もふもふは魔王城から逃げられない

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新作のお菓子

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リスは今新作のお菓子を死ぬほど食べている。リスの恥ずかしい勘違いを正さなかった罰として、魔王は強制労働中だった。

リスは独り立ちしてすぐのお子様で、相手は魔王で、食べるという単語に別の意味があるなんて思いもしない。

魔王はわざと、ではないのだが、勘違いして震えているリスに対して、説明せずに放置したのを咎められていた。

リスは、正直なところ、はじめこそ、穴があったら入りたい気持ちでいっぱいだったが、そんなに怒りは感じなかった。

ただ、凄く恥ずかしい思いをしたのは事実で、その憤りをぶつけるため、罰としたに過ぎない。

リスは、魔王がそうまでして、自分とそういうことをしたいと思っていたことが、不思議でならなかったし、行為の後、気遣ってくれたり、幸せそうな顔を見せてくれるところも、よくわからなかった。

そんなに、私のことが好きなのか、と。

好きと言われて嬉しくないわけもなく。
ただただ自分の気持ちを整理することも出来ずに戸惑うばかりだった。

難しいことを考えると、甘いものが食べたくなる。

リスには父親がいなかった。どういう経緯かはわからないが、物心ついた時にはすでに母親しかいなかった。そのことを寂しいと思ったことはない。
全て母親がしてくれていたから。

自分も独り立ちしたら、子供を産んで
育てて、と想像していた。だけど、そこに相手の姿はなかった。リスは一人では子供を産めないことを知っていたのに、すっかり頭から抜け落ちてしまっていた。

もし今のリスが、子供を産むとしたら、相手は、と想像して、魔王の顔が出てくる。私は魔王の子を生みたいのかな。

不本意ながら結婚してしまったし、それが自然だよね。

魔王城の外には出られないのだから、魔王の子を産んで、魔王と一緒に過ごすことが私の生きる道なのかも。

新作のお菓子を次々と持ってきては、手ずから食べさせてくれる魔王を見て考える。

「まだ怒ってるのか?」
魔王にはリスのような尻尾はないものの、わかりやすい表情から、尻尾のようなものが見える。今は何かシュンとしてる。

怒ってはいない。
けれど少しぐらい意地悪しても構わないよね、とリスはほくそ笑む。

プイと目をそらすと、より魔王の尻尾が、シュンとする。

何か、わかってきたぞ。
これ、面白いな。

リスは味をしめていく。
魔王の操縦方法がようやく分かった。

私に嫌われたくないのね。
ニンマリと、リスは笑ってしまう。
魔王はそれをみて驚いたものの、さっきの態度が演技だとバレてしまった。






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