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75.飛び出し注意
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大きな街道をガラガラと音を立てながらひたすら進む。
石畳とまではいわないが、大きめの石を敷き詰めてあるような道。
割れ物専用の荷台の効果と、敷いてある寝袋のおかげで普通に会話もできる。
色々買い足したからちょっと狭くなっちゃったけど、座っている分には結構ゆったりだ。
そんな道中だがすでにイサカの町を出て一週間、ナトリ王国の王都は方向が違うから寄らずにマジョイル国方面に向かっている。
何が言いたいかというと、暇なのだ。
王都とは方向が違う、つまりは田舎方面に進んでいるせいか、立ち寄る村や町が変わり映えしない。
しかも他国から来た人がやっている屋台がほとんどないし、結局私とユーゴがキャンプ飯を作るパターンが増えている。
あまりにも暇なので心の中で『シリルチャレンジ』と称し、気付かれず、さりげなくシリルの毛並みを堪能するという遊びも数回成功した。
触れたのは頭や手くらいだけど、これ以上難易度を上げると痴女扱いされかねないので諦めている。
相手は十六歳という、双子より多感なお年頃なのだ。
どこかに撫でまわしても許される年齢の猫科の獣人はいないだろうか。
今走ってる街道は森の中だ、という事はそろそろ村か町……森の中だから恐らく村があるはず。
ここまで見かけた獣人は三十人程度だったから、小さな村に子供の獣人がいる可能性は少ないよねぇ。
『主、何を考えている?』
「ひゃいっ!? え? べ、べつに何も? ちょっとボーッとしてただけだよ」
別に邪な事を考えていたわけじゃないけど、アーサー以外をモフる事を考えていたので気まずい。
しかしジトリとした目を私に向けていたアーサーが、いきなり前方を向いて叫んだ。
『マティス! 何かが飛び出してくるぞ!』
「はい!」
言われてマティスは馬車の速度を落とす。
いまだ咄嗟の時は、アーサーに対して敬語になってしまうマティス。
その直後、小さな影が木の間からフラフラと出てきてパタリと倒れた。
「獣人の子供だ……、どうしてこんなところに」
マティスの呟きを聞いて、シリルが真っ先に飛び出した。
もしかしたら昔の自分と被ったのかもしれない。
私も慌ててシリルを追いかけると、倒れていたのは妙に汚れた簡素なワンピースを着た猫獣人……いや、猫にしては厳つい、山猫獣人かな?
とりあえず汚れていて怪我が確かめにくいので洗浄魔法をかける。
「『洗浄』……う~ん、怪我はしてないみたいだね。気を失ってるみたいだし、とりあえず馬車に乗せようか。次の村か町で知ってる人がいるかもしれないから聞いてみよう」
「ああ……」
シリルが抱き上げたので、私は先に荷台に乗り込み、皆にこのまま連れて行く事を話した。
幸い全員賛成してくれたので、シリルもホッとしたようだ。
抱き上げたままだとシリルが荷台に上がりにくいので、子供を受け取る。
決してこれを狙っていたわけではない。
抱き上げた身体は小さく、せいぜい五歳くらいだろうか。
山猫ならずんぐりむっくりしたイメージなのに、一瞬猫と間違えるくらい痩せているのが気になった。
膝枕で寝かせたまま馬車は再び動き出す。
時々うなされているようだったので、撫でてあげたら落ち着くようだった。
口の周りを舐めているアーサーのせいで、皆からジト目を向けられたけど。
石畳とまではいわないが、大きめの石を敷き詰めてあるような道。
割れ物専用の荷台の効果と、敷いてある寝袋のおかげで普通に会話もできる。
色々買い足したからちょっと狭くなっちゃったけど、座っている分には結構ゆったりだ。
そんな道中だがすでにイサカの町を出て一週間、ナトリ王国の王都は方向が違うから寄らずにマジョイル国方面に向かっている。
何が言いたいかというと、暇なのだ。
王都とは方向が違う、つまりは田舎方面に進んでいるせいか、立ち寄る村や町が変わり映えしない。
しかも他国から来た人がやっている屋台がほとんどないし、結局私とユーゴがキャンプ飯を作るパターンが増えている。
あまりにも暇なので心の中で『シリルチャレンジ』と称し、気付かれず、さりげなくシリルの毛並みを堪能するという遊びも数回成功した。
触れたのは頭や手くらいだけど、これ以上難易度を上げると痴女扱いされかねないので諦めている。
相手は十六歳という、双子より多感なお年頃なのだ。
どこかに撫でまわしても許される年齢の猫科の獣人はいないだろうか。
今走ってる街道は森の中だ、という事はそろそろ村か町……森の中だから恐らく村があるはず。
ここまで見かけた獣人は三十人程度だったから、小さな村に子供の獣人がいる可能性は少ないよねぇ。
『主、何を考えている?』
「ひゃいっ!? え? べ、べつに何も? ちょっとボーッとしてただけだよ」
別に邪な事を考えていたわけじゃないけど、アーサー以外をモフる事を考えていたので気まずい。
しかしジトリとした目を私に向けていたアーサーが、いきなり前方を向いて叫んだ。
『マティス! 何かが飛び出してくるぞ!』
「はい!」
言われてマティスは馬車の速度を落とす。
いまだ咄嗟の時は、アーサーに対して敬語になってしまうマティス。
その直後、小さな影が木の間からフラフラと出てきてパタリと倒れた。
「獣人の子供だ……、どうしてこんなところに」
マティスの呟きを聞いて、シリルが真っ先に飛び出した。
もしかしたら昔の自分と被ったのかもしれない。
私も慌ててシリルを追いかけると、倒れていたのは妙に汚れた簡素なワンピースを着た猫獣人……いや、猫にしては厳つい、山猫獣人かな?
とりあえず汚れていて怪我が確かめにくいので洗浄魔法をかける。
「『洗浄』……う~ん、怪我はしてないみたいだね。気を失ってるみたいだし、とりあえず馬車に乗せようか。次の村か町で知ってる人がいるかもしれないから聞いてみよう」
「ああ……」
シリルが抱き上げたので、私は先に荷台に乗り込み、皆にこのまま連れて行く事を話した。
幸い全員賛成してくれたので、シリルもホッとしたようだ。
抱き上げたままだとシリルが荷台に上がりにくいので、子供を受け取る。
決してこれを狙っていたわけではない。
抱き上げた身体は小さく、せいぜい五歳くらいだろうか。
山猫ならずんぐりむっくりしたイメージなのに、一瞬猫と間違えるくらい痩せているのが気になった。
膝枕で寝かせたまま馬車は再び動き出す。
時々うなされているようだったので、撫でてあげたら落ち着くようだった。
口の周りを舐めているアーサーのせいで、皆からジト目を向けられたけど。
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