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邂逅
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黒達が巻き起こした騒動より数時間後。
「・・・・此処は?」
煌々とした光源の下、ぼやけた視界は徐々に周囲の光景を映し、何処か社長室を思わせる室内の作りと、座らされている高級そうな椅子に疑問の表情を浮かべる。
(・・・・どういう状況なんだろ? あの後、悪い人達に襲われて・・・・・・・どうしたんだっけ?)
「ん~~~~」
そうして今までの流れを思い出そうと思考を巡らせていると・・・・。
「どうしたんすか? 何かお悩みっすか?」
「ん? うん・・・・目が覚めたら訳も分からない場所でね。唯一の肉親なんだけど父さんも居なくて・・・・それでね、怖くなって逃げたんだけど大人のおじさんは悪い人だったらしくて、燃料にするからって殴られて・・・・死んだ様な気がしたんだよね・・・・」
「なんて酷い話なんすか、可哀そうっす!」
「ん~~~でも、父さんと動物達以外に友達も居なかったし、学校も通信教育だったから・・・・一般常識を知らないのも事実だし。もしかしたらあれが常識だったのかなぁ・・・・?」
「そんな風に思うのは良くないっす! 僕も常識なんてのは良くわからないっすけど、殴られたら殴るのが常識っすよ!」
「・・・本当かな? なんか凄い過激だなぁ━━━って誰?」
「っにゅ?」
自然と会話していた為、気付くのが遅くなったが、声のする方向へと視線を向けるとそこには灰色の髪をした兎の様な耳を備えた女性が映る。
「・・・・・どなたで・・・しょう?」
「僕っすか!? おぉぉ、初めての会話に興奮を隠せないっす! や、やっぱり間近に見るジン様かっけえっす! ど、ドキドキが止まらんっす! ど、どうしよう・・・・な、なんて言えばいいんすか・・・・け、結婚を前提にお付き合いを? こ、子供は何人欲しいっす? 毎日カリカリを分け合おうっす? な、何が良いんすか? ぬ、ぬぉおおお・・・こんな事なら考えておくべきだったっす! ふんぎゅあぁぁあああ。もう無理っす、落ち着け、落ち着け、落ち着くんすよ~~~」
顔を合わせるなり雪は慌てて顔を背け、小声でぶつぶつと呟き頭を抱えて室内を走り回る。それは正しく奇行であったが、美貌というものはそれ自体が説得力をもつのか、駆けまわる様でさえ何かの劇のようであり、何処となく幻想的。無邪気な子供の様に動き回る様子にはふさわしくない体躯が、躍動する姿もあいまって、ジンも見ないようにと目をそらす。
「や、やっぱり・・・む、無視されたっす! に、人間の姿はやっぱり駄目なんす! あの頃だったらきっとこうやって━━━」
雪は涙を浮かべながら、何を思ったのかジンの手を取ると、自身の胸元へと近づけようとし・・・・。
「わ、わわわわわぁあああ!!」
ジンは訳が分からず暴れては、拘束された手をばたつかせ、必死の思いで振りほどき、雪はといえば・・・・。
「・・・・・やっぱりっす。撫でてくれないっす・・・・」
と、落ち込んだ様子で部屋の隅に身を寄せた。
そうした体の大きさとは異なった何処となく幼子を思わせる仕草に、ジンも過去を思い出し、失礼だと認識しつつも寂しそうな背中を見るとどうしても放置はできず、気付いた頃には自然と灰色の髪を撫でていた。
「━━っほぁ?」
「あぁ! ご・・・ごめんなさい」
子供が大人を慰める様な行動にジンもやってしまったと飛びのくが、灰色の美女にしてみれば混乱した状況を打破する一手。
気持ち悪いと捨てられたかと思っていた感情は爆発し、嬉しさのあまり両手を肉食獣の顎の如く開くと、ジンを両手いっぱい抱き留める。
「やったっす~~~」
「っひぃ!?」
予想だにしない行動にジンは慌てるが、そもそもの力が違うのか、ジンの力では微動だにせず、運の悪い事に身長差も相まって、弾力のある物に挟まれ窒息寸前。雪にとっては抱擁であってもジンにとってはヘッドロックそのもの。そうしてだんだんと薄れていく意識の中、嗅いだことのあるような何処か懐かしい匂いに包まれ・・・・。
「うっ・・・・・」
絞められた動物の最後の吐息を漏らし、意識を失った。
「・・・・此処は?」
煌々とした光源の下、ぼやけた視界は徐々に周囲の光景を映し、何処か社長室を思わせる室内の作りと、座らされている高級そうな椅子に疑問の表情を浮かべる。
(・・・・どういう状況なんだろ? あの後、悪い人達に襲われて・・・・・・・どうしたんだっけ?)
「ん~~~~」
そうして今までの流れを思い出そうと思考を巡らせていると・・・・。
「どうしたんすか? 何かお悩みっすか?」
「ん? うん・・・・目が覚めたら訳も分からない場所でね。唯一の肉親なんだけど父さんも居なくて・・・・それでね、怖くなって逃げたんだけど大人のおじさんは悪い人だったらしくて、燃料にするからって殴られて・・・・死んだ様な気がしたんだよね・・・・」
「なんて酷い話なんすか、可哀そうっす!」
「ん~~~でも、父さんと動物達以外に友達も居なかったし、学校も通信教育だったから・・・・一般常識を知らないのも事実だし。もしかしたらあれが常識だったのかなぁ・・・・?」
「そんな風に思うのは良くないっす! 僕も常識なんてのは良くわからないっすけど、殴られたら殴るのが常識っすよ!」
「・・・本当かな? なんか凄い過激だなぁ━━━って誰?」
「っにゅ?」
自然と会話していた為、気付くのが遅くなったが、声のする方向へと視線を向けるとそこには灰色の髪をした兎の様な耳を備えた女性が映る。
「・・・・・どなたで・・・しょう?」
「僕っすか!? おぉぉ、初めての会話に興奮を隠せないっす! や、やっぱり間近に見るジン様かっけえっす! ど、ドキドキが止まらんっす! ど、どうしよう・・・・な、なんて言えばいいんすか・・・・け、結婚を前提にお付き合いを? こ、子供は何人欲しいっす? 毎日カリカリを分け合おうっす? な、何が良いんすか? ぬ、ぬぉおおお・・・こんな事なら考えておくべきだったっす! ふんぎゅあぁぁあああ。もう無理っす、落ち着け、落ち着け、落ち着くんすよ~~~」
顔を合わせるなり雪は慌てて顔を背け、小声でぶつぶつと呟き頭を抱えて室内を走り回る。それは正しく奇行であったが、美貌というものはそれ自体が説得力をもつのか、駆けまわる様でさえ何かの劇のようであり、何処となく幻想的。無邪気な子供の様に動き回る様子にはふさわしくない体躯が、躍動する姿もあいまって、ジンも見ないようにと目をそらす。
「や、やっぱり・・・む、無視されたっす! に、人間の姿はやっぱり駄目なんす! あの頃だったらきっとこうやって━━━」
雪は涙を浮かべながら、何を思ったのかジンの手を取ると、自身の胸元へと近づけようとし・・・・。
「わ、わわわわわぁあああ!!」
ジンは訳が分からず暴れては、拘束された手をばたつかせ、必死の思いで振りほどき、雪はといえば・・・・。
「・・・・・やっぱりっす。撫でてくれないっす・・・・」
と、落ち込んだ様子で部屋の隅に身を寄せた。
そうした体の大きさとは異なった何処となく幼子を思わせる仕草に、ジンも過去を思い出し、失礼だと認識しつつも寂しそうな背中を見るとどうしても放置はできず、気付いた頃には自然と灰色の髪を撫でていた。
「━━っほぁ?」
「あぁ! ご・・・ごめんなさい」
子供が大人を慰める様な行動にジンもやってしまったと飛びのくが、灰色の美女にしてみれば混乱した状況を打破する一手。
気持ち悪いと捨てられたかと思っていた感情は爆発し、嬉しさのあまり両手を肉食獣の顎の如く開くと、ジンを両手いっぱい抱き留める。
「やったっす~~~」
「っひぃ!?」
予想だにしない行動にジンは慌てるが、そもそもの力が違うのか、ジンの力では微動だにせず、運の悪い事に身長差も相まって、弾力のある物に挟まれ窒息寸前。雪にとっては抱擁であってもジンにとってはヘッドロックそのもの。そうしてだんだんと薄れていく意識の中、嗅いだことのあるような何処か懐かしい匂いに包まれ・・・・。
「うっ・・・・・」
絞められた動物の最後の吐息を漏らし、意識を失った。
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