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74.サキの弱点

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「順調にいけば二週間もすれば目的の国に入れるが、どうも国境の川にかかっている橋が崩れたとさっき聞いたんだ。だとしたら早いのはノーウェ王国に一度入ってから通り抜けるのが賢いな」


 報奨金を受け取り、イサカの町を出て馬車で街道を行く。
 今はアルフォンスが御者をしていて、オーギュストとマティスはこれからのルートを話し合っていた。


 どうやらオーギュストは私達が冒険者ギルドにいる間、馬車置き場の他の御者達と情報交換をしていたそうだ。
 なにせこっちには聖女とフェンリル、サショイノ王国のお家騒動など、新鮮なネタがあるので喜んで色々話してくれたらしい。


 冒険者に必要な情報は酒場で、街中の噂は食堂で、旅に必要な情報は馬車置き場か冒険者ギルドらしい。
 確かに町や村を行き来する乗り合い馬車の御者なら、どこに魔物や盗賊が出るとか、街道の状況とか知らないと命取りになるもんね。


 私はまだ周辺の地理どころか、国名すら覚えてないので一緒に地図を覗き込む。
 方向音痴だから見ても意味がないけど、行動範囲の国名くらいは覚えたい。


「おや、サキは地図が読めるのかな?」


 地図を見ていたせいでオーギュストに勘違いされてしまったようだ。
 私の母はショッピングモールで自分の車に戻れなくなるほどの方向音痴だ、哀しい事に姉と違って私はその母の血を色濃く受け継いでしまっている。


「ううん、国の名前だけでも覚えようと思って。だけど右に行こうとしてるのはわかるよ!」


 地図にあるナトリ王国という文字の右隣にマジョイル国と書かれていたので、指で予想経路をなぞる。
 しかし、なぜかマティスとオーギュストは深いため息を吐き、他の皆も呆れた目を向けてきた、なんで!?


「とりあえずサキがものすごく方向音痴なのはわかった。皆、馬車を降りている時は絶対サキから目を離すんじゃないぞ。……いいかサキ、地図は上下左右で見るんじゃない、東西南北で見るんだ。実際方向的にはこう……、真っ直ぐ進んでいるぞ」


 マティスが太陽の位置を見てからクルリと地図を回転させた。


「あ……っ、右じゃなくなった……。なるほど?」


 とりあえず、よくわからないけど納得したフリをしておいた。
 地図を見ていても、ジトリとした視線が刺さるのを感じるので今は顔を上げてはいけない。


 これまで一人で行動する必要なかったし、一人の時でも必ずアーサーが一緒だったから迷子になる事はなかったのだから、実質方向音痴じゃないのと同じなのだ。
 ……探索魔法の頭の中の地図が理解できなくて、あまり意味がなかったので使えないって言ってるのは内緒にしておこう。
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