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第一章

11 舌打ち嫌い※

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「クリス様ー!!どうなさったのですか?」

「体……熱い……、サミアンを…お願い」

俺は身体の異変に気が付いた。どこにも触ってないのに、下腹部がザワザワする。
―――子供には見せたくない。
「キューン」とサミアンが鳴く声が遠ざかって行き、ほっとしつつもその不安そうな声に、申し訳なさを感じる。
(ごめんね……サミアン、ちょっと待っててね……)

ノイがサミアンを抱いて部屋を出たのだと分かり、扉の鍵を締める。
こんな姿は誰にも見せたくない!

「はぁ…はぁ……」
俺はベッドまで移動する事もままならず、扉の前で崩れ落ちた。
体に纏わりつく衣服が擦れる刺激すら耐えられなくて、むしり取るように脱衣すると、既に蜜をこぼし始めたペニスを握り、上下にしごいた。

まるでローションでも垂らしたかの様にグチュグチュ音をさせながら、あっという間に登りつめる………

「あぁぁ、はぁ……っ」

(なんで?……なんで収まらないの?)

俺は泣きながらペニスを擦り続けた。
「うっ……も……やだ、苦しい……」

扉の外に人の気配がしたと思ったら「ドンドン」とドアを強く叩く音と共に、ガインの声が聞こえてきた。
「クリス! ここを開けろ!!」

「あっ……、あっ、や、あっち行って」

声が漏れるのも恥ずかしい……
何で来るんだよ!……嫌だ……怖い……

しかし体はますます熱くなった。ペニスは、もう芯を持つことも儘ならないのに、後孔が収縮を繰り返し、奥に刺激を欲しがる。

耐えきれず後ろから中指を当てると、つるっと指を飲み込んでしまった。
(中……ビチョビチョ……)
ペニスから流れたものではなく、内側から潤っているのだと分かり、ショックを受ける。
(これが……オメガの身体ってやつか……)
強い刺激がほしくなり、二本の指を挿し込んで掻き回すと、後孔がどんどん柔らかくなるのが分かる。

「はぁ……あぁっ……あっ」
気持ちいい……
気持ちいいのに……全然足りない……
「もっと……あぁ、もっとぉ……」

ガインのペニスを受け入れた時の、壮絶な快感を思い出し、無意識でその名を呼び続ける……
「ガイン……………ガインッ……」

「ここを開けろ!クリス!! 薬を持ってきた!このままでは数日苦しむことになる!」

ガインの声が聞こえる……
(薬?……数日?……こんなの数日続いたら死んじゃうよ……でも……)

「やぁ……狼……怖い……」

「わかった!獣化しないと誓う!!」

「赤ちゃん……産みたくない……」

「チッ、わかった!手は出さない!」


「―――舌打ち……嫌い……」


「うぅっ、分かった、もうしない…… 開けてくれクリス…… そばにいるだけでいいんだ…… 楽になる」

(楽に……なる?)

俺は、扉の鍵に手を伸ばした。
カチャンと音がしたと同時に扉が開かれ、ガインが入って来る。

「あぁ……ガイン……ガイン」

俺は何故か、ガインに必死でしがみついた。
ガインは俺を抱き上げ、ベッドに運ぶと、俺に覆い被さり、頬に口付けた。

甘い、甘い匂いが漂う…………

「あぁ……嘘つき……」
「くっ……」

ガインが、注射器みたいな筒状の物を肩に押し付けると、チクッと刺激がして薬液が皮下に入り込むのが分かった。

「即効性の抑制剤だ。既に発情しているので効果は薄いが、楽になる筈だ」

でもこの匂い…………余計身体が熱くなる………なのにさっきより苦しくない?

ガインに触れた途端、どうにもならない焦燥感が消え、ぬるま湯に浸かったような大きな安心感に包まれた……

「俺も、薬を打っている……何とか耐えられる筈だ………」

ガインは俺の横に身体をずらし、俺の頭を分厚い胸板に抱え込んだ。
「何もしない……傍に居させてくれ」

「はぁ……はぁ……ガイン……」

俺は、しばらくガインの身体に自分の身体を擦り付けながら、イキっぱなしの様な状態になった。
ガインのペニスも、ズボンを押し上げ固くなっているのが分かる。
めちゃめちゃ我慢してくれてるみたいだ……
欲しくて、欲しくて仕方ないのだが、薬が効いてきたのか、自分から上に乗ることは避けられた。

「大丈夫だ……じき落ち着く」

ガインが俺の髪を撫でる……サミアンにするように、優しく……優しく………

暖かい……身体は苦しい筈なのに、傍に居るだけで気持ちが落ち着いて楽になった。これが『番』の力なのかな?
俺は安堵感の中、意識を手放した……




なんだろう……このモフモフ……
サミアン? いつも通りの朝だな……
いや、ちょっと違うな?
全身が暖かいモフモフに包まれている……
(何これ!? すごく気持ちいい!)
思わず笑みがこぼれる。
「ふふっ、フワフワだぁ」
俺が目を閉じたまま、手で感触を確かめると、頭の上から声がした。

「起きたのか……?」

「ヒッ!」

「動かないから、そのまま聞いてくれ……」

目を開くと、目の前に真っ黒な被毛があった。
(ガイン?……これ、ガインだよな?)

「獣化しないと誓ったのにすまない……起きたら獣化していた。本能を抑えすぎた反動で、元に戻れない……」

「え?」

「この部屋は、掃除させる。準備が出来たらテラスに来い。サミアンを呼んでおこう……」

ベッドの上に四つ足で立ち上がったガインは、一瞬で扉の前に移動した。
俺が怖れないよう、距離をとったようだ。
だが……

「すまないが……扉を開けてくれ……」

まあ……そうなるよね……

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