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女神は驚いた
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女神は大層驚いた。生を全うし、再会した聖女に会うなり怒鳴られたのは初めての体験だった。
「どうしたの?そんなに怒って。」
「どうしたもこうしたもないわよ。何で私達死んでるのよ。」
「だって、それを望んでたのでしょう?貴女、毎日の祈りすらなかったから大変だったのよ。貴女の意思を読み取るには貴女の行動から読み取らないといけなくて。でも頑張って読み取ったからあっている筈。」
「は?私は勇者と一緒に魔王を倒して、最後は勇者と結婚して幸せに暮らしたかったの。なのに魔王を倒す間もなく死ぬって何よ、おかしいじゃない。」
「ええ?そうだったの?わからなかったわ。だって貴女、いつも何が楽しいのかキラキラしたドレスを着たり、お菓子を食べたり、宝石を選んだり、そんなことばかりして、魔法の訓練や、治癒魔法での施術や、聖女に与えられた仕事を全て別の子に与えていたじゃない?だから、てっきり貴女の力を彼女に譲りたいのだと思って。」
女神は心外だった。彼女は何もせずに魔王を倒して聖女の仕事をせずに、聖女と崇め立てられたかったらしい。
それはいくら何でも我儘じゃないかしら。そうは思ったけれど、それが彼女の望みならばそうする他はない。
「今度はちゃんとしてよね!」
女神は、もう一度、聖女の望み通りの人生を与えた……つもりだった。
時は少し遡り、テランス侯爵家のアメリアは、女神の神託を受けた。テランス侯爵家は敬虔な女神様の信者で、聖女とされる前から女神様への祈りを欠かしたことがなかった。前の人生で聖女が仕事を押し付けていた女性である。
彼女は聖女の力を受け継いで、魔王を倒す役目を与えられた。彼女が祈りを捧げれば捧げるほど、聖女に神聖力が溜まり、それを彼女が使用できる。
それならば、聖女が望む通り、何もしなくても崇められるのは聖女ということになる。
女神なりに、聖女の望みを叶えようと頑張った結果である。
だが、こうなると聖女は人間でなくとも良くなる。なので、聖女は生きる御神体として美しい少女のまま、聖女像として留め置かれることになった。
信者の中に、聖女像を飾る者も現れて、綺麗なドレスを着せられた聖女はとても美しく、女神は満足を覚えていた。
その後、アメリアは、魔王を倒し、彼女と共に旅に出た騎士と結婚した。
因みに前の人生で勇者だった王子は、聖女の恩恵を受けられなかったことから勇者ではなくなった。前の人生でも、聖女のおこぼれを貰っていただけの勇者は、女神にとって何の価値もなかった。
聖女は人間ではなくなったし、像が壊れるまでは生き続けるために、女神に文句を言うことすらできなくなった。
女神は最初からこうすれば良かったと、アメリアを見ながら幸せな笑みを浮かべた。
「あ、いけない。忘れていたわ。」
前に聖女が言っていた言葉には、勇者と結婚して幸せに暮らす、というものがあった。
今更勇者なんて作れない、と悩んだ末に、アメリアと国王陛下に勇者像を聖女像の隣に、建設することでなんとか帳尻を合わせたのだった。
これでめでたしめでたし、だわ。
勇者の顔が、アメリアの騎士に似ているのは仕方がない。それぐらいは誤差の範囲内と言うことにした。
「どうしたの?そんなに怒って。」
「どうしたもこうしたもないわよ。何で私達死んでるのよ。」
「だって、それを望んでたのでしょう?貴女、毎日の祈りすらなかったから大変だったのよ。貴女の意思を読み取るには貴女の行動から読み取らないといけなくて。でも頑張って読み取ったからあっている筈。」
「は?私は勇者と一緒に魔王を倒して、最後は勇者と結婚して幸せに暮らしたかったの。なのに魔王を倒す間もなく死ぬって何よ、おかしいじゃない。」
「ええ?そうだったの?わからなかったわ。だって貴女、いつも何が楽しいのかキラキラしたドレスを着たり、お菓子を食べたり、宝石を選んだり、そんなことばかりして、魔法の訓練や、治癒魔法での施術や、聖女に与えられた仕事を全て別の子に与えていたじゃない?だから、てっきり貴女の力を彼女に譲りたいのだと思って。」
女神は心外だった。彼女は何もせずに魔王を倒して聖女の仕事をせずに、聖女と崇め立てられたかったらしい。
それはいくら何でも我儘じゃないかしら。そうは思ったけれど、それが彼女の望みならばそうする他はない。
「今度はちゃんとしてよね!」
女神は、もう一度、聖女の望み通りの人生を与えた……つもりだった。
時は少し遡り、テランス侯爵家のアメリアは、女神の神託を受けた。テランス侯爵家は敬虔な女神様の信者で、聖女とされる前から女神様への祈りを欠かしたことがなかった。前の人生で聖女が仕事を押し付けていた女性である。
彼女は聖女の力を受け継いで、魔王を倒す役目を与えられた。彼女が祈りを捧げれば捧げるほど、聖女に神聖力が溜まり、それを彼女が使用できる。
それならば、聖女が望む通り、何もしなくても崇められるのは聖女ということになる。
女神なりに、聖女の望みを叶えようと頑張った結果である。
だが、こうなると聖女は人間でなくとも良くなる。なので、聖女は生きる御神体として美しい少女のまま、聖女像として留め置かれることになった。
信者の中に、聖女像を飾る者も現れて、綺麗なドレスを着せられた聖女はとても美しく、女神は満足を覚えていた。
その後、アメリアは、魔王を倒し、彼女と共に旅に出た騎士と結婚した。
因みに前の人生で勇者だった王子は、聖女の恩恵を受けられなかったことから勇者ではなくなった。前の人生でも、聖女のおこぼれを貰っていただけの勇者は、女神にとって何の価値もなかった。
聖女は人間ではなくなったし、像が壊れるまでは生き続けるために、女神に文句を言うことすらできなくなった。
女神は最初からこうすれば良かったと、アメリアを見ながら幸せな笑みを浮かべた。
「あ、いけない。忘れていたわ。」
前に聖女が言っていた言葉には、勇者と結婚して幸せに暮らす、というものがあった。
今更勇者なんて作れない、と悩んだ末に、アメリアと国王陛下に勇者像を聖女像の隣に、建設することでなんとか帳尻を合わせたのだった。
これでめでたしめでたし、だわ。
勇者の顔が、アメリアの騎士に似ているのは仕方がない。それぐらいは誤差の範囲内と言うことにした。
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