92 / 109
92.初め見る種族
しおりを挟む
「えーと、では二軒とも契約という事でよろしいですか?」
「ああ、よろしく頼む」
商業ギルドに戻って契約をするマティスの背後で、オーギュストとアルフォンスはヘッドバンキングさながら激しく頷いている。
今日見た物件は借りても買い取ってもいい物件だったので、本来借りる予定だった猩猩獣人親子の予算では足りなかった。
幸いマティスの、というかフェンリルの眷属として蓄えられていた資産に余裕があったので、私とアーサーが許可を出すという形で二軒買い取った。
つまり今後オーギュストはマティスに家賃を払うのだ。
オーギュストは友人関係でお金の貸し借りをしたくないからとこういう形になったけど、その場合家の中の本とか全部マティスの物って事になるのはわかっているんだろうか。
マティスの事だから好きにしていいって言いそうだけど。
『その内主が時間停止魔法を覚えたら、家にかけてやればいい。せっかく買ったのだ、その方がよかろう』
おお! 私ってば転移魔法だけじゃなくて、時間停止魔法使えるようになるのか!
興奮してソワソワしつつも私達以外にはアーサーの声は聞こえないので、頷くだけにしておいた。
契約後、オーギュストとアルフォンスはあっという間に家へと向かった。
私達は家具がないので商店街へ。
ある程度の生活用品は馬車で運べる分だけ持ってきていたけれど、ベッドやテーブル、ソファなどは買い足すしかない。
商店街の奥にある工房街へ向かうと、色んな音が聞こえてきた。
『ふむ、あの工房から只者ではない気配がしておるな。行ってみるといい、きっとよい物を作っておるぞ』
アーサーのおすすめに従って工房を覗くと、どうやら木工の工房のようだ。
どの工房も基本的に入り口は開放的というか、出入り口が全開になっているので、そのまま入って行く。
中にはいくつかの椅子が並んでいた。
シンプルなものから、ツタがレリーフのように彫られた芸術品のような物まで様々だ。
「わぁ……すごい。手触りもすごくなめらかで気持ちいい。試しに座ってもいいかな」
「どうぞ、座ってみなさい」
不意にかけられた声に振り向くと、そこには美形。
いやもう本当に美形としか表現できない人がいた。
少し偉そうな物言いだったけど、それすら気にならないくらいの美形だ。
「サキ、座らないの? すごく座り心地いいよ!」
リアムに言われて我に返る。
ダイニングに使えそうな椅子にそっと腰を下ろすと、これまでのただの固い椅子とは一線を画していた。
例えるなら、人間工学に基づいて作られた椅子のようにフィットしたのだ。
「すごい……! この椅子ほしい!!」
「サキがそんな事いうの珍しいな。それならこれと同じ椅子を予備を合わせて八脚注文しないと。店主頼めるか?」
「おやおや、大口のお客さんだったか。もちろん受けさせてもらおう、特に見る目のある客は大歓迎だ」
美形の店主が注文票を書き込む時に、肩まである髪を耳にかけた。
その時見えた耳は、この世界でも初めて見る形で二度見した。
「エルフ……!?」
思わず漏れた私の言葉に、店主はたおやかに微笑んだ。
「ああ、よろしく頼む」
商業ギルドに戻って契約をするマティスの背後で、オーギュストとアルフォンスはヘッドバンキングさながら激しく頷いている。
今日見た物件は借りても買い取ってもいい物件だったので、本来借りる予定だった猩猩獣人親子の予算では足りなかった。
幸いマティスの、というかフェンリルの眷属として蓄えられていた資産に余裕があったので、私とアーサーが許可を出すという形で二軒買い取った。
つまり今後オーギュストはマティスに家賃を払うのだ。
オーギュストは友人関係でお金の貸し借りをしたくないからとこういう形になったけど、その場合家の中の本とか全部マティスの物って事になるのはわかっているんだろうか。
マティスの事だから好きにしていいって言いそうだけど。
『その内主が時間停止魔法を覚えたら、家にかけてやればいい。せっかく買ったのだ、その方がよかろう』
おお! 私ってば転移魔法だけじゃなくて、時間停止魔法使えるようになるのか!
興奮してソワソワしつつも私達以外にはアーサーの声は聞こえないので、頷くだけにしておいた。
契約後、オーギュストとアルフォンスはあっという間に家へと向かった。
私達は家具がないので商店街へ。
ある程度の生活用品は馬車で運べる分だけ持ってきていたけれど、ベッドやテーブル、ソファなどは買い足すしかない。
商店街の奥にある工房街へ向かうと、色んな音が聞こえてきた。
『ふむ、あの工房から只者ではない気配がしておるな。行ってみるといい、きっとよい物を作っておるぞ』
アーサーのおすすめに従って工房を覗くと、どうやら木工の工房のようだ。
どの工房も基本的に入り口は開放的というか、出入り口が全開になっているので、そのまま入って行く。
中にはいくつかの椅子が並んでいた。
シンプルなものから、ツタがレリーフのように彫られた芸術品のような物まで様々だ。
「わぁ……すごい。手触りもすごくなめらかで気持ちいい。試しに座ってもいいかな」
「どうぞ、座ってみなさい」
不意にかけられた声に振り向くと、そこには美形。
いやもう本当に美形としか表現できない人がいた。
少し偉そうな物言いだったけど、それすら気にならないくらいの美形だ。
「サキ、座らないの? すごく座り心地いいよ!」
リアムに言われて我に返る。
ダイニングに使えそうな椅子にそっと腰を下ろすと、これまでのただの固い椅子とは一線を画していた。
例えるなら、人間工学に基づいて作られた椅子のようにフィットしたのだ。
「すごい……! この椅子ほしい!!」
「サキがそんな事いうの珍しいな。それならこれと同じ椅子を予備を合わせて八脚注文しないと。店主頼めるか?」
「おやおや、大口のお客さんだったか。もちろん受けさせてもらおう、特に見る目のある客は大歓迎だ」
美形の店主が注文票を書き込む時に、肩まである髪を耳にかけた。
その時見えた耳は、この世界でも初めて見る形で二度見した。
「エルフ……!?」
思わず漏れた私の言葉に、店主はたおやかに微笑んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
921
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる