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サミュエル 10歳 ローラ 15歳
バレた
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「ローラ、これに見覚えある?よね。」
久しぶりのサミュたんとのお茶会に浮足立つ私に突きつけられた一冊の本。ヒュッと音を発し、私は崩れ落ちた。
「ローラ、怒らないから正直に言って。」
あれ、おかしい。サミュたんは怒らないって言ってるけど、既に怒りがダダ漏れの様相。もうバレてるんじゃ?あちら側にリズがいるけれど、首を横にふっているから、ああ、やっぱりもう手遅れなのね。
「サ、サミュエル様……落ち着いてください。」
「私は落ち着いているよ。違うかな。」
私の手を握り、逃さないように隅に追い詰めてはいるけれど、声色は怖いけど、まあ、落ち着いてる。
「いいえ。落ち着いてます。」
「だよね。」
ニッコリ無邪気な笑顔と、どす黒いオーラが合ってはいないけれど、それも成長の一部みたいで、不謹慎だけど、嬉しくなってくる。
「ローラ、私達は、親子ではなくて、婚約者同士なんだよ?」
「ええ、わかっております。」
だからこそ、間近でサミュたんを拝めるのだから。本当のママなら頻繁に会えないじゃないか。
「また、よからぬことを考えてるんじゃない?」
滅相もない。
「ローラ、私は母と恋愛する気はないんだよ。」
「勿論です。」
「ローラと恋愛したいんだよ。」
「ええ、勿論、わかっておりますわ。」
サミュたんは少し顔を顰めると、小さな声で呟いた。
「いや、わかってないだろ、それ。」
聞き返す間もなく、サミュたんの顔が近くなる。流石にこの距離は恥ずかしい。サミュたんはいつもの可愛らしい顔ではなくて、いつになく真剣な顔で、言った。
「ローラはわかってないようだから、私がきちんとわからせてあげるね。覚悟しておいて。」
何だかわからないけれど、サミュたんがグレちゃった。
「これ、兄上の執務室から拝借したんだけど、一冊ってことないよね。他にあるの?」
「出来たものから、デイヴィス様に献上しているので。今私の手元にあるものは、五冊目です。つまり、残り三冊はあちらにあるということになります。」
サミュたんが真剣な顔でため息をつく。そんな大人びた表情は初めてで、目に焼き付ける。
「あの、サミュエル様、怒った?」
サミュたんはかわいそうなものを見るような憐れみのこもった様子で私を見て、首を振った。
「怒ってはない。けど……辛い。」
何が?と聞いたら、流石に呆れられそうで聞けない。サミュたんが落ち込むことなど何もない。寧ろ皆に癒しを供給しているのだから、胸を張れば良いのに。
私が首を傾げている様子に、サミュたんが苦笑していたことを私は知らなかった。
久しぶりのサミュたんとのお茶会に浮足立つ私に突きつけられた一冊の本。ヒュッと音を発し、私は崩れ落ちた。
「ローラ、怒らないから正直に言って。」
あれ、おかしい。サミュたんは怒らないって言ってるけど、既に怒りがダダ漏れの様相。もうバレてるんじゃ?あちら側にリズがいるけれど、首を横にふっているから、ああ、やっぱりもう手遅れなのね。
「サ、サミュエル様……落ち着いてください。」
「私は落ち着いているよ。違うかな。」
私の手を握り、逃さないように隅に追い詰めてはいるけれど、声色は怖いけど、まあ、落ち着いてる。
「いいえ。落ち着いてます。」
「だよね。」
ニッコリ無邪気な笑顔と、どす黒いオーラが合ってはいないけれど、それも成長の一部みたいで、不謹慎だけど、嬉しくなってくる。
「ローラ、私達は、親子ではなくて、婚約者同士なんだよ?」
「ええ、わかっております。」
だからこそ、間近でサミュたんを拝めるのだから。本当のママなら頻繁に会えないじゃないか。
「また、よからぬことを考えてるんじゃない?」
滅相もない。
「ローラ、私は母と恋愛する気はないんだよ。」
「勿論です。」
「ローラと恋愛したいんだよ。」
「ええ、勿論、わかっておりますわ。」
サミュたんは少し顔を顰めると、小さな声で呟いた。
「いや、わかってないだろ、それ。」
聞き返す間もなく、サミュたんの顔が近くなる。流石にこの距離は恥ずかしい。サミュたんはいつもの可愛らしい顔ではなくて、いつになく真剣な顔で、言った。
「ローラはわかってないようだから、私がきちんとわからせてあげるね。覚悟しておいて。」
何だかわからないけれど、サミュたんがグレちゃった。
「これ、兄上の執務室から拝借したんだけど、一冊ってことないよね。他にあるの?」
「出来たものから、デイヴィス様に献上しているので。今私の手元にあるものは、五冊目です。つまり、残り三冊はあちらにあるということになります。」
サミュたんが真剣な顔でため息をつく。そんな大人びた表情は初めてで、目に焼き付ける。
「あの、サミュエル様、怒った?」
サミュたんはかわいそうなものを見るような憐れみのこもった様子で私を見て、首を振った。
「怒ってはない。けど……辛い。」
何が?と聞いたら、流石に呆れられそうで聞けない。サミュたんが落ち込むことなど何もない。寧ろ皆に癒しを供給しているのだから、胸を張れば良いのに。
私が首を傾げている様子に、サミュたんが苦笑していたことを私は知らなかった。
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