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86.シパンの町
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道中雨に足止めされたりしたものの、橋から九日間でマジョイル国の最古の町、シパンが見えてきた。
そして離れて見ると、鬱蒼とした森に今にも飲み込まれそうだ。
「シパンの町は、マジョイル国ができる前からある町で、それこそ一万年前にできたとも言われているんだ。町の住人のほとんどが魔女の血族だとか、森の中に魔女が住んでいた家が存在しているとか伝承が残っているけれど、誰も真実を決定づける証拠を見つけられていなくて、真実は闇の中なんだよ!」
「そうそう、森の中にあったダンジョンはとっくに枯渇してしまったのに町が栄え続けているのは、魔女の恩恵じゃないかとも言われいるのは有名な話だから」
オーギュストとアルフォンスが、アーサーと会った頃のように目を輝かせながら早口で説明してくれた。
完全にオタクモードだ。
『フン、その魔女の家が森の中にあるというのは本当だろうな。我とよく似た魔力を森の中から感じる』
「「ええぇぇぇぇ!?」」
アーサーの言葉に二人が叫んだと思ったら、口を開けたまま固まってしまった。
写真撮りたいくらい可愛い!!
「それじゃあ、アーサーが森に行けば魔女の家を見つけられるの?」
『無論だ。ある意味我らは仲間や兄弟のようなモノだからな。そのため魔力も似通っているゆえ感知もしやすいのだ。滞在先が決まり次第、森に行ってみるか?』
「「ぜひ!!」」
私が返事するより先に、猩猩獣人親子が声を揃えて返事した。
でも私も興味あるから、その家があるなら行ってみたい。
「んん? だけど、その家って一万年以上前の物なんだよね? 人が住まなくなった家って一気に老朽化するけど、まだ残ってるのかな? 遺跡みたいに石造りでも風化してそうなんだけど」
『それは問題あるまい。第一、数千年は住んでいたとすれば、普通の家なら住んでいる間に朽ち果てるであろう。恐らく時間停止の保存魔法くらい使っているはずだ』
「時間停止魔法!? おおおぉぉお……失われた魔法の中でも代表格じゃないか! それはぜひともこの目で確かめねば!!」
もうオーギュストの目はキラキラどころかギラギラになってしまっている。
そうこうしている内にシパンの町が近付いてきた。
残念ながらここに来るまでに日本文化らしきものは見つからなかったけど、シパンの町か、それとも森の中の家なら日本を感じるものが見つかるかもしれない。
いつかこの世界に完全に馴染んだ時に、きっと日本を懐かしく思う時がくるだろうから、何か思い出せるものが欲しいのだ。
あ、でも、この国に入ってから醤油や味噌らしき物は見つかっている。
市販されている物とはちょっと違うので、たまたま発展した調味料なのか、それとも長い年月で元の物と変わっていったのか。
その似ているようで違う物のせいで、改めてここが異世界だと突き付けられた気がした。
そんなしんみりした気持ちが、翌日訪れた魔女の家で吹っ飛ぶ事になるとは、この時は思いもしなかったけど。
そして離れて見ると、鬱蒼とした森に今にも飲み込まれそうだ。
「シパンの町は、マジョイル国ができる前からある町で、それこそ一万年前にできたとも言われているんだ。町の住人のほとんどが魔女の血族だとか、森の中に魔女が住んでいた家が存在しているとか伝承が残っているけれど、誰も真実を決定づける証拠を見つけられていなくて、真実は闇の中なんだよ!」
「そうそう、森の中にあったダンジョンはとっくに枯渇してしまったのに町が栄え続けているのは、魔女の恩恵じゃないかとも言われいるのは有名な話だから」
オーギュストとアルフォンスが、アーサーと会った頃のように目を輝かせながら早口で説明してくれた。
完全にオタクモードだ。
『フン、その魔女の家が森の中にあるというのは本当だろうな。我とよく似た魔力を森の中から感じる』
「「ええぇぇぇぇ!?」」
アーサーの言葉に二人が叫んだと思ったら、口を開けたまま固まってしまった。
写真撮りたいくらい可愛い!!
「それじゃあ、アーサーが森に行けば魔女の家を見つけられるの?」
『無論だ。ある意味我らは仲間や兄弟のようなモノだからな。そのため魔力も似通っているゆえ感知もしやすいのだ。滞在先が決まり次第、森に行ってみるか?』
「「ぜひ!!」」
私が返事するより先に、猩猩獣人親子が声を揃えて返事した。
でも私も興味あるから、その家があるなら行ってみたい。
「んん? だけど、その家って一万年以上前の物なんだよね? 人が住まなくなった家って一気に老朽化するけど、まだ残ってるのかな? 遺跡みたいに石造りでも風化してそうなんだけど」
『それは問題あるまい。第一、数千年は住んでいたとすれば、普通の家なら住んでいる間に朽ち果てるであろう。恐らく時間停止の保存魔法くらい使っているはずだ』
「時間停止魔法!? おおおぉぉお……失われた魔法の中でも代表格じゃないか! それはぜひともこの目で確かめねば!!」
もうオーギュストの目はキラキラどころかギラギラになってしまっている。
そうこうしている内にシパンの町が近付いてきた。
残念ながらここに来るまでに日本文化らしきものは見つからなかったけど、シパンの町か、それとも森の中の家なら日本を感じるものが見つかるかもしれない。
いつかこの世界に完全に馴染んだ時に、きっと日本を懐かしく思う時がくるだろうから、何か思い出せるものが欲しいのだ。
あ、でも、この国に入ってから醤油や味噌らしき物は見つかっている。
市販されている物とはちょっと違うので、たまたま発展した調味料なのか、それとも長い年月で元の物と変わっていったのか。
その似ているようで違う物のせいで、改めてここが異世界だと突き付けられた気がした。
そんなしんみりした気持ちが、翌日訪れた魔女の家で吹っ飛ぶ事になるとは、この時は思いもしなかったけど。
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