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80.野営地での注意点

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 次の国境まであと一日という場所にある野営地。
 主に行商人や冒険者が使う水源のある広場という感じだ。


 火を使った場所は草が焼けているので、同じ場所で火を使えば安全。
 ただし魔物がでるかどうかはその地域や時期によるらしいので、睡眠中は見張りが必ず必要らしい。


 幸い私達には気配に敏感なアーサーがいるから、あまり気にしなくても大丈夫だけど。
 というか、私以外は獣人なので、元から気配には敏感だから大丈夫というのもある。


 だけど、皆が言うにはこういう野営地では魔物より気を付けないといけないものがるらしい。
 それが今姿を現した。


「おいおい、獣人村か? ここはよ!」


 徒歩で現れた五人組の冒険者、正確には冒険者四人と荷運びポーターが一人。
 年齢は全員二十代前半といったところだけど、荷運びポーターの負担がすごそうな荷物だ。
 荷物が大変そうな荷運びポーターはともかく、私達を見たリーダーらしき男の言葉に残りの三人がゲラゲラと品なく笑う。


「おい、女がいるぜ。もしかして獣に飼われてるんだったりしてな! それとも獣相手にしか興奮できないタチか!? ははははは」


 うわぁ~、どこのエロ親父だよ。
 あまりの下品さにドン引きである。
 職場のあの嫌味な上司ですらそんな下品な事言わなかったよ、セクハラで訴えられるのを避けただけかもしれないけど。


 双子はキョトンとしているけど、他の大人の年齢の仲間達は漏れなく殺気立っている。
 密かにシリルまで怒ってくれている事に感動する私。
 アーサーは口の周り舐めないで! 感動してる事が皆にバレちゃう。


「さ、早く夕ご飯作ろう。ああいうのは気にしちゃダメ、気にしたら負けよ」


 子供の頃、近所に狡猾で私に意地悪する子がいて、何度も泣かされた。
 おかげで嫌な人には関わらないのが一番だと学んだのだ。


 料理係にシリルも加わっているので、今では調理がかなり早く終わるようになった。
 何気にオーギュストも料理上手なので、シリルと交代で手伝ってくれている。


「あっ、今日はオーク肉なんだね、だったらオイラ生姜焼きがいいなぁ」


 簡単な料理しか作れない私にはレパートリーが少ない。
 だけど幸いな事に、その数少ないメニュー全てが皆の胃袋を鷲摑んでくれいてる。


 というわけで、豚……オーク肉ではトンカツか生姜焼き、鶏肉の場合は唐揚げ、照り焼き、親子丼、チキンカツ。
 毎日のようにこのメニューのどれかを食べているので、体重が心配になる。
 生姜焼きはまだヘルシーな部類なので、よしとしよう。


「皆もそれでいいなら生姜焼きにするけど、いいかな?」


 聞くまでもなく満場一致でメニューが決定した。
 軽く塩胡椒してから小麦粉を薄くつけて、脂を入れて表面に焼き色をつけたら、作っておいたタレをからめて、最後に隠し味としてバターをひとかけらタレに溶かして、タレにとろみがつくまで煮詰めたら完成!


 最後に入れたバターがただでさえ食欲をそそる香りに華をそえている。
 あとは鍋で炊いているご飯がもうすぐできるから、それまでに副菜のサラダを作ればよし。


「おお~、すっげぇいい匂いしてるじゃねぇか。俺らにも分けてくれねぇ?」


 荷運びポーターが料理を作っているのに、四人の冒険者がこちらにやってきて料理をねだった。
 大量に作っているから少しくらい分けて欲しい、というわけではなさそうだ。


 分けてくれと言いつつ、全部よこせと言わんばかりの下卑げびた笑みを浮かべている。
 恐らくさきほどからかった時に反抗しなかったから、私達がビビッていると勘違いしたのかもしれない。


 肉食な獣人達から肉を奪おうとするなんて、自殺志願者かな?
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