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第一章

22 なかよし

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目の前のイチモツが立派過ぎて、ガン見はヤバいと思いながらも、そこから目が離せない。
何それっ!? 凶器!?

「なんだ? 欲しいのか?」

声を掛けられ、金縛りが解けたみたいにグランドルの顔に目をやると、銀色に所々黒が混じったような髪色の、ガインよりも更に男くさいイケメンが、金色の瞳でこちらを見下ろしていた。

今「欲しい」って言った? 何を?
何の事か分からないけど、タダより高いものは無いから断っておこう。

「結構です……間に合ってます」

「番がいるのか? 惜しいな……、いや、番を殺してやろう。見たところ狼族ではなさそうだ」

奇跡的に会話はキャッチボール出来たみたいだけど、内容が物騒過ぎる!
金色の瞳に狂暴な光が宿る。冗談で言っている訳ではなさそうだ。
それに体が動かない…… 威嚇を使ってやがる!!

グランドルが近付いてきて、かがんでいた俺に視線を合わせる。
「黒い瞳か? 珍しいな、なんと云う美しさだ……」

「ひっ!」

グランドルから離れたいのに、威嚇で思うように体が動かず、その場に尻餅を付き、コロンと後ろに転げそうになる……
「おっと!」
頭を打ち付ける前に、背中をグランドルの腕に支えられるが、いやいや、マズイでしょう!この距離感!

「これはこれは、絹の如き肌触りだ……」
グランドルの大きな手が、腹から胸を撫で、感触を確かめる。

「ここも、生娘の様な色をしているな」
そう言いながら、ぶっとい親指で、くにっと、ちくびを潰される。

「ふっ」
突然の刺激に、体がビクッっと震えた。

「感度も良さそうだ……これは、なんとしても手に入れたい」

「やだ……やめろ、威嚇を解いてくれ」

フッっと笑ったグランドルは、顔を近づけ、俺の唇を奪おうとした。
俺は動かない体で、必死に首を捻り回避する。
(やだっ!ガイン以外とキスしたくないっ!!)

「ガァァウ!!」

咆哮と共に現れた、大きな黒い影が体当たりし、逞しいグランドルの体を弾き飛ばした。

「ウゥゥゥウ!」

「ガインッ!!」

ガインの後ろから、小さなサミアンも獣型のまま駆け付ける。
(あぁ、何で来ちゃうの!? お風呂の床で滑ってるし!)

グランドルはその場に立ち上がり、頭を左右に振った。体の大きなグランドルでも、獣型のガインの体当たりの衝撃は大きかったようだ。

「ガイン?……そうか……お前の番か?」

「俺の番に何をした!?」
ガインの被毛が逆立ち、後ろに居る俺にも怒りが伝わってきた。

「俺に譲らぬか? これ程の美姫は我がハーレムにも居らぬ……」
グランドルは、ふてぶてしい笑みを浮かべ、頭を獣化させていく。

なんだ!この獣は!?
ライオンみたいな鬣があるけど、薄く縞模様が入っている……
それより、総長同士の直接対決なんて粗相どころの騒ぎじゃないよ!!
どうしようっ!

その時、俺の後ろから小さな白い影が飛び出し、グランドルの脛に噛みついた!

「サミアンッ!!」

固くて牙が刺さらないのか、何度もカプカプ噛みついている……
(駄目だよ!蹴り飛ばされちゃう!!)
俺の心配をよそに、グランドルは自分の足元に目をやると、必死に噛みつくサミアンを見て、威嚇を解いた。

「止めろ……くすぐったい」

グランドルが頭の獣化を解き、サミアンの首根っこを掴んで持ち上げる。プランプランと宙に浮いたサミアンが「キャンキャン」と吠えながら抵抗するが、グランドルはそのままガインに向けて、ニヤリと口角を上げた。

それが停戦の合図だったのか、ガインも獣化を解く……
えっ? 裸!? 
やだ! ガインったらお尻もカッコイイ!!
そうか服着たまま獣化すると破れちゃうから、こっちの服は背中に特殊な継ぎ目があるんだった……

「サミアンを返せ!」

そう言いながらガインが手を伸ばすと、ガインの掌にサミアンがチョンと置かれる。
二人の手が大きすぎて、サミアンが小さく見える……

ガインはサミアンを抱き、優しく一撫ですると、俺にサミアンを差し出した。
俺も立ち上がり、サミアンを胸に抱く……
「よく頑張ったね、サミアン……」
そう言いながら撫でてあげると、サミアンは俺の胸に顔を擦りながら、千切れそうな程しっぽを振った。

「ふんっ、興が削がれた。俺はもう出るところだ。先に部屋で待っているぞ、話はその後だ!」

俺たち三人を残し、グランドルは浴室を出て行った……
呆然と立ち尽くしていると、ガインが口を開いた。

「折角だ、少し温まって行こう……」

ガインは一人で浴槽に入っていく。
えっ? 一緒に入るの? 恥ずかしいよ!!

「おかあたま……」
そういやサミアンも雨に打たれて冷えているんだったな……
俺はサミアンを抱いたまま、ガインから二人分あけて腰を下ろした。

「あいつに何をされた?」
「えっ? 何にもされてないよ……まだ」
(危なかったけど……)

ガインは、顔を下に向けたまま複雑な表情で、ポツリと呟いた。
「キス……していた……」

「してないよっ!! ちゃんと避けたよっ!!」

ガインは下を向いたまま首をひねり、ちょっと拗ねたような顔で俺を見つめた。
どうしよう、いつもクールなガインが可愛い……
ギャップ萌えってヤツか!?

俺は二人分の隙間を詰めて、ガインにチュッとキスをした……
自分からしたくせに、恥ずかしくなってうつむくと、今度は、ガインの方から、チュッ、チュッと二回、キスを返された……
―――ガインのキスは何でこんなにドキドキするんだろう?
サミアンの前なのに、変な気分になっちゃうよ……

いい雰囲気になったところで、腕の中のサミアンが、急激に重みを増した。
俺とガインの間で人化したサミアンは、キョトンと二人を見回すと、嬉しそうにフニャッと笑った。

「おとうたまとおかあたまは、なかよちでちゅね!」

「ふっ、はははっ」
「ふふっ、あははっ」

大活躍してくれたサミアンを誉めながら、しばらく三人でお湯に浸かった。

まだグランドルとの話合いは残っているけど、少しの間、三人で幸せな時間を過ごした。


 
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