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魅了の庭

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魔王からの提案をすんなり受けてリスは魔王城の中にある木を物色し始めた。
リスは手頃な木を見つけた。木と木の間にハンモックをつける。
今日はここでのんびりしよう。

魔王の飼い猫?ピアちゃんはここまでは入って来られない。体が大きすぎて、狭い所には入って来られないのだ。

ちょうど、魔王の部屋からはよく見えるところにリスの新しい家は出来ていた。

ハンモックでのんびりとしていると新作のお菓子を手に魔王が現れる。
ハンモックに興味があるようなので、重量オーバーだけ気になったが、貸してあげる。

手を広げて、乗れという。
断る。多分重量オーバーだし。

いいから、と乗せられる。
多分魔法で何かしてるのだろう。
二人が、ハンモックに入って寝そべることができる。

魔王の大きな体に乗っかる状態でいたが、密着しているため、無駄にドキドキする。魔王の体から鼓動が聞こえてくる。

リスはお子様で、男性に免疫がない。
魔王は無駄に美形だし。

ハンモックは、ゆらゆら揺れて、リスの落ち着きをなくした。

魔王はいつも通り手ずからリスにお菓子を食べさせる。それが今までなら、何の感情もなかったのだが、急に恥ずかしく感じた。

食べるのが、遅くなるリスに不思議そうに問いかける。
「あんまり美味しくないか?」
ブンブンと首を横に振る。
「おいひい」
「じゃあ、遠慮せず食え。」
美味しいお菓子を食べさせてもらいながら、恥ずかしく思う自分の心を不思議に感じた。

リスは今まで、魔王を特別意識したことはなかった。綺麗な顔ではあるが、それだけ。

でも、さっきハンモックに乗せてくれた時の胸板の厚さとか、力の強さとか、食べさせてくれるときの嬉しそうな顔とか見れば、意識はしてしまう。

リスだって年頃の女の子なのだ。

とはいえ、何で急にドキドキするようになったかは、わからない。

魔王の庭についてリスは知らないことが多すぎたのだった。

魔王の庭には魅了の花が咲いている。黄色い小さい花で、近くにいる人の魅力を少し上げてくれる。とはいえ、そんなに強い効果はない。

リスが、選んだ木の周りにはたくさんこの花が咲いていて、リスの思考に影響をもたらせた、というのが正解であったが、知る由もないリスは、そこで過ごしながら魔王に対してドキドキを膨らませていた。

魔王はリスの変化に気づかなかった。
割とポンコツである。

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