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106.ダンジョン調査【一回目】
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「おぉ……これがダンジョン……!」
岩山の途中にポッカリと空いた穴に入ると、ヒヤリとした空気が肌を撫でる。
空気の流れ自体は外から中に向かっているようだ。
『うむ、やはり周辺の魔素を内部に取り入れているようだな。ここは下へと潜る造りであるから、最下層にいけばさぞかし強い魔物がいるであろう! だがまぁ、我も今回は調査である事はわかっておる、早々に調査を終わらせて自由に探索しようぞ!』
どう見てもはしゃいでる犬にしか見えないアーサーを先頭に、枝分かれした道を順番に進んで地図を作製していく。
途中で森にも出る弱い魔物が数種類出たので、地図に出た魔物を書き記す。
「なんか……森だと弱い魔物でも向かって来るのに、ダンジョンだと逃げちゃうんだね」
地図に書き込んでいる魔物達は、私達の姿を見ると逃げ出すのだ。
『ダンジョン生まれだからな。ダンジョンの餌を求めているのに、明らかに自分より強い者に向かっていっても怪我すらさせられないのであれば無駄というものだ。ダンジョンとしても次の魔物を生み出すのに一定の時間が必要になるゆえ、強者を避けて後から来る弱者を狙うのが当然であろう』
ダンジョンは生き物の扱いらしく、ダンジョンに入った生き物が持っている魔素を吸収するために魔物を生み出したり、罠や宝箱を生み出すんだとか。
この世界では原子ですら魔素からできているので、ダンジョン内で死ぬと魔素へと分解されて、どこかにあるダンジョンコアへと吸収されるらしい。
「へぇ~、ダンジョンって節約するんだね」
「ンン゛ッ、……サキ、節約という言い方はちょっと……」
噴き出しそうになったのを咳払いで誤魔化すマティス。
何気に双子と同じで面白い事は好きだもんね。
三時間ほど歩き回って、壁に寄りかかるとスイッチが入って向かいから矢が飛んでくる罠が二か所、宝箱の手前に落とし穴が一か所見つかった。
最初に私が引っかかった罠は、歩き疲れてもたれかかりやすそうな壁に寄りかかった瞬間に矢が飛んできて、マティスがその矢を掴みとってくれたのだ。
「これで一階層はひと通り全部見たかな? それにしてもマティスはよく罠の場所がわかるねぇ」
「こればかりは経験と勘だな。元々獣人の方が勘が鋭いと言われているから、近くにダンジョンある町には獣人も多いらしい。もしからしたらこれからはシパンの町にも獣人が増えるかもしれないな。実際すでに増えているだろう?」
「言われてみれば少しずつ獣人の冒険者が増えてるよね。前からそれなりに獣人がいる町だとは思ってたけど、ダンジョンの噂が流れてからはもっと増えたなぁって思う」
『そんな事より次の階層には行かぬのか!? まだ時間はあるだろう、少し覗いてどんな魔物がいるかくらいは確認しようではないか』
尻尾を勢いよく振りながら訴えるアーサーに負けて、作ったばかりの地図を見ながら下の階層へと続く階段を下りる。
二階層に入ると、なんだか空気が少し重くなった気がした。
『やはりな……、一階層より魔素が濃くなっておる。深層に行けば魔素の耐性が低い者はダンジョン酔いになるかもしれんな』
「ダンジョン酔い?」
「ダンジョン酔いというのは、いわゆる魔素酔いの事だ。町中ではまずありえないが、時々体質的に濃い魔素の中にいると乗り物に酔ったように気分が悪くなるらしい。魔法が使える者であれば大抵問題ないとはいえ、ダンジョンの階層が深いと魔法が使えたとしてもダンジョン酔いになるらしいからな。以前は八階層だったらしいが、今回も同じとは限らないからどれだけ時間がかかるか……」
「だけど低ランク冒険者が入れる階層の確認さえしちゃえば、今みたいにAランク以上が同伴しないと入れないなんて事はなくなるよね? とりあえず一階層は開放されるだろうから、そんなに急がなくても大丈夫でしょ」
「そうだな。とりあえず二階層の魔物がどんなものかだけ確認して、今回は撤収しよう。弟達もお腹を空かせているかもしれないからな」
「全部を見ようと思ったら結構時間がかかりそうだから、次はダンジョンの中で数日野営するつもりで来た方がいいかも」
「…………あの三人が拗ねそうだな」
『仕方あるまい! 足手まといになるような実力しかないのが悪いのだ! だが一階層程度であればあやつらでも問題なかろう、無理をせぬ程度に腕を磨けと言ってやるがよい。我らはどんどん進むぞ!』
はしゃぐアーサーにほっこりしながら、魔物調査を終わらせてダンジョンを出た。
岩山の途中にポッカリと空いた穴に入ると、ヒヤリとした空気が肌を撫でる。
空気の流れ自体は外から中に向かっているようだ。
『うむ、やはり周辺の魔素を内部に取り入れているようだな。ここは下へと潜る造りであるから、最下層にいけばさぞかし強い魔物がいるであろう! だがまぁ、我も今回は調査である事はわかっておる、早々に調査を終わらせて自由に探索しようぞ!』
どう見てもはしゃいでる犬にしか見えないアーサーを先頭に、枝分かれした道を順番に進んで地図を作製していく。
途中で森にも出る弱い魔物が数種類出たので、地図に出た魔物を書き記す。
「なんか……森だと弱い魔物でも向かって来るのに、ダンジョンだと逃げちゃうんだね」
地図に書き込んでいる魔物達は、私達の姿を見ると逃げ出すのだ。
『ダンジョン生まれだからな。ダンジョンの餌を求めているのに、明らかに自分より強い者に向かっていっても怪我すらさせられないのであれば無駄というものだ。ダンジョンとしても次の魔物を生み出すのに一定の時間が必要になるゆえ、強者を避けて後から来る弱者を狙うのが当然であろう』
ダンジョンは生き物の扱いらしく、ダンジョンに入った生き物が持っている魔素を吸収するために魔物を生み出したり、罠や宝箱を生み出すんだとか。
この世界では原子ですら魔素からできているので、ダンジョン内で死ぬと魔素へと分解されて、どこかにあるダンジョンコアへと吸収されるらしい。
「へぇ~、ダンジョンって節約するんだね」
「ンン゛ッ、……サキ、節約という言い方はちょっと……」
噴き出しそうになったのを咳払いで誤魔化すマティス。
何気に双子と同じで面白い事は好きだもんね。
三時間ほど歩き回って、壁に寄りかかるとスイッチが入って向かいから矢が飛んでくる罠が二か所、宝箱の手前に落とし穴が一か所見つかった。
最初に私が引っかかった罠は、歩き疲れてもたれかかりやすそうな壁に寄りかかった瞬間に矢が飛んできて、マティスがその矢を掴みとってくれたのだ。
「これで一階層はひと通り全部見たかな? それにしてもマティスはよく罠の場所がわかるねぇ」
「こればかりは経験と勘だな。元々獣人の方が勘が鋭いと言われているから、近くにダンジョンある町には獣人も多いらしい。もしからしたらこれからはシパンの町にも獣人が増えるかもしれないな。実際すでに増えているだろう?」
「言われてみれば少しずつ獣人の冒険者が増えてるよね。前からそれなりに獣人がいる町だとは思ってたけど、ダンジョンの噂が流れてからはもっと増えたなぁって思う」
『そんな事より次の階層には行かぬのか!? まだ時間はあるだろう、少し覗いてどんな魔物がいるかくらいは確認しようではないか』
尻尾を勢いよく振りながら訴えるアーサーに負けて、作ったばかりの地図を見ながら下の階層へと続く階段を下りる。
二階層に入ると、なんだか空気が少し重くなった気がした。
『やはりな……、一階層より魔素が濃くなっておる。深層に行けば魔素の耐性が低い者はダンジョン酔いになるかもしれんな』
「ダンジョン酔い?」
「ダンジョン酔いというのは、いわゆる魔素酔いの事だ。町中ではまずありえないが、時々体質的に濃い魔素の中にいると乗り物に酔ったように気分が悪くなるらしい。魔法が使える者であれば大抵問題ないとはいえ、ダンジョンの階層が深いと魔法が使えたとしてもダンジョン酔いになるらしいからな。以前は八階層だったらしいが、今回も同じとは限らないからどれだけ時間がかかるか……」
「だけど低ランク冒険者が入れる階層の確認さえしちゃえば、今みたいにAランク以上が同伴しないと入れないなんて事はなくなるよね? とりあえず一階層は開放されるだろうから、そんなに急がなくても大丈夫でしょ」
「そうだな。とりあえず二階層の魔物がどんなものかだけ確認して、今回は撤収しよう。弟達もお腹を空かせているかもしれないからな」
「全部を見ようと思ったら結構時間がかかりそうだから、次はダンジョンの中で数日野営するつもりで来た方がいいかも」
「…………あの三人が拗ねそうだな」
『仕方あるまい! 足手まといになるような実力しかないのが悪いのだ! だが一階層程度であればあやつらでも問題なかろう、無理をせぬ程度に腕を磨けと言ってやるがよい。我らはどんどん進むぞ!』
はしゃぐアーサーにほっこりしながら、魔物調査を終わらせてダンジョンを出た。
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