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サミュエル 13歳 ローラ 18歳

馬の世話

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何もかも、ローラに敵わない私だが、一つか二つは、彼女より優れている物があると信じたい。その一つに、馬があった。馬車を動かすのは大変だけど、馬に乗って散歩ならできる。今は一人で乗るだけだけど、いつかはローラも乗せて二人でどこか行くのが夢なんだ。

馬の世話をするのも好き。餌のにんじんをあげたり、毛並みをブラッシングしたり。私の専用の馬は、ちょっとやんちゃだけど、可愛い馬なんだよ。

初めてローラに会わせた時は鼻の下が伸びてて、馬でも飼い主に似るんだって勉強になった。

ローラは、馬に乗ったことはないみたいだけど、私が乗ってる時、しきりに褒めてくれたから、乗りたいのかな。

「ローラは馬は怖くない?」
「ええ、遠目では怖い気もしますが、近くに寄ると目が綺麗で、素直な気持ちになれます。それに、彼はどことなく、サミュエル様に似てますし。」

「そうかな?」
「ええ、サミュエル様も、お髪を撫でたら、気持ち良さそうにされますし、筋肉質で引き締まった足が、似ていますわ。まだそこまで育ちきっていないところとか。」

うん。馬に似てるって褒め言葉だろうか。ちょっと迷うよね。

私の顔が困惑していたのがわかったのだろう。

「動物は飼い主に似ると言いますもの。サミュエル様が、可愛がっている証拠ですわ。」

という、訳の分からないフォローが入る。

「ねえ、ローラ。一応、褒めてくれてるんだよね?」

「勿論、そうですわ。今後、サミュエル様が何らかの用事でご不在の場合、私も彼の世話をしても宜しいですか?」

「うん。よろしくね。ローラの馬も欲しい?プレゼントしようか?」

「うーん。まず、乗れるかの確認からした方が良いかと。サミュエル様と一緒に乗ってから、でもよいですか?」

「うん。いつか、ローラを乗せて二人で馬に乗りたかったんだ。いつか、とは思ってたんだけど、別にいつからでも良いから、慣れた方が良いよね。今から乗ろっか。ちょっと大人を呼んでくるよ。何かあったら怖いからね。」

善は急げで、厩舎にいる大人に伝えると、責任者がたまたまいて、おかげでスムーズに乗れた。ローラはひたすら怯えたり、興奮したりで忙しかったけれど、私が密着して、手綱を引いたら、大人しくなった。

密着しすぎて、ほぼ後ろから抱きしめる形になってしまったんだけど。

あまりやると、変態だって叱られそうだね。邪な気持ちはあまりないから許して欲しい。

ローラは前を向いているからよく分からなかったんだけど、終わってから、少しぐらついていた。無理したならかわいそうだったかな。鼻を押さえていたからのぼせたのかも。
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