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第二章
49 ニーノちゃん救出
しおりを挟むドラゴンは意外と気まぐれだ。
レパーダもフラフラ館のライヒアに会いに行ったりするし、他のドラゴン達も気が向かないと俺の呼び掛けに答えない。
ニーノちゃんは、その中でも特に気まぐれで、レパーダの呼び掛けに答えないこともある。
だけど、肝心な時は必ず返事がきていたようだ……
「会話が出来ないってどういう状況なんだろう?捕らえておくにも、あの巨体を隠せるところはそんなにないよね?」
(そうね……魔術で封印でもされているのかしら?)
俺たちはまず、ニーノを探す事にした。ニーノなら離れていてもエリザベートの声が聴こえるから、ピンポイントで救出に向かえる筈だ。
空からニーノちゃんの寝床や、黒竜の寝床を探したけど、見つからない……
ニーノの巨体を運ぶ事は無理だから、自ら移動した先にいるとしか思えないのだけど……
(もしかすると、あそこかもしれないわ……)
そう言ってレパーダが向かったのは、切り立ったの崖の中腹にある洞窟だった。
中は白くてキラキラした岩に囲まれていて、それ自体が発光しているので明るい。
「ふわぁ、きれいです―」
ピカピカ好きのサミアンが目を輝かせて辺りを見回す。
想像以上に奥行きがあるようだ……
(わたしは大きすぎて、中に入れないわ)
確かに奥に行くには、レパーダじゃ大きすぎる。
「ここはどういう所なの?不思議な力を感じるね?」
(ここはセレスティオが生前暮らしていたところよ。ニーノはお兄ちゃんっ子だったから、時々立ち寄っていたようよ)
「お兄ちゃん? 伝説のセレスティオもレパーダの子供なの?」
(小型のドラゴンは番で繁殖するように作ったけど、中型のドラゴンは全て私が産んだのよ……)
小型のドラゴンも作ったの?
レパーダって本当に、全てのドラゴンの始祖なんだ!
なんで、俺なんかに使役してくれたんだろう?
「クリス、時間がない。早く確認しよう」
「え? あっ、そうだね」
奥まで行くと、すぐにニーノちゃんは見つかった。
ニーノちゃんの周りには、魔法陣のような不思議な模様が書かれていて、四隅に水晶のような透ける石が置かれていた。
「なんだこれ?」
「クリス触るな!封印だ」
「えっ!?」
俺は伸ばした手を、慌てて引っ込めた。
まだ触ってないよって両手を広げてヒラヒラさせると、ガインが呆れ顔でホッと息をついた。
(子供より落ち着き無くてごめんね……)
頭の中でレパーダに状況を細かく説明すると、石を同時に外せば、悪影響は無いということだった。
(四ヶ所同時じゃないとダメなの。失敗すると、ニーノも黒竜にされてしまうわ!)
「えー!そんなっ!じゃあセレスティオは、人間に殺されてしまったの?」
(ええ、黄金竜を思うがまま操ろうとした一部の人間に……)
レパーダにとって魔術師は、可愛い子供を奪った敵なんだろう……
それにしても酷すぎる。この国に富をもたらしたセレスティオにそんな仕打ちをするなんて……
ニーノちゃんまで黒竜にされたら大変だ。
幸い丁度四人いる。俺達の手で必ず助けてあげなきゃ!
俺達は何度も回収の動作を確認してから、ガインと俺が対角線上になって、子供達を見守れるような形で四隅の石の前に移動した。
「みんな、準備はいい?」
「ああ!」
「はいっ!」
「ガウ!」
「じゃあやるよ! せーの!」
石を掴んだ途端、地面に書かれた模様が、シュウッと蒸発するように消えていく……
「成功……したのかな?」
目視できるサミアンとノインと顔を見合わせるが、ニーノちゃんの様子に変化はない。
首を捻っていると、頭の中にレパーダの声が響いた。
(ニーノ、いつまで寝ているの?エリザベートが大変よ!)
レパーダの呼び掛けに、ニーノの赤い瞳がゆっくり開かれる……
(わたし、なんで寝ちゃったのかしら? あら? クリスじゃない、どうしたの?)
「どうしたのじゃないよ!ニーノちゃんここに封印されていたんだよ?」
(封印……そういえば、ここに黒竜と魔術師が来たんだったわ!クリスが封印を解いてくれたのね?)
「うん、俺達四人でね」
敢えて声に出してニーノに家族を紹介すると、会話の内容を全て聞いていたサミアンが、ニーノに直接話し掛けた。
「こんにちは、ニーノさん。僕サミアンです」
(あら? 可愛い神子ね……誰の神子かしら?)
「誰?」
(ドラゴンは同時に複数人に使役する事は無いわ、わたしはエリザベートのドラゴン……クリスのドラゴンはお母様よ)
「僕のドラゴンはセレスティオです」
サミアンはそう言いながらニーノに背中を向けて、セレスティオ入りのリュックを見せた。
(セレスティオ? あら?まだ卵なのね…… なのに神子に霊力を送れるなんて本当にセレスティオお兄様みたいだわ! サミアンがお名前つけたの?)
「はいっ!黄金竜と同じお名前です!」
(ふふっ、いいお名前ね!)
「ふへへっ!」
サミアンが褒められて、ふにゃっと笑う……
やっぱりとんでもない卵みたいだけど、それを産んだレパーダが使役していることを思えば今更だよな?
「それより大変だよ!魔術師とグリードが、王と王妃をどこかに連れて行っちゃったんだ!王宮には『新王』とか祭り上げられて、ちゃっかりルイが玉座に座っているんだよ!」
(最悪ね……)
やっぱり、ニーノちゃんでもそう思うんだ…… 一応エリザベートの子供なのに。
「エリザベート様の居場所が分からないから救出に行けないんだ。ニーノちゃんなら分かるかと思って……」
(ええ、任せて! 外に出て呼び掛けてみるわ!)
俺達は、レパーダに乗ってニーノちゃんの後を追った。
「ねぇ、レパーダ。黒竜はどうやったら倒せるの?……それ以前に倒しちゃっていいの? 元は黄金竜なんでしょ?」
(どうしたら倒せるかは分からないわ…… でも、あの体には魂が入っていない、ただのハリボテの様な物なの。人を襲うのはドラゴンではないわ。ドラゴンは平和な世の中を見守る為に存在するのよ……)
そう言ったレパーダからは哀しみの感情が流れ込んできた。
自分の子供の体を借りて犯罪行為されるようなものだもんな。
それに、本当はその体だって傷付けたくはないよな。
ガインにも今の話を伝えると、優しい顔で大きく頷いた。
「だが、まずは王と王妃の救出だ。黒竜とはいずれ相見えなければならないが、なにより王と王妃を安全な場所に移さなければ、この国は終わってしまう」
「うん……」
王都近くの丘に着陸したニーノを追って、レパーダもゆっくり高度を下げる。
「ニーノちゃん、居場所分かった?」
(ええ、エリザベートは王宮の裏手にある、今は使われていない古い塔に幽閉されているわ。見張りの兵も大勢配置されているようね)
「何人くらいだ?五百人程度なら俺一人で十分だが……」
おいおい、五百人って簡単に言うなよ…… でもガインなら虚勢を張っているわけじゃなさそうだ。
「よし、じゃあここからは機動力のあるニーノで行こう。……子供達はどうしよう?」
「うむ、黒竜の動きも読めないし、できるだけ側に置きたいが……」
「僕達お母様とニーノさんの背中で待ってます!」
「ガウガウ!」
「それでいい?ニーノちゃん」
(勿論よ。宜しくね)
(わたしも目立たない様に雲の上で待機するわ)
レパーダにもそう言われ、俺達は家族四人で王宮に向かった……
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