愚王は二代続かない

mios

文字の大きさ
上 下
44 / 58
第四章 間違いと変化

未来ではなく過去

しおりを挟む
エイデンの身柄はサリュー家に引き取られ、今は大人しくなっているようだ。そもそも無理矢理魂と身体を引き離されそうになり、必死に抵抗した結果だったので、禁忌魔法ごと、結界に封じ込めてしまえば、魔力の放出は治った。

ただし、本人の意識が戻るかどうかは、これからにかかっている。

アイザックが後のことを妹であるアリアに任せると言ったため、シシーと共にアリア嬢がこの後の会議に参加した。

「諸悪の根源が元々王家の影だったとして、それが何故今になって魔王を復活させようと目論んだのかが、さっぱりわからないのだが。そもそも魔王って何だかわかっている者はいるのか。」

フレル公爵は、テオドールからリカルドの方を見渡し、ため息をつく。

「いえ、古い文献にも魔王と言う記述はなく……ただ少し前に遺跡の調査で聞き取りをした者が偶々未来予知をしておりまして、近い未来、魔王が復活するということを言い当てました。」

「何だ、それは。未来予知だと?占いだの予知だの、そんな不確定な情報で、何ができると言うのか。その者が嘘をついているかもわからないだろうが。」

怒ると言うよりは呆れているような公爵の口調に、テオドールは頭が冷えた。

確かに口に出してみると、随分とふわふわな情報に踊らされていた。渦中にいる時は、早くどうにかしないと、と言う焦燥に襲われていたのに。

そう思ったのはテオドールだけではなかった。同じようにリカルドも思ったらしく、首を傾げていると、シシーがマミの資料に目を通したあと、こう告げた。

「それは、強制力というらしいですわ。話が上手く進んでいかないと、強制的に干渉してくる力のことです。」

「それも、禁忌魔法なのか?」
「いえ、わかりません。調べてみますわ。」

公爵にも、荒唐無稽だとは言われそうだが、念の為、未来予知の資料を見てもらうことにする。陛下の退位が決まって、王妃様以外の上の世代に未来予知について知っている人がいれば良いと思ってのことだ。

シシーに注釈を入れてもらいながら、読了した公爵は、苦虫を噛み潰したような顔をして周りを見渡した。

「もう少し私を信用して欲しかったですな。」

そう口にした公爵は忌々しげな顔を崩さないまま、シシーとリカルドを見つめ、頭を横に振った。

「残念ながらこの話をそっくりそのまま聞いたことがある。これは未来予知ではない。昔、大昔、既にあったことだ。この国が建国する前の、まだその頃この国は帝国で、我が国になってからの歴史には魔王や、勇者、聖女などは存在しないが、帝国の歴史には存在する。ただし、帝国の中でも秘匿されている歴史の汚点でもあるが。

これを未来予知とするなら、同じことを起こすつもりだと、単に宣言しているようだが。

帝国が関わってくると、厄介だぞ。」

「待ってください。帝国の歴史なら、王妃様ならお分かりになりますよね?王妃様は、何も仰らなかったですよ?」

シシーが反論する。確かに内容が帝国の歴史に関することならば、帝国と交流している王妃が、知らないなどあり得ない。

「ジェス第二王子を帰還させよう。話はそれからだ。」

公爵は、有無を言わさぬ口調でそう言った。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者とのお茶の時に交換条件。「 飲んでみて?」

BBやっこ
恋愛
婚約者との交流といえば、お茶の時間。客間であっていたけど「飽きた」という言葉で、しょうがなくテラスにいる。毒物にできる植物もあるのに危機感がないのか、護衛を信用しているのかわからない婚約者。 王位継承権を持つ、一応王子だ。継承一位でもなければこの平和な国で、王になる事もない。はっきり言って微妙。その男とお茶の時間は妙な沈黙が続く。そして事件は起きた。 「起こしたの間違いでしょう?お嬢様。」

【完結】初恋の彼が忘れられないまま王太子妃の最有力候補になっていた私は、今日もその彼に憎まれ嫌われています

Rohdea
恋愛
───私はかつてとっても大切で一生分とも思える恋をした。 その恋は、あの日……私のせいでボロボロに砕け壊れてしまったけれど。 だけど、あなたが私を憎みどんなに嫌っていても、それでも私はあなたの事が忘れられなかった── 公爵令嬢のエリーシャは、 この国の王太子、アラン殿下の婚約者となる未来の王太子妃の最有力候補と呼ばれていた。 エリーシャが婚約者候補の1人に選ばれてから、3年。 ようやく、ようやく殿下の婚約者……つまり未来の王太子妃が決定する時がやって来た。 (やっと、この日が……!) 待ちに待った発表の時! あの日から長かった。でも、これで私は……やっと解放される。 憎まれ嫌われてしまったけれど、 これからは“彼”への想いを胸に秘めてひっそりと生きて行こう。 …………そう思っていたのに。 とある“冤罪”を着せられたせいで、 ひっそりどころか再び“彼”との関わりが増えていく事に──

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

【完結】「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」

まほりろ
恋愛
腹違いの妹を長年に渡りいじめていた罪に問われた私は、第一王子に婚約破棄され、侯爵令嬢の身分を剥奪され、塔の最上階に閉じ込められていた。 私が腹違いの妹のマダリンをいじめたという事実はない。  私が断罪され兵士に取り押さえられたときマダリンは、第一王子のワルデマー殿下に抱きしめられにやにやと笑っていた。 私は妹にはめられたのだ。 牢屋の中で絶望していた私の前に現れたのは、幼い頃私に使えていた執事見習いのレイだった。 「迎えに来ましたよ、メリセントお嬢様」 そう言って、彼はニッコリとほほ笑んだ ※他のサイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

処理中です...