上 下
26 / 33
サミュエル 13歳 ローラ 18歳

成長痛?

しおりを挟む
ローラの友人達が続々と結婚していって、ローラは楽しそうだ。

「人の結婚式を見ると、自分だったらどうするか、とか考えちゃいますね。」

そう言われると、自分もその気になってしまう。ローラのお嫁さんは可愛いだろうなぁ。

同時に、ローラは少し寂しそうにも見える。今まで、気ままに会っていた相手とあまり会えなくなるのだから。

「仕方がないことではありますが、やはり少し寂しいですね。」

「じゃあ、これからは私が一緒にいるよ。なら寂しくはないだろう?」

ローラは嬉しそうに笑うが、私が友人の代わりになるとは、お互いに思っていない。悔しいが、彼女達には話せることも私には話せないこともあるだろうし。逆は……あまりないように思うけれど。

「でも、サミュエル様は、そろそろお勉強の時間では?」

時計の針は無情にも、二人の時間の終わりを告げていた。

「残念。では行ってくるよ。」
ローラの手を離して、名残惜しく去ると、途中で、ローラのいる方へ向かうご令嬢を見つける。まさかな、と思いつつも、暫し眺めていると、ローラがこちらに気づいて、手を振った。手を振りかえし、目の端で捉えた映像は、さっきの令嬢が、ローラに話しかけようとするものだった。

ローラは知り合いだったのか、大層驚いていたが、まあ、特に気にする必要はなさそうだ。私はもうとっくに過ぎてしまった予定時刻に、苦笑しながら足早に教師の元へ向かう。

ローラの側にはあえて置いていった自分の従者も控えているので、何かあれば彼が何とかするだろう。私はどこかの男のように、愛する人に男性が近づいてほしくないからと、周りを女性で固めたりしない。彼女が望むならばいざ知らず。

なぜかと言うと、単純な話。彼女を任せてもいい、と思える女性が周りにいないから。私の周りにいるのは、頼りになる男達と、彼女にあることないこと吹き込もうと画策するいやらしい女達しかいない。優秀な女性達なら既にローラの周りに揃っていて、それは彼女自身の魅力に惹かれて集まってくるので、態々争いの種を撒き散らすこともない。

後から聞いた話では、もうすぐ愛しの人と結婚するらしい女性が、ローラに惚気ると同時にマウントを取ろうとしたらしい。

ローラはそれに対して、私との結婚を思い描き、目を閉じて幸せそうな顔をしていたらしいので、安堵する。どれだけしたくてもあと五年は結婚できないのは、仕方ない。

本人が気にしていないなら良いが、二十三歳というのは、行き遅れと言われる年齢でもある。

婚約者と言う立場に胡座をかかずに、彼女に、待っていてよかったと思ってほしいから、今からが本当に私が頑張らねば。

まずは身長が伸びて欲しいけれど……こればかりはね……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する

真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

処理中です...