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第三章 嵐の前の
中級ヒロインのフラグ潰し? 3
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貴族が魔力を測定する方法は、何通りかある。一番一般的には神殿で測る方法。二つ目は学園などで、試験の時に測る方法。魔術師試験の時に、王城で測る方法。
一部の高位貴族に限っては、家で普通に測ると言う方法もある。宰相一家に於いてはこれだった。理由は家で測る方が緊張しなくて済むから、と嘯いていたが、実際は不正に魔力量を上げていることを秘密にするためだ。
一国の宰相が清廉潔白などあり得ない。ただソレは国を守る為に必要なことなどではなく、ただただ保身の為だけだ。宰相一家にとってフレル公爵家ならびに、その娘シシーは目障りな存在だったが、踏み台にすれば良いと考えたのも事実。
宰相がジェスの平民との恋を知った上で何もしなかったのは、ジェスにその手が有効だと知り、平民との恋を応援し、シシーを退けてから傀儡にしようと企んだから。しかし、目論見は外れて、リカルドが現れた。
宰相は二人が別の人物だと知らない。シシーというよりその父のフレル公爵が、信頼するに値しないと、彼には知らされないことになったからだ。
前宰相候補を推していたのはフレル公爵だ。彼はこの国におけるフレル公爵家の立場を理解していた人の一人で、共に国を支える者として協力していけると信じていた。
宰相が明らかに別人の二人を同一人物だと誤認したのはまさに、自分が不正をして魔力を増やしていることによる。自分達と同じように不正を王家が行った、と考えて、今後ソレを盾に脅すことも視野に入れた。
少し考えれば、魔力量だけでなく、二人が別人であることはすぐに理解できるのだが、フレル公爵の目論見は当たり、彼は気がつかないまま。
「魔力量は一つの目安だが、それに気がつかないところが、やはり、それだけの人物だということなのだろう。」
公爵の言葉は的を射ている。この国において一番重要視されるのは魔力量ではない。魔力量があったとしても、何もしないなら宝の持ち腐れであり、魔力量が少なくても、何かを為すならそれこそが、優れている、と言えるからだ。
ただそれは比較的最初から恵まれている公爵家や、王族が言うのと、侯爵家が思うのとは意見が異なるのは、承知している。
彼らに魔力がない為に、成し得なかったことがあったのだと、推測する。
だから、陛下とは似た者同士で、うまくいったのだろう。
だが、リカルドが代替わりする時に宰相がアレでは不安が残る。宰相は息子に跡を継がせたいようだが、それは断固阻止せねばなるまい。
それに、宰相の息子は、マミが見た未来予知の場面でも登場機会があるのだが、その立ち回りは最悪で、だからこそ、リカルドとしては、彼らを今潰し切りたいのである。
「彼についてはお会いしたことはないですし、起こってもいない未来のことで、罰するのは些か気がひけるのですが。」
シシーは、優しい。
だが、リカルドは優しくない。独裁者と言われようと、彼は許さないと決めている。
彼は未来予知の中で、シシーを心も体も傷つける存在として君臨する。
リカルドが一番罰したいのは未来予知の中の自分だ。リカルドが一番憎い。だが、それができないので、贖罪の想いも込めて、全身全霊でシシーを愛す。
自分の行動は自分がどうにかできるが、他人の行動をどうにかするのは、不可能だ。
だから、彼を取り巻く全てを無にすることで、シシーを守りたいと、そう思っていた。
一部の高位貴族に限っては、家で普通に測ると言う方法もある。宰相一家に於いてはこれだった。理由は家で測る方が緊張しなくて済むから、と嘯いていたが、実際は不正に魔力量を上げていることを秘密にするためだ。
一国の宰相が清廉潔白などあり得ない。ただソレは国を守る為に必要なことなどではなく、ただただ保身の為だけだ。宰相一家にとってフレル公爵家ならびに、その娘シシーは目障りな存在だったが、踏み台にすれば良いと考えたのも事実。
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宰相は二人が別の人物だと知らない。シシーというよりその父のフレル公爵が、信頼するに値しないと、彼には知らされないことになったからだ。
前宰相候補を推していたのはフレル公爵だ。彼はこの国におけるフレル公爵家の立場を理解していた人の一人で、共に国を支える者として協力していけると信じていた。
宰相が明らかに別人の二人を同一人物だと誤認したのはまさに、自分が不正をして魔力を増やしていることによる。自分達と同じように不正を王家が行った、と考えて、今後ソレを盾に脅すことも視野に入れた。
少し考えれば、魔力量だけでなく、二人が別人であることはすぐに理解できるのだが、フレル公爵の目論見は当たり、彼は気がつかないまま。
「魔力量は一つの目安だが、それに気がつかないところが、やはり、それだけの人物だということなのだろう。」
公爵の言葉は的を射ている。この国において一番重要視されるのは魔力量ではない。魔力量があったとしても、何もしないなら宝の持ち腐れであり、魔力量が少なくても、何かを為すならそれこそが、優れている、と言えるからだ。
ただそれは比較的最初から恵まれている公爵家や、王族が言うのと、侯爵家が思うのとは意見が異なるのは、承知している。
彼らに魔力がない為に、成し得なかったことがあったのだと、推測する。
だから、陛下とは似た者同士で、うまくいったのだろう。
だが、リカルドが代替わりする時に宰相がアレでは不安が残る。宰相は息子に跡を継がせたいようだが、それは断固阻止せねばなるまい。
それに、宰相の息子は、マミが見た未来予知の場面でも登場機会があるのだが、その立ち回りは最悪で、だからこそ、リカルドとしては、彼らを今潰し切りたいのである。
「彼についてはお会いしたことはないですし、起こってもいない未来のことで、罰するのは些か気がひけるのですが。」
シシーは、優しい。
だが、リカルドは優しくない。独裁者と言われようと、彼は許さないと決めている。
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リカルドが一番罰したいのは未来予知の中の自分だ。リカルドが一番憎い。だが、それができないので、贖罪の想いも込めて、全身全霊でシシーを愛す。
自分の行動は自分がどうにかできるが、他人の行動をどうにかするのは、不可能だ。
だから、彼を取り巻く全てを無にすることで、シシーを守りたいと、そう思っていた。
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