上 下
76 / 109

76.突発クエスト!?

しおりを挟む
 山猫獣人の子供を拾ってから十五分ほど馬車を走らせたところに、三百世帯くらいの村があった。
 これまでの村と同様、塀があっていざという時は門を閉ざして防衛できる造りだ。


 マジョイル国への街道なのだが、サショイノ王国と繋がっている街道に比べて人の行き来が少ない気がする。
 マジョイル国が王制でないのと関係しているのだとオーギュストが教えてくれた。


 何が言いたいのかというと、ぶっちゃけさびれている。
 その証拠に門に誰もおらず、勝手に出入りできる状態だった。


「なんか……宿屋もなさそうだねぇ」


「そうだね、商隊キャラバンなんかは節約のために宿屋に泊まらないし、滅多に客が来ないんじゃ生活できないだろうから淘汰とうたされるんだろう。せめて住人が多ければ食堂と兼業できるだろうけど、この人口じゃあ食堂や酒場を経営しても儲からないだろうから」


「なるほど」


 オーギュストと話している間にも、私達の馬車は村の中に入っていってるのだが、誰も出て来ない。
 普通は好奇心旺盛な子供とか、野次馬根性で近寄って来る情報通のおば様が出て来るのに。


「人の気配はしているな。どうも警戒されている気がする……」


『うむ、どちらかというと、怯えているというのが正しいな』


「……んっ、ハッ! だ、だれ!?」


 馬車が停止したせいか、山猫獣人の子供が目を覚まして飛び起きた。
 正に毛を逆立てるとはこの事だ。


「私達は旅の途中の冒険者だよ。街道を走っていたら、森から出てきたあなたが馬車の前で倒れたの、覚えてない?」


 できるだけ優しく話かけると、少し考えてから顔を上げた。


「わたし、わるい人たちにつかまったの! それでむちゅうでにげて……ぐすっ、おうちにかえりた……あれ?」


 山猫獣人の子供は、泣きそうになったかと思うと、スンスンと空気中の匂いを嗅いで馬車から飛び降りた。


「おかあさ~ん! おとうさ~ん!」


 ああっ、私の癒しが!
 ……ではなく、どうやらあの子の家はこの村にあるらしい。


「ルネ!?」


 一軒の家から山猫獣人が二人飛び出して来た。
 それを皮切りに次々に人が集まりだしている、ルネちゃん可愛いもんね。
 しかし中にはなぜかまだ不安そうにしている人もいるようだ。


「あなた方がルネを助けてくれたんですか!? ありがとうございます!! それで……あいつらは……?」


「あいつら、とは? その子は森の中で街道に飛び出してきて倒れたから、ここまで連れてきただけだ」


 マティスが説明すると、村の空気が一変した。
 そういえばさっき、ルネちゃんが悪い人達に掴まったって言ってたもんね、逃げた事に気付いたらまた捕まえに来るのかもしれない。
 私は馬車を降りて事情を聞く事にした、母親の胸で泣きつかれて眠ったルネちゃんの顔を見たら当然の行動だろう。


 村人達の話はこうだ。先週から森の中に盗賊団が根城を作り、どうも指名手配から逃げている途中で、村を襲って食料と共にルネちゃんを人質として連れ去ったらしい。
 村の門を閉ざす事も禁止され、また来ると言い残して行ったそうだ。


「ふむふむ、その盗賊団は何人くらい? この村の食料でまかなえるくらいだから、規模は大きくないでしょ?」


「そうですね……、現れたのは七人でした。そう多くはないものの、我々は戦う事が不得手でして……。かと言って国や冒険者ギルドに助けを求めたらルネを殺すと言われてどうしようもなく……」


 アシルと名乗ったルネちゃんのお父さんがしょんぼりと肩を落とした。
 七人か……それくらいなら私達でなんとかなるかな。
 チラリとマティスを見ると、私の考えをわかっているのか頷いてくれた。


「アーサーもいるし、どうにか」「おいおい、なんでガキがここに戻ってんだよ!!」


 酒やけしたようなダミ声に振り返ると、薄汚れた男達が村の中に入って来た。


   ◇   ◇   ◇


お気付きだろうか、この物語に出てくる国名、町村名、は普通の言葉をモジっている事に!!

① モヨリ―
② サショイノ
③ オキイ
④ キエル(これはそのまま過ぎでした)

さて、漢字込みの日本語に直すとどうなるでしょう
( *´艸`)
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人

花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。 そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。 森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。 孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。 初投稿です。よろしくお願いします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

パワハラで人間に絶望したサラリーマン人間を辞め異世界で猫の子に転生【賢者猫無双】(※タイトル変更-旧題「天邪鬼な賢者猫、異世界を掻き回す」)

田中寿郎
ファンタジー
俺は自由に生きるにゃ!もう誰かの顔色を伺いながら生きるのはやめにゃ! 何者にも縛られず自由に生きたい! パワハラで人間に絶望したサラリーマンが異世界で無敵の猫に転生し、人と関わらないスローライフを目指すが…。 自由を愛し、命令されると逆に反発したくなる天邪鬼な性格の賢者猫が世界を掻き回す。 不定期更新 ※ちょっと特殊なハイブリット型の戯曲風(台本風)の書き方をしています。 視点の切り替えに記号を用いています ■名前で始まる段落:名前の人物の視点。視点の主のセリフには名前が入りません ◆場所または名前:第三者視点表記 ●場所:場所(シーン)の切り替え(視点はそこまでの継続) カクヨムで先行公開 https://kakuyomu.jp/works/16818023212593380057

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

処理中です...