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91.研究者の遺した家
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「ぷっ、くくくっ、クスクス」
「リアム、笑いすぎ」
「だってさぁ、さっきのマティス兄ちゃんの慌て方を思い出したら……ププッ」
ユーゴがリアムをたしなめた。
こうしてリアムが笑っているのは、家の中を確認しながら部屋決めをしていた時、オーギュスト達を入れると人数的に部屋数が一室足りない事に気付いたせい。
不思議に思ってその事をギルド職員に聞くと、主寝室は夫婦で使うでしょうと言われたのだ。
どうやら私とマティスが夫婦で、群れとしてこの一行を率いていると思っていたらしい。
その時マティスがもの凄く焦って、というか、動揺していたのだ。
普段見られないその様子に、リアムは思い出しては笑っている。
今はオーギュスト達が住む予定の家に向かっているのだが、何度もリアムが笑うのでとうとうマティスが振り返った。
「仕方ないだろう! 今はこうして対等に話しているが、本来ならば私達はサキ様とお呼びすべき方なんだぞ!? フェンリル様の主の番など、眷属の身で恐れ多過ぎる!」
どうやらマティスはご両親の教育がバッチリ過ぎたようだ。
本来ならずっとあの集落の長として過ごさなきゃダメだったから、仕方ないかもしれない。
「それにしても、ギルドの人が間違えたって事は、獣人と人族が結婚する事ってあるんだね? 私の感覚からしたら愛でる対象であって、恋愛対象になるとは思えないから不思議……」
マニアックなお話ではあるかもしれないけど、漫画でも滅多に見かけない。
「まぁ……、いなくはない、といったところか。確率的にはかなり低いが、商業ギルドにいたら色んな人が来るから見る回数が多いのかもしれないな。獣人と人族の子供は特殊な姿になるせいで、国や地域によっては面倒な事になったりするから、好んで異種族と結婚しようとする者は少ないさ」
「特殊な姿って」「つきましたよ、ここがそうです」
話の途中だったが、すぐ近くというだけあって、私達買う家から一分もかからず到着した。
ほとんど森の集落での家と同じくらいの距離だ。
元研究者の家は、こじんまりとした一軒家だった。
二人で暮らすには少し大きいかもしれないけど、大量の本があるならちょうどいいのかもしれない。
「ここは最初から研究のために建てられたので、本の重みで床が抜けないように丈夫に作られているんですよ。あとは湿気がこもらないように、一階の少し床が高めになってます。万が一でも危険がないように、本棚は全て一階に造り付けになってますから安心して住んでいただけますし」
ギルド職員は説明しながら大量の鍵が付いた鍵束からひとつ選んで解錠した、あの鍵を全部覚えてるってすごい。
本当は私達がついてくる必要はなかったけど、好奇心で一緒に家の中へ入って行く。
「埃っぽくて申し訳ありません。一応定期的に軽く掃除はしているんですが、買い手がなかなかつかない家なので後回しにされがちで……」
汗を拭いながら説明するギルド職員をよそに、オーギュストとアルフォンスはリビングの壁にドーンと見える本棚に目を奪われていた。
「あ、あ……。あれは絶版されて手に入らなかった本! もしかしてあそこの本は……やはり古代文字だ!! ここに決めます!!」
本を漁り始めた二人のせいで、リビングの中は埃が舞っている。
アーサーだけでなく、みんなくしゃみを連発しているほどだ。
「も~、『清浄』」
洗浄魔法だと水分を使うので、本がある事を考慮して清浄魔法を使ってみた。
埃と汚れがなくなって視界がクリアになると、数冊の本が不自然なくらい綺麗な事に気付く。
『ふむ、どうやら魔女が生きていた時代の本も混じっているようだな。時間停止魔法がかけられている本がいくつかある』
アーサーの言葉にオーギュストとアルフォンスは声にならない叫びと共に、とうとう泣き出した。
ギルド職員さんはアーサーの声が聞こえないから、ドン引きしてるって早く気付いてほしい。
◇ ◇ ◇
現在6時09分、野菜凌辱のポスト(旧ツイート)なんてしてる場合じゃなかった……。(本当に何書いてんだ)
「リアム、笑いすぎ」
「だってさぁ、さっきのマティス兄ちゃんの慌て方を思い出したら……ププッ」
ユーゴがリアムをたしなめた。
こうしてリアムが笑っているのは、家の中を確認しながら部屋決めをしていた時、オーギュスト達を入れると人数的に部屋数が一室足りない事に気付いたせい。
不思議に思ってその事をギルド職員に聞くと、主寝室は夫婦で使うでしょうと言われたのだ。
どうやら私とマティスが夫婦で、群れとしてこの一行を率いていると思っていたらしい。
その時マティスがもの凄く焦って、というか、動揺していたのだ。
普段見られないその様子に、リアムは思い出しては笑っている。
今はオーギュスト達が住む予定の家に向かっているのだが、何度もリアムが笑うのでとうとうマティスが振り返った。
「仕方ないだろう! 今はこうして対等に話しているが、本来ならば私達はサキ様とお呼びすべき方なんだぞ!? フェンリル様の主の番など、眷属の身で恐れ多過ぎる!」
どうやらマティスはご両親の教育がバッチリ過ぎたようだ。
本来ならずっとあの集落の長として過ごさなきゃダメだったから、仕方ないかもしれない。
「それにしても、ギルドの人が間違えたって事は、獣人と人族が結婚する事ってあるんだね? 私の感覚からしたら愛でる対象であって、恋愛対象になるとは思えないから不思議……」
マニアックなお話ではあるかもしれないけど、漫画でも滅多に見かけない。
「まぁ……、いなくはない、といったところか。確率的にはかなり低いが、商業ギルドにいたら色んな人が来るから見る回数が多いのかもしれないな。獣人と人族の子供は特殊な姿になるせいで、国や地域によっては面倒な事になったりするから、好んで異種族と結婚しようとする者は少ないさ」
「特殊な姿って」「つきましたよ、ここがそうです」
話の途中だったが、すぐ近くというだけあって、私達買う家から一分もかからず到着した。
ほとんど森の集落での家と同じくらいの距離だ。
元研究者の家は、こじんまりとした一軒家だった。
二人で暮らすには少し大きいかもしれないけど、大量の本があるならちょうどいいのかもしれない。
「ここは最初から研究のために建てられたので、本の重みで床が抜けないように丈夫に作られているんですよ。あとは湿気がこもらないように、一階の少し床が高めになってます。万が一でも危険がないように、本棚は全て一階に造り付けになってますから安心して住んでいただけますし」
ギルド職員は説明しながら大量の鍵が付いた鍵束からひとつ選んで解錠した、あの鍵を全部覚えてるってすごい。
本当は私達がついてくる必要はなかったけど、好奇心で一緒に家の中へ入って行く。
「埃っぽくて申し訳ありません。一応定期的に軽く掃除はしているんですが、買い手がなかなかつかない家なので後回しにされがちで……」
汗を拭いながら説明するギルド職員をよそに、オーギュストとアルフォンスはリビングの壁にドーンと見える本棚に目を奪われていた。
「あ、あ……。あれは絶版されて手に入らなかった本! もしかしてあそこの本は……やはり古代文字だ!! ここに決めます!!」
本を漁り始めた二人のせいで、リビングの中は埃が舞っている。
アーサーだけでなく、みんなくしゃみを連発しているほどだ。
「も~、『清浄』」
洗浄魔法だと水分を使うので、本がある事を考慮して清浄魔法を使ってみた。
埃と汚れがなくなって視界がクリアになると、数冊の本が不自然なくらい綺麗な事に気付く。
『ふむ、どうやら魔女が生きていた時代の本も混じっているようだな。時間停止魔法がかけられている本がいくつかある』
アーサーの言葉にオーギュストとアルフォンスは声にならない叫びと共に、とうとう泣き出した。
ギルド職員さんはアーサーの声が聞こえないから、ドン引きしてるって早く気付いてほしい。
◇ ◇ ◇
現在6時09分、野菜凌辱のポスト(旧ツイート)なんてしてる場合じゃなかった……。(本当に何書いてんだ)
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