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クズVSフェミニン
しおりを挟む俺は生まれも育ちも東京世田谷……
(トラさんみたくなっちゃった!)
兎に角東京在住だけど、普段立ち入らないビジネス街は、未知の領域だった
。しかもこの一帯でも一番大きなビルを前に立ちつくしていた。
「ここだよね?野坂パパの会社……」
「野坂」はグループ企業で、金融業から不動産、鉄鋼、etc……とにかく色々やっていて、このビルは殆ど関連企業で占められているらしい。
どうしよう……
ビル内に入ると大きなホールになっていて、その先に自動改札みたいな機械が並んでいる。
『どうやったら入り込めるんだろう?』
「なにかお探しですか?」
「ひゃぁう!!」
突然キレイなお姉さんに話し掛けられ、心臓が口から飛び出しそうになった。
「あ、あの!俺、野坂パパに会いにきたの!!」
女性の顔が歪んだ。
「野坂パパ……?会長ですか?」
あ、これ誤解してる……愛人たくさんいそうな人だし……
「お、あ僕は野坂さんの息子の大樹くんの同級生の滝川ヒロシといいます」
「の」がいっぱい入って他人感半端ない……
「アポはございますか?」
「僕はアホではありません!!」
お姉さんは、残念な子を見るような目で「確認いたしますのでお待ちください」と言った。
そして「会長がお会いになるそうです。迎えの者がまいります」と言われ、その場で待っていると、ゲートの向こうから大きな人影が近づいて来るのが見えた。
「ヒロシ君!逢いに来てくれたのかい?」
野坂パパ!?本人来ちゃったよ!
「こんにちは!!あっ、これつまらない物ですが……」
俺が、買ってきた手土産を渡すと「えっ?わざわざ買ってきたの?偉いねー、良くできました!」と誉められる。誉められると嬉しいので顔がにやける。
受付のお姉さん達は、なぜか温かい目で見守りはじめた。
そのまま最上階の会長室に連れて行かれ、お茶やらお茶菓子が用意される。
「一人でよく来たね」
「俺どうしても話聞きたくて。野坂君のパパだし、本当にそんなに悪い人なのかなぁ~って思って……」
俺が、そう言うと野坂パパはビックリした顔をしながら「悪い人だよ?」っと言った。
「大樹は君にそんなに優しくしているの?」
「野坂君は優しいです。俺にだけ好きって言ってくれるし、仕事も頑張ってます。野坂パパは俺のお父さんのこと好きじゃなかったの?」
俺は疑問に思っていた。可愛いだけで三年も側に置くだろうか?
野坂パパはしばらく真面目な顔で考え込んでいたが、俺と目が合うとゆっくり口を開いた。
「俺は仕事が好きなんだ。大樹と違って、子供の頃からこの会社を守るのが自分の使命だと思っていたよ。結婚は
家同士の結びつきだし、妻もそれを理解してくれる相手だ」
野坂パパは、少し寂しそうに見えた。
「お父さんのこと本気で好きだったの?」
野坂パパは困った顔で、俺を見つめた。
「本当に、昔のクリスにそっくりだな……アホなのか鋭いのか今でも謎なんだ」
ん?今、遠回しに俺のことアホって言った?
「せめてもの責任だと思って、クリスに手は出さなかったんだ。正直、君を息子だと紹介されて腸煮えくり返ったよ『相手は何処のビッチだ!?』ってな」
「俺お父さんのお姉ちゃんの子供みたいです。事故で死んじゃったみたい」
「そうか?ゴメンねヒロシ君。知らなかったのに、大人げなく意地悪言った」
「うん。後でお父さんに謝って!」
「クリスと結ばれることは無かったが、俺は今までの人生を後悔していない。君が居てクリスが幸せだったのなら本当によかったと思っているよ。だからあいつには、最低の男のままでいいと思っている」
野坂パパは、かっこいい顔で笑った。
俺は、少しだけ野坂パパが好きになった。だけど、言いたいことはまだあるのだ!
「野坂君は、毎日コンビニ弁当食べてたんだよ!」
「え?あいつが勝手に、雇った家政婦クビにしちゃうんだよ」
「そうなの!?でも中学生に一人暮らしは可哀想!!」
「今は幸せにしているんだろ?」
「……うん。たぶん」
俺は、自分が幸せだから野坂君もそうだといいなぁ?と思った。
「息子を頼むよ……仕事のことは追々考えるとして、とりあえず成人するまでマトモなもん食わしてやってくれ」
やっぱり、野坂パパはそんなに悪い人じゃなかった。野坂君の嫁になったら義理のお義父さんになるのかな?
俺が「また遊びに来るね」と言うと、「ここは仕事するところだぞ」と言って笑い「そのうち、大樹も交えて飯でも食おう」と言ってもらうことが出来た。
あれ?俺、自ら外堀埋めてない?
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