言うのか?
兄上が、いらないと捨てたジャンヌは、私には命よりも大切な人だったし、真実の愛の妨げとなって、兄が捨ててしまった王位も、私には必要なものだっただけだ。
嫌なら初めから捨てなければ、よかったんだ。
違うのか?
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