私が殺した筈の女

mios

文字の大きさ
上 下
9 / 18

彼の望み

しおりを挟む
「あ、別に脅しとかではありません。お願いはあるのですが。」

いそいそと、どこか嬉しそうな様子で目の前の男はプリシラに一枚の紙を突き付ける。プリシラはそこに書かれているな内容に眉を顰めた。

「あなた方が隠しているかもしれない事実を私に買い取らせていただきたいのです。ええと、わかりにくいですかね。あなた方が、彼女を始末したのなら、私にその栄誉を譲って欲しいのです。いかがでしょうか。」

プリシラは、男がこちらを脅して金銭を要求するのだと思っていたのだが、彼の言い分は反対のようだ。自分が彼女を殺していないものの、殺したことにしたいから、それを黙っていてほしい、と言うことらしい。

「貴方の言っていることがよくわからないのだけど。」
「わかった。いいよ。」

プリシラとローガンの声はほぼ同時に発せられた。いつのまにか近くまで来ていたローガンは、彼の話が分かったらしい。

「君は正直そこまで彼女を愛しているようには見えなかったのだが。」
「ええ、そのつもりだったのですが。彼女が誰かに殺されたかもしれない、と思ったらそれだけでいてもたってもいられなくなりまして。実は心当たりのありそうな方に声をかけておりまして……彼女恨まれていたんですね。皆笑ってお金を受け取っていただけました。好きにすればよい、と。酔狂だな、と。」

皆自分が殺していなくても金は受け取るのだ。カリーナに籠絡された者達は皆金に困っている。なりふり構っていられないのはわかる。

「どこか違和感はあったんです。皆、何か隠しているんだろうな、って。でも、今日あなた方に会って分かりました。ああ、僕はやっと本物に辿り着いたのだと。金額は言い値で払います。足りなければまた働いてお支払いしますので。いかがですか?」

「その前に、貴方もお金はないのではなかった?」

「ああ、ご心配なく。親切な方にいただけたのですよ。いやあ、善行はしておくべきですね。」

「もし、この話を断ったらどうするの?」
「勿論、これらの証拠を持って、警察に駆け込みます。証拠は不十分でもあなた方にとっては醜聞は命取りでは?ああ、あなた方が隠した彼女の埋められた場所もわかっているんですよ。因みに私が殺されたら、それらは警察に渡される準備が整っていますので悪しからず。」

プリシラとローガンは顔を見合わせて、笑ってしまった。

「酔狂ね。好きにしたらいいわ。」

ローガンがサラサラとサインをして、権利を彼に渡すと、彼は嬉しそうに笑って、礼を言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最後のスチルを完成させたら、詰んだんですけど

mios
恋愛
「これでスチルコンプリートだね?」 愛しのジークフリート殿下に微笑まれ、顔色を変えたヒロイン、モニカ。 「え?スチル?え?」 「今日この日この瞬間が最後のスチルなのだろう?ヒロインとしての感想はいかがかな?」 6話完結+番外編1話

ヒロインガチャがまた外れました

mios
恋愛
第一王子のサイモンは机に突っ伏したまま動けない。この国に祀られている女神様よりヒロインガチャと言うものを下賜されたものの、未だに当たりが出たためしがない。 何故だ、何故、ヒドインばかり引くのだ!まともなヒロインを寄越せ!と叫ぶ第一王子とその婚約者ミリー。

浮気は私の方でした

mios
恋愛
子爵令嬢のアリアは、大好きな恋人に浮気され、失意のどん底にいた。 婚約前であったことを喜ぶべき? 悲しみからようやく立ち直ったと思ったら、ある書状が侯爵家より届いて…… 浮気相手は、私の方? 突如舞い込んだ慰謝料請求に慄いていると、相手の侯爵令嬢から連絡があり……

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

番(つがい)と言われても愛せない

黒姫
恋愛
竜人族のつがい召喚で異世界に転移させられた2人の少女達の運命は?

姉の代わりでしかない私

下菊みこと
恋愛
クソ野郎な旦那様も最終的に幸せになりますので閲覧ご注意を。 リリアーヌは、夫から姉の名前で呼ばれる。姉の代わりにされているのだ。それでも夫との子供が欲しいリリアーヌ。結果的に、子宝には恵まれるが…。 アルファポリス様でも投稿しています。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

わたしのアビス ~年上の無二の友人で実は父親だった仇敵が転生しても執着してくる~

やなぎ怜
恋愛
ティーナ(レオンティーナ)の大切なものすべてを奪い人生をぐちゃぐちゃにした仇敵は、彼女が唯一心を開ける相手だった。互いに正体を知らず親しくなったティーナとレオンツィオ。ふたりは大切な友人同士で――父娘(おやこ)だった。仲間を皆殺しにされ、追い詰められ、勝ち目がないと悟ったティーナは友人にして父にして仇敵であるレオンツィオの自身に対する好意を利用し、心中へと持ち込む。――それですべてが終わるはずだった。しかしなんの因果かティーナは転生し、再びレオンツィオと出会う。今度は赤の他人として。そして前世の記憶を持つレオンツィオはティーナに執着してきて……。 ※暴力・残虐表現あり。 ※舞台は現実世界に近しい異世界だと思ってください。 ※旧題「わたしのかいぶつ」。

処理中です...