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サミュエル 7歳 ローラ 12歳
婚約者の膝の上
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「はい、あーん。」
「あーん。」
用意された美味しいお菓子のちょうど良い甘さが口の中に広がっていく。
自分で食べるもしくは飲むと言う選択肢は最初からない。
「美味しい?」
キラキラした顔で、覗き込まれ、喉に詰まりそうになりながら、頷くと、ニッコリと微笑みが返ってくる。
「紅茶は?」
うん、と頷くと、フー、フー、と冷ました紅茶を口まで運んでくれる。
特に寝たきりなわけではない。正直に言うと、クソ恥ずかしいけど、言うね。
今、僕は婚約者の膝の上に座って、お菓子を食べている。
ん?逆だろうって?
お前が、ご令嬢を抱っこしながらあーんしてもらってるんだろうって?
いや、違う。恥ずかしながら、って言っただろう。僕、サミュエルは、婚約者ローラの膝の上にいる。
これは、僕の身長が彼女に比べて小さすぎることに起因する、不幸な事故だ。
元々、ローラは王太子の兄の婚約者になるはずだった。年齢も体格も、お似合いの二人。僕にも、同じような小柄で可愛いご令嬢が用意されていたのだけど。
そこで兄がやらかした。
「お前みたいな、態度も身体もデカイ女はタイプじゃない。俺は、小柄で可愛らしい女が好きだ。」
その時の、空気の薄さと言ったら。
しかも兄は僕の婚約者になるご令嬢を気に入ったみたいで、彼女もどうやら満更でもない様子。
「兄上がそう仰るのでしたら、ローラを私が頂いても宜しいのですよね?」
ローラは僕の発言に、俯いていた顔を勢いよく上げると、「サミュたん。至福……」と呟いた。
ん?今何か聞こえた?
いや、まあ、気にしないでいこう。
そう言うわけで、僕らは、円満に婚約者を入れ替え、幸せを手にしたのである。
とは言え、周りは驚いた。
本来なら、第一王子に、公爵令嬢、第二王子に伯爵令嬢で予定していたのに、逆になってしまったのだから。
そのせいで、何故か僕が、兄上と王太子の座を争うのでは?みたいなことも言われるようになってしまった。
そんなバカな。
「ねえ、ローラ。ローラは私が婚約者でいいの?そのために頑張ってきたのでしょう?」
「ええ、まあ。でも、私はサミュた……サミュエル様と婚約者になれて嬉しいですわ。」
「本当に?僕…じゃない、私が後先考えなかったから、迷惑かけてない?」
「グハッ、かわ……いいえ、私もデイヴィス様と婚約するのは、嫌でしたの。あの方のタイプが私でないように、私もあの方は、タイプではないので。」
「そうなんだ。どう言う人がタイプなの?」
「……ひきませんか?」
「何で?」
何故かローラはさっきからずっと深呼吸して、気分を落ち着けている。具合でも悪いのだろうか。
「私の好きなタイプは、サミュエル様です!!!」
突然の大声の告白に驚いたものの、特に嫌悪感は感じない。代わりにじんわりと暖かいものが、心を満たしていく。
僕は、ローラの手を握り、「じゃあ、僕達、両思いだね!」と言ったら、ローラが顔を真っ赤にしたまま倒れてしまった。
やっぱり、具合が悪かったみたい。気がつかなくて悪いことしたな。
「あーん。」
用意された美味しいお菓子のちょうど良い甘さが口の中に広がっていく。
自分で食べるもしくは飲むと言う選択肢は最初からない。
「美味しい?」
キラキラした顔で、覗き込まれ、喉に詰まりそうになりながら、頷くと、ニッコリと微笑みが返ってくる。
「紅茶は?」
うん、と頷くと、フー、フー、と冷ました紅茶を口まで運んでくれる。
特に寝たきりなわけではない。正直に言うと、クソ恥ずかしいけど、言うね。
今、僕は婚約者の膝の上に座って、お菓子を食べている。
ん?逆だろうって?
お前が、ご令嬢を抱っこしながらあーんしてもらってるんだろうって?
いや、違う。恥ずかしながら、って言っただろう。僕、サミュエルは、婚約者ローラの膝の上にいる。
これは、僕の身長が彼女に比べて小さすぎることに起因する、不幸な事故だ。
元々、ローラは王太子の兄の婚約者になるはずだった。年齢も体格も、お似合いの二人。僕にも、同じような小柄で可愛いご令嬢が用意されていたのだけど。
そこで兄がやらかした。
「お前みたいな、態度も身体もデカイ女はタイプじゃない。俺は、小柄で可愛らしい女が好きだ。」
その時の、空気の薄さと言ったら。
しかも兄は僕の婚約者になるご令嬢を気に入ったみたいで、彼女もどうやら満更でもない様子。
「兄上がそう仰るのでしたら、ローラを私が頂いても宜しいのですよね?」
ローラは僕の発言に、俯いていた顔を勢いよく上げると、「サミュたん。至福……」と呟いた。
ん?今何か聞こえた?
いや、まあ、気にしないでいこう。
そう言うわけで、僕らは、円満に婚約者を入れ替え、幸せを手にしたのである。
とは言え、周りは驚いた。
本来なら、第一王子に、公爵令嬢、第二王子に伯爵令嬢で予定していたのに、逆になってしまったのだから。
そのせいで、何故か僕が、兄上と王太子の座を争うのでは?みたいなことも言われるようになってしまった。
そんなバカな。
「ねえ、ローラ。ローラは私が婚約者でいいの?そのために頑張ってきたのでしょう?」
「ええ、まあ。でも、私はサミュた……サミュエル様と婚約者になれて嬉しいですわ。」
「本当に?僕…じゃない、私が後先考えなかったから、迷惑かけてない?」
「グハッ、かわ……いいえ、私もデイヴィス様と婚約するのは、嫌でしたの。あの方のタイプが私でないように、私もあの方は、タイプではないので。」
「そうなんだ。どう言う人がタイプなの?」
「……ひきませんか?」
「何で?」
何故かローラはさっきからずっと深呼吸して、気分を落ち着けている。具合でも悪いのだろうか。
「私の好きなタイプは、サミュエル様です!!!」
突然の大声の告白に驚いたものの、特に嫌悪感は感じない。代わりにじんわりと暖かいものが、心を満たしていく。
僕は、ローラの手を握り、「じゃあ、僕達、両思いだね!」と言ったら、ローラが顔を真っ赤にしたまま倒れてしまった。
やっぱり、具合が悪かったみたい。気がつかなくて悪いことしたな。
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