私が殺した筈の女

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噛み合わないまま

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結局、プリシラはローガンを愛しているままに、噛み合わない状態を受け入れて結婚した。古くからの関係は今更揺るがないとしても、心は盛り上がることもなく、平坦な日々を過ごしていた。

夜会にはあまり参加しなくなったものの、プリシラが参加しない場合は、ローガンも一人で向かうことはなく、そう言った意味ではローガンの気持ちを疑う隙はなかった。

そうなると、プリシラは使用人が気になって仕方がない。知らぬ間にカリーナの姿を彼女達の中に見つけようと躍起になった。

当然ながら、カリーナはどこにもいなかった。

使用人としては、若い夫婦が仲が良く、互いに嫉妬に身を焦がしているのを見るのは微笑ましい。

二人は傍目にはとても仲睦まじく見えていた。





夜会に出てはプリシラを探していた男は、彼女の結婚と相手を知り、そろそろ諦めなくてはいけないかも、と思い始めていた。

「どうやら賭けには負けたらしい。今世の私は運命に選ばれなかったようだ。」

彼にプリシラが運命の女性だと、唆したのは怪しげなある女で、彼女はプリシラに人生を終わらせられたと言った。

「彼女は私を殺すことで、私の運命の男性と添い遂げようとしている。彼女の運命は貴方なのだから、どうにかして、彼女を取り戻し、彼を私に返して欲しい。」

頭の悪そうなその女は、カリーナと言う名の元男爵令嬢で、今は霊体として、体を借りているだけだと言う。

確かにその身は、男の愛人の一人のものだ。従順な愛人が、急に偉そうな態度になったら、心を病んだかもしくは今まで騙されていたことを疑うが、男は、悪霊が自ら話した荒唐無稽な話に興味を示した。

男には愛人がたくさんいる。だが、身分の差から、どの女性も正妻にはできなかった。伯爵令嬢ならば、正妻には持ってこいだし、一度会った彼女は美しく、好みの女性だった。

何より、自分の欲望の為に、邪魔な女を手にかけられるところが男の興味を唆った。


会ってみると、驚いたことに手に触れただけで、二人が幸せに過ごす未来像が見えたのだ。

男は、プリシラを今すぐにでも連れて帰りたかった。だが、今はまだ相手にも心の整理が必要だと、手を離したのだが。


「まさか、夜会に出なくなるとは思わなかった。」

悪霊の女曰く、プリシラを男が奪い、失意のローガンを慰めるために、女の体が必要になるらしい。

「プリシラを娶るなら、この女はもういらないでしょう?私に貰えない?多分私とよく似た顔だから、ローガンは気にいると思うのよ。」

男は、プリシラを見た後なら、見劣りする愛人に目を向ける。本人が良いなら別に構わないが、あれだけ自分に自信があるようだった悪霊が愛人の体を望むとは意外な気がした。

何故なら、その女は愛人の中でもパッとしない地味な女だったからだ。

あの素朴さが好きだったのだけれど。今更悪霊から取り戻せるとは思っていないが彼女のことを思うと胸が少しだけ痛くなった。
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