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第三章 巻き込まれる

偽と呼ばれた聖女

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新しい聖女として、ユミが顔を売りつつあるタイミングで、偽聖女になってしまった女性と会わせてもらえることになった。いや、厳密に言うと、勿論俺たちはオマケで、ばあちゃんが魔法使いとして彼女を尋問する機会があり、手伝いと称して会いに行ったにすぎない。アンネちゃんは、万が一の為、会わせたくなかったのだが、アンネちゃん自身が会うことを望んだ為、絶対に俺から離れないと言う約束で、一緒に行くことになった。

彼女は貴族専用の牢にいた。平民の立場ながら、偽とは言われているが未だに聖女を名乗っているため、真偽を判断できないうちは、どうにもできない。

王家としては、聖女召喚であらわれたユミを全面的に聖女として、推し出したい為、彼女が偽であると、確証が欲しいのだろう。

彼女は虚ろな目をしていた。誰が目の前に来ようと興味のないような。ただずっとブツブツと何かを呟いていた。

俺は彼女がアンネちゃんを害することがないのならば、味方につけてもいいかも、と思っていた。アンネちゃんが名乗り出ない状況で、夕実が聖女でないとわかってしまった時に、彼女を聖女として返り咲かせ、夕実を奪還できたら、それでこちらは話が済むからだ。

夕実が聖女として、力があった場合、最悪、アンネちゃんの代わりに王子と結婚とかになったら困る。夕実にちゃんと確認がとれたら、兄として反対はしないが、あの王子の態度からすると、ちゃんと夕実の意見を聞いてくれるかは、わからない。

うーーーん。

彼女の呟きを聞くつもりはなかったのだが、聞こえてきたのは日本語で、驚いて凝視してしまった。

タイミング悪く俯いていた彼女が俺の顔をとらえる。

「な、何であんたがここに?」

ん?俺、知り合いでしたっけ?

彼女は目を見開いて、近づいて、俺の顔を隅々まで眺める。

急に、顔を上に逸らし、目を瞑り、左手を高く突き上げる。

「シークレット、来たぁーーー。」

よくはわからないが、楽しそうで何より。

「どうして、こんなところに古の魔法使いが?」

「あの、どなたとお間違えかわかりませんが、私はそのようなものではありません。」

彼女は、俺の返事を聞いて泣き出してしまった。

「良かったー。もうダメかと思った。私にはレオン様だけよ。私はまだ見捨てられてなかったみたい。良かった。」

俺は人の話を聞いていない彼女に、不穏な空気を感じて、後ずさる。

彼女は、誰が話しかけても、今度からは俺だけを見て、受け答えをする。

怖。何か狙いを定められた気がする。

アンネちゃんを見ると、真っ青な顔をしていたので、先に戻るか聞くと、顔色は悪いのに、頑張っていようとする。

そんなに頑張らなくて良いのに。良い子だな。頭を撫でようとして、今は使用人に扮していたことに気がついた。

恥ずかしい。俺は、行き場のなくなった腕を引っ込めたところを、牢の中の彼女がまじまじと見ていたことに気が付かなかった。


彼女は、アンネちゃんを見ていたが、アンネちゃんだとは気がついていないようで安心した。これならアンネちゃんに被害は及ばない、と能天気なことを考えていた。
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