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71.シリルの行き先
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目玉焼きの練習をし始めた店主を置いて、店を出た私達。
朝ごはんが早かった上、携帯食だったから食事をしたかったけど、さすがにあの店では食べる気になれない。
「それにしても、普通にあちこちから美味しそうな匂いしてるのになぁ」
朝食と摂るにしては少し遅い時間ではあるけれど、まだたくさんの人達が屋台や店で食事をしている。
「それは国外から出稼ぎに来てる者が多いからだよ。この国は鉱山などの資源が豊富なんだ、だからこそ忙しくて食事の質を求めない国になったとも言うが……。それで挫折した者達が気付くわけだ、この国の料理は自分が作った方が美味しいとね。それでそのまま料理人になってしまった者が多いらしい」
「へぇ、それなら弟子入りしたりして料理上手が増えそうだけどなぁ」
「それが……国民性というべきか、できる人がいるなら自分たちはやらなくていいと考えるらしくて、結局国外から来た者達ばかりが屋台をやっているのさ。だから昔からある店より、屋台の食事の方が口に合うだろうね。お店で食べるのは地元の住人ばかりなんだ」
「あれ? だったらどうしてオーギュスト達は屋台じゃなくてお店で食べてたの?」
「それはもちろん情報収集さ。夜なら酒場に行くところだけど、朝な上にアルフォンスがいるから健全に……ね」
パチンとウインクするオーギュスト、こういう仕草を見ると親子だなぁと思う。
「それで、あいつらはどうなったんだ?」
さっきからソワソワしていたシリルがオーギュストに聞いた。
そりゃそうだよね、女将達が捕まらないと安心して暮らせないというものだ。
「ああ、ちゃんと引き渡したさ。これでも私は学者としてはそれなりに名前が売れていてね、私を知っている人がいたから話はすんなり通ったよ。このままマジョイル国に行くと思って、向こうの門から出るからそっちで報奨金を渡してくれるように頼んでおいたから、午後になればいつでも出発できるはずだ」
「助かる。それじゃあ不足している物資を買って、食料を屋台で調達してから出発しようか。後になってシリルについて色々聞かれても面倒だからな」
「なぁ……、本当にオレも一緒に行っていいのか?」
馬車が置いてある場所に到着した時、シリルが心配そうに言った。
確かにあの村を出てしまえば自由なのだから、別に私達と同行する必要はない。
「だって、行くあても、知り合いもいないでしょ? ここで他の身内に会えたならともかく、いきなり一人になるのは不安じゃない? 一緒に行こうよ」
まだ撫でさせてもらってないし、という言葉は心の中だけにしておいた。
猫科の肉食獣を撫でるって、誰もが一度は憧れる事だと思うの。
「この国に親戚がいる事はわかってるが、子供の頃だったから場所がわからないし……。一緒に行くよ」
「うん!」
まだ心をゆるしてない感じはするけど、一緒に行くという事は私達を嫌ってはないようだ。
心の中でガッツポーズしている隣で、アーサーが尻尾を振りながら口の周りを舐めているのが視界に入った。
朝ごはんが早かった上、携帯食だったから食事をしたかったけど、さすがにあの店では食べる気になれない。
「それにしても、普通にあちこちから美味しそうな匂いしてるのになぁ」
朝食と摂るにしては少し遅い時間ではあるけれど、まだたくさんの人達が屋台や店で食事をしている。
「それは国外から出稼ぎに来てる者が多いからだよ。この国は鉱山などの資源が豊富なんだ、だからこそ忙しくて食事の質を求めない国になったとも言うが……。それで挫折した者達が気付くわけだ、この国の料理は自分が作った方が美味しいとね。それでそのまま料理人になってしまった者が多いらしい」
「へぇ、それなら弟子入りしたりして料理上手が増えそうだけどなぁ」
「それが……国民性というべきか、できる人がいるなら自分たちはやらなくていいと考えるらしくて、結局国外から来た者達ばかりが屋台をやっているのさ。だから昔からある店より、屋台の食事の方が口に合うだろうね。お店で食べるのは地元の住人ばかりなんだ」
「あれ? だったらどうしてオーギュスト達は屋台じゃなくてお店で食べてたの?」
「それはもちろん情報収集さ。夜なら酒場に行くところだけど、朝な上にアルフォンスがいるから健全に……ね」
パチンとウインクするオーギュスト、こういう仕草を見ると親子だなぁと思う。
「それで、あいつらはどうなったんだ?」
さっきからソワソワしていたシリルがオーギュストに聞いた。
そりゃそうだよね、女将達が捕まらないと安心して暮らせないというものだ。
「ああ、ちゃんと引き渡したさ。これでも私は学者としてはそれなりに名前が売れていてね、私を知っている人がいたから話はすんなり通ったよ。このままマジョイル国に行くと思って、向こうの門から出るからそっちで報奨金を渡してくれるように頼んでおいたから、午後になればいつでも出発できるはずだ」
「助かる。それじゃあ不足している物資を買って、食料を屋台で調達してから出発しようか。後になってシリルについて色々聞かれても面倒だからな」
「なぁ……、本当にオレも一緒に行っていいのか?」
馬車が置いてある場所に到着した時、シリルが心配そうに言った。
確かにあの村を出てしまえば自由なのだから、別に私達と同行する必要はない。
「だって、行くあても、知り合いもいないでしょ? ここで他の身内に会えたならともかく、いきなり一人になるのは不安じゃない? 一緒に行こうよ」
まだ撫でさせてもらってないし、という言葉は心の中だけにしておいた。
猫科の肉食獣を撫でるって、誰もが一度は憧れる事だと思うの。
「この国に親戚がいる事はわかってるが、子供の頃だったから場所がわからないし……。一緒に行くよ」
「うん!」
まだ心をゆるしてない感じはするけど、一緒に行くという事は私達を嫌ってはないようだ。
心の中でガッツポーズしている隣で、アーサーが尻尾を振りながら口の周りを舐めているのが視界に入った。
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