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第五章 あれ、詰んでる? (夕実視点)

私の役目?

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「本物のレオンに会わなくてはいけないわ。」

アリサの信じているレオンではなくて、本物のレオンに会わなくてはならない。今はまだ、冬眠中であるとされるレオン(本物)には、アリサは会わせられない。蒼が偽物だとわかってしまったら、最悪、手伝ってくれないかもしれないからだ。

私達の計画に、アリサは必要不可欠だ。あの王子殿下を引き取ってくれて、聖女の役目を担ってくれる女性が。

アリサを唯一無二の聖女だと納得させられれば、政略結婚でもいいから、王子は引き取って貰える。

夕実の計画において、不安要素の一番大きな部分を占めるのは、アリサや王子ではなく、レオンと、アリサを召喚した伯爵令嬢になった。それは、アードラー邸に訪れてから幾度も感じた危機感だ。

もう、ただの乙女ゲームなんかじゃないじゃない!

本物のレオンを探して、協力してもらうことをお願いすることは、早々に伯爵令嬢にはバレてしまうだろう。もしかしたら、レオンが言ってしまうかもしれない。だとすれば、隠そうとするのではなく、手を組んだ上で、妥協案を探すのが良い。

お願いだから、話の通じないタイプではありませんように!!


私は本物のレオンを探す口実をつくるため、蒼にアリサの側からの撤退を告げた。

本物がどのように動いてくるかわからないのに、偽物を側に置いておくことはない。

蒼は、思いの外、喜んでいた。使命があるとはいえ、アンネちゃん以外の女性にいい顔をし続けるのは、あの正直者には苦痛だっただろう。

ついでに、アンネちゃんも、蒼について行って貰った。アンネちゃんは、戸惑っていたようだけれど、一人にして誰かに存在がわかってしまえば、今度こそ逃げられないと思うから。

「私の安寧のために、蒼と一緒にいて欲しい。」

私の切実な願いが通じたと思う。

「わかったわ。大変な時は呼んで。いつでも駆けつけるわ。」

こちらに来る前には、ぎこちなかった二人の手を繋ぐ姿も、今ではすっかり慣れた様子で、側からみると、完全にただのカップルでしかない。

蒼はこちらに来てからは、祖母のパートナーに、鍛えられたようで、ヒョロヒョロだった体つきも何とか見れるぐらいにはなってきた。

あれなら、例え見つかったところで、アンネちゃんの為に盾になることぐらいはできるだろう。まあ、騎士団なんか連れてこられた日にはひとたまりもないだろうけれど。

あとは自分にかかっている。

元々そのつもりだとは言え、ここからはゲーム外の新たな扉をいくつも開いていかないといけないことに気を引き締める。

ただ決められたシナリオをこなすよりは、楽しいかもしれない。ゲームと違い、失敗したら終わりだけれど。

こうなったら、あの王子にも協力してもらわなくちゃ。不本意ながら、王子に頼らなくてはならないかもしれない。

あれ、ハニートラップってどうやるんだっけ?

夕実の思考はショートした。なんせ、まだ高校生の、乙女である。恋愛の、しかも相手を惚れさせて上手く利用するなんてできる気はしない。

あ、これ、詰んだかも……

人知れず大きな大きなため息を溢した。
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