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82.態度の悪い冒険者達は
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『主、今度はどんなおせっかいをするつもりだ?』
食事が済んでからアーサーが話しかけてきた。
「やだなぁ、別に何もする気はないよ。さぁ、片付けも終わった事だし、洗浄魔法かけて寝ようか」
『うむ、ならばいつもの認識阻害をかけておくか』
いつもの認識阻害というのは、悪意ある者は結界内の物や人を認識できなくなる結界魔法らしい。
普通の認識阻害の魔法だと、いわゆる隠蔽魔法というものになるらしい。
洗浄魔法かけ、いつものように私とアーサーは荷台で、他のメンバーは地面に寝袋を使って寝始めた。
周りもすっかり暗くなったので早めに就寝して、明日は朝から出発するのだ。
離れた所にいる冒険者達は薪を燃やして灯りを確保している。
商人のようにお金に余裕がある一行であれば調理時以外は魔導具の灯りか、同行している魔法使いの灯り魔法が使われるので、彼らの程度がわかるというものだ。
ちなみに私達の場合は、私以外夜目がきくので灯りは点けない、私が必要な時は魔法を使えばいいし。
そんなわけで暗い中、ウトウトしていたらあの冒険者達の怒鳴るような話し声が聞こえてきた。
「おい! いつの間にかあいつらいなくなってるじゃねぇか! 寝てる間に荷馬車に火でもつけてやろうと思ってたのによ!」
とんでもない事を言っている。
アーサーの結界魔法のおかげであいつらが私達に悪意を持っている事が確定した。
「え? でもあそこに……」
「あぁん!? どこに何だって!? 何もねぇじゃねぇか!」
ボソボソと小さな声の後に再びリーダーの声が聞こえて、人を殴る音も聞こえた。
きっと皆も起きているから、向こうの状況には気付いているだろう。
だけど私とアーサーがいるせいか、それとも元々冒険者とはそういうものなのか、自分達からは関わろうとしない。
しかし今の会話で荷運びの彼だけは私達に悪意を持っていない事が証明された。
アーサーには何もしないって言ったばかりだけど、どうにか手助けできるならしたいなぁ。
『甘い……な。だがいつも言っているように、我は主の甘さは好きだぞ』
真っ暗で私には何も見えないが、アーサーが口の周りを舐めている気配がする。
ついでとばかりに、私の頬や口もひと通り舐めてから、満足したのか再び私の隣に伏せて寝たようだ。
舐めてくれるのは幸せで嬉しいんだけど、時間が経つとカピカピしてくるからそっと洗浄魔法をかけた。
可愛くて大好きなのは間違いないけど、これはコレ、それはソレなのである。
翌朝、私達より早く冒険者達が朝食の準備をしていた。
私は隠蔽魔法を使ってそっと荷運びの男性に近付いて囁く。
「あなたに聞きたい事があるの。彼らに気付かれないように頷くか首を振って答えてくれればいいからね」
最初はビクッと身体を震わせて驚いたみたいだったけど、昨夜私の声を聞いていたからかすぐに誰かわかったようで小さく頷いた。
「あなたもしかして彼らに暴力で従わされてる?」
再びコクリと小さく頷く。
「強ければやり返して彼らから逃げられる?」
今度はしばらく悩み、頷いた。
「じゃあ、一日だけ強くしてあげる。これまでの恨みを晴らしてもいいし、足も速くなってるから荷物を持って逃げるのも自由だよ、頑張って。『身体強化』……日が暮れる頃に効果は切れるからね」
男性は力強くうなずいて口の端を上げる。
すぐに逃げるかと思ったら、食事を済ませて姿を見せた時のように五人で歩いて行ってしまった。
『あれはかなりあの男達を恨んでおるな。主に対してはかなり感謝していたぞ』
「ふぅん、油断させてから逃げるのかな? かなりクズな連中だったから、やっちゃえばいいのに」
後日、風の噂で評判の悪かったあの冒険者達が、荷運びを残して全員森で魔物の餌食になったと知った。
彼らを襲ったその魔物は、人の心に巣食った魔物だったのかもしれない。
食事が済んでからアーサーが話しかけてきた。
「やだなぁ、別に何もする気はないよ。さぁ、片付けも終わった事だし、洗浄魔法かけて寝ようか」
『うむ、ならばいつもの認識阻害をかけておくか』
いつもの認識阻害というのは、悪意ある者は結界内の物や人を認識できなくなる結界魔法らしい。
普通の認識阻害の魔法だと、いわゆる隠蔽魔法というものになるらしい。
洗浄魔法かけ、いつものように私とアーサーは荷台で、他のメンバーは地面に寝袋を使って寝始めた。
周りもすっかり暗くなったので早めに就寝して、明日は朝から出発するのだ。
離れた所にいる冒険者達は薪を燃やして灯りを確保している。
商人のようにお金に余裕がある一行であれば調理時以外は魔導具の灯りか、同行している魔法使いの灯り魔法が使われるので、彼らの程度がわかるというものだ。
ちなみに私達の場合は、私以外夜目がきくので灯りは点けない、私が必要な時は魔法を使えばいいし。
そんなわけで暗い中、ウトウトしていたらあの冒険者達の怒鳴るような話し声が聞こえてきた。
「おい! いつの間にかあいつらいなくなってるじゃねぇか! 寝てる間に荷馬車に火でもつけてやろうと思ってたのによ!」
とんでもない事を言っている。
アーサーの結界魔法のおかげであいつらが私達に悪意を持っている事が確定した。
「え? でもあそこに……」
「あぁん!? どこに何だって!? 何もねぇじゃねぇか!」
ボソボソと小さな声の後に再びリーダーの声が聞こえて、人を殴る音も聞こえた。
きっと皆も起きているから、向こうの状況には気付いているだろう。
だけど私とアーサーがいるせいか、それとも元々冒険者とはそういうものなのか、自分達からは関わろうとしない。
しかし今の会話で荷運びの彼だけは私達に悪意を持っていない事が証明された。
アーサーには何もしないって言ったばかりだけど、どうにか手助けできるならしたいなぁ。
『甘い……な。だがいつも言っているように、我は主の甘さは好きだぞ』
真っ暗で私には何も見えないが、アーサーが口の周りを舐めている気配がする。
ついでとばかりに、私の頬や口もひと通り舐めてから、満足したのか再び私の隣に伏せて寝たようだ。
舐めてくれるのは幸せで嬉しいんだけど、時間が経つとカピカピしてくるからそっと洗浄魔法をかけた。
可愛くて大好きなのは間違いないけど、これはコレ、それはソレなのである。
翌朝、私達より早く冒険者達が朝食の準備をしていた。
私は隠蔽魔法を使ってそっと荷運びの男性に近付いて囁く。
「あなたに聞きたい事があるの。彼らに気付かれないように頷くか首を振って答えてくれればいいからね」
最初はビクッと身体を震わせて驚いたみたいだったけど、昨夜私の声を聞いていたからかすぐに誰かわかったようで小さく頷いた。
「あなたもしかして彼らに暴力で従わされてる?」
再びコクリと小さく頷く。
「強ければやり返して彼らから逃げられる?」
今度はしばらく悩み、頷いた。
「じゃあ、一日だけ強くしてあげる。これまでの恨みを晴らしてもいいし、足も速くなってるから荷物を持って逃げるのも自由だよ、頑張って。『身体強化』……日が暮れる頃に効果は切れるからね」
男性は力強くうなずいて口の端を上げる。
すぐに逃げるかと思ったら、食事を済ませて姿を見せた時のように五人で歩いて行ってしまった。
『あれはかなりあの男達を恨んでおるな。主に対してはかなり感謝していたぞ』
「ふぅん、油断させてから逃げるのかな? かなりクズな連中だったから、やっちゃえばいいのに」
後日、風の噂で評判の悪かったあの冒険者達が、荷運びを残して全員森で魔物の餌食になったと知った。
彼らを襲ったその魔物は、人の心に巣食った魔物だったのかもしれない。
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